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窓の下を通った男(2)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
时间:
2024-10-24
作者:
destoon
进入日语论坛
核心提示:二こうして、長ながい月日つきひが過すぎました。ある日ひ、男おとこはいつものように村むらから、道みちを歩あるいてきますと、
(单词翻译:双击或拖选)
窓の下を通った男
小川未明
一
毎日
まいにち
のように、
村
むら
の
方
ほう
から、
町
まち
へ
出
で
ていく
乞食
こじき
がありました。
女房
にょうぼう
もなければ、また
子供
こども
もない、まったくひとりぽっちの、
人間
にんげん
のように
思
おも
われたのであります。
その
男
おとこ
は、もういいかげんに
年
とし
をとっていましたから、
働
はたら
こうとしても
働
はたら
けず、どうにもすることができなかった、
果
は
てのことと
思
おも
われました。
町
まち
へいけば、そこにはたくさんの
人間
にんげん
が
住
す
んでいるから、
中
なか
には、
自分
じぶん
の
身
み
の
上
うえ
に
同情
どうじょう
を
寄
よ
せてくれる
人
ひと
もあろうと
思
おも
って、
男
おとこ
は、こうして、
毎日
まいにち
のように、
田舎道
いなかみち
を
歩
ある
いてやってきたのです。
しかし、だれも、その
男
おとこ
が
思
おも
っているように、
歩
ある
いているのをとどまって、
男
おとこ
の
身
み
の
上話
うえばなし
を
聞
き
いて、
同情
どうじょう
を
寄
よ
せてくれるような
人
ひと
はありませんでした。なぜなら、みんなは
自分
じぶん
たちのこと
考
かんが
えているので、
頭
あたま
の
中
なか
がいっぱいだからでした。まれには、その
男
おとこ
のようすを
見
み
て、
気
き
の
毒
どく
に
思
おも
って
財布
さいふ
からお
金
かね
を
出
だ
して、ほんの
志
こころざし
ばかりでもやっていく
人
ひと
がないことはなかったけれど、それすら、
日
ひ
によっては、まったくないこともありました。
男
おとこ
は、
空腹
くうふく
を
抱
かか
えながら、
町
まち
の
中
なか
をさまよわなければなりませんでした。
美
うつく
しい
品物
しなもの
を、いっぱい
並
なら
べた
店
みせ
の
前
まえ
や、おいしそうな
匂
にお
いのする
料理店
りょうりてん
の
前
まえ
を
通
とお
ったときに、
男
おとこ
は、どんなに
世
よ
の
中
なか
を
味
あじ
けなく
感
かん
じたでしょう。
彼
かれ
はしかたなく、
疲
つか
れた
足
あし
を
引
ひ
きずって、
田舎道
いなかみち
を
歩
ある
いて、さびしい、
自分
じぶん
の
小屋
こや
のある、
村
むら
の
方
ほう
へ
帰
かえ
っていくのでした。
ここにその
途中
とちゅう
のところで、
道
みち
ばたに一
軒
けん
の
家
いえ
がありました。そう
大
おお
きな
家
いえ
ではなかったが、さっぱりとして、
多分
たぶん
役人
やくにん
かなにかの
住
す
んでいる
家
いえ
のように
思
おも
われました。この
道
みち
をいく
人々
ひとびと
は、ちょうど、その
窓
まど
の
下
した
を
通
とお
るようになっていたのであります。
ある
日
ひ
のこと、
男
おとこ
は、その
窓
まど
の
下
した
に
立
た
って、
上
うえ
を
仰
あお
ぎながら、あわれみを
乞
こ
うたのでありました。どうせ、
家
いえ
の
内
うち
からは
返答
へんとう
がないだろうと
思
おも
いました。なぜなら、
町
まち
では、あのように、
顔
かお
を
見合
みあ
わせて、
手
て
を
合
あ
わせて
頼
たの
んでも、
知
し
らぬふうをしていき、また
振
ふ
り
向
む
こうともしないものを、
窓
まど
の
下
した
から、しかも
外
そと
の
往来
おうらい
の
上
うえ
で
頼
たの
んでも、なんの
役
やく
にも
立
た
つものでないと
考
かんが
えられたからです。
「どうぞ、
哀
あわ
れなものですが、おねがいいたします。」と、
男
おとこ
は、
重
かさ
ねていった。
ひっそりとして、
人
ひと
のいるけはいもしなかったのが、このとき、ふいに
窓
まど
の
障子
しょうじ
が
開
あ
きました。
顔
かお
を
出
だ
したのは、
眼鏡
めがね
をかけた
色
いろ
の
白
しろ
い、
髪
かみ
のちぢれた
女
おんな
の
人
ひと
でした。その
人
ひと
は、たいへんやさしそうな
人
ひと
に
見
み
えました。
男
おとこ
は、
頭
あたま
を
下
さ
げて、
「どうか、なにかおめぐみください。」と
願
ねが
いました。
その
女
おんな
の
人
ひと
は、
男
おとこ
が
思
おも
ったように、ほんとうにやさしい、いい
人
ひと
でありました。じっと、
男
おとこ
の
顔
かお
を
見
み
ていましたが、
「そういうように、おなりなさるまでには、いろいろなことがおありでしたでしょうね。」といいました。
男
おとこ
は、はじめて、
他人
たにん
からそういうように、やさしい
言葉
ことば
で
問
と
いかけられたのでした。
「よくお
聞
き
きくださいましてありがとうぞんじます。
妻
つま
には
死
し
に
別
わか
れ、
頼
たよ
りとする
子供
こども
も、また
病気
びょうき
でなくなり、
私
わたし
は、
中風
ちゅうふう
の
気味
きみ
で、
半身
はんしん
がよくきかなくなりましたので、
働
はたら
くにも
働
はたら
かれず、たとえ
番人
ばんにん
にさえも
雇
やと
ってくれる
人
ひと
がありませんので、おはずかしいながら、こんな
姿
すがた
になってしまったのです。」と、
涙
なみだ
ながらに
答
こた
えました。
女
おんな
の
人
ひと
も、やはり、
目
め
をうるませていました。
「
私
わたし
の
父
ちち
が、ちょうどあなたの
年
とし
ごろなんですよ。
都合
つごう
のために、
遠
とお
くはなれてくらしていますが、あつさ・さむさにつけて、
父
ちち
のことを
思
おも
い
出
だ
します。だれでも、
若
わか
いうちに
働
はたら
いてきたものは、
年
とし
をとってからは、
楽
らく
にくらしていけるのがほんとうだと
思
おも
います。それが、この
世
よ
の
中
なか
では、
思
おも
うようにならないんですのね。」と、
女
おんな
の
人
ひと
はいいました。
男
おとこ
は、だまって、うなだれて
女
おんな
の
人
ひと
のいうことを
聞
き
いていました。
女
おんな
の
人
ひと
は、いくらか
銭
ぜに
を
哀
あわ
れな
男
おとこ
に
与
あた
えました。
男
おとこ
は、しわだらけな、
色
いろ
つやのよくない
手
て
をのばしてそれを
受
う
け
取
と
って、いただきました。その
銭
ぜに
は、たとえすこしではありましたけれど、
深
ふか
いなさけがこもっていましたので、
男
おとこ
には、たいへんにありがたかったのです。
男
おとこ
は、いくたびもお
礼
れい
を
述
の
べて、そこを
立
た
ち
去
さ
りました。そのうしろ
姿
すがた
を
女
おんな
の
人
ひと
は、
気
き
の
毒
どく
そうに
見送
みおく
っていました。
その
後
ご
、
男
おとこ
は、
町
まち
へいくたびに、この
家
いえ
の
窓
まど
の
下
した
を
通
とお
ったのでした。けれど、たびたびあわれみを
乞
こ
うては
悪
わる
い
気
き
がしました。よくよく
困
こま
ったときででもなければ、
願
ねが
うまいと
決心
けっしん
したのであります。
しかし、その
長
なが
い
間
あいだ
には、
雨
あめ
の
降
ふ
る
日
ひ
もあれば、また
風
かぜ
の
吹
ふ
く
日
ひ
もありました。そして、一
日
にち
町
まち
の
中
なか
を
歩
ある
いても、すこしも、もらわないような
日
ひ
もあったのであります。
彼
かれ
はしかたなく、この
家
いえ
の
窓
まど
の
下
した
に
立
た
って、
「どうぞお
願
ねが
いいたします。」と、
上
うえ
を
仰
あお
いで、いわなければならなかった。
すると、
障子
しょうじ
が
開
あ
いて、
眼鏡
めがね
をかけた、
色
いろ
の
白
しろ
い、
髪
かみ
のちぢれた
女
おんな
の
人
ひと
が、
顔
かお
を
出
だ
しました。そして、いやな
顔
かお
もせずに、
「さあ、あげますよ。」といって、
銭
ぜに
を
男
おとこ
の
手
て
に
渡
わた
したのでした。
乞食
こじき
の
男
おとこ
は、それをいただいて、
「ありがとうぞんじます。」と、いくたびも
礼
れい
をいって
立
た
ち
去
さ
りました。
風
かぜ
の
吹
ふ
く、さびしい
村
むら
の
方
ほう
へ
男
おとこ
は
帰
かえ
っていきました。たとえ、わずかばかりのお
金
かね
であっても、
空腹
くうふく
をしのぐことができたのであります。
この
広
ひろ
い
世
よ
の
中
なか
に、だれ
一人
ひとり
、
自分
じぶん
のために
思
おも
ってくれるもののないのに、こうして
心
こころ
から
同情
どうじょう
してもらうということは、
頼
たよ
りない
男
おとこ
に、どれほど、
明
あか
るい
気持
きも
ちを
与
あた
えたかしれません。
男
おとこ
は、
毎日
まいにち
、この
家
いえ
の
窓
まど
の
下
した
を
通
とお
るときに、この
家
いえ
の
人々
ひとびと
の
身
み
の
上
うえ
に
幸福
こうふく
あれかしと
祈
いの
らないことはなかったのです。
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