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真昼のお化け(2)

时间: 2022-12-24    进入日语论坛
核心提示:中「きょう、勇ゆうちゃんはびんどを持もって川かわへえびを取とりにいくといったが、僕ぼくもいっしょにゆこうかな。けれど、だ
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「きょう、ゆうちゃんはびんどをってかわへえびをりにいくといったが、ぼくもいっしょにゆこうかな。けれど、だいぶそらくらくなって、あめりそうだ。」
こう一は、学校がっこうかえりにかんがえながら、はらっぱをあるいてきました。そらていた地面じめんうつすと、なんだろう? 黒光くろびかりのする、とげとげしたものが、ゆくさきくさうえちているのでした。
むしかしらん?」
こう一は、すぐに、それがきもののようにかんじました。なんだか気味きみわるいものです。しかしうごきません。用心深ようじんぶかく、をこらしてちかづくと、ながあしがあって、二つのひかっています。かぶとむしではない、むかででもない、えびのようであるが……まだたことのないむしとしかおもわれませんでした。
「なんだろうな?」と、かれは、もっとちかづいてよくると、ながいひげがあって、それはまちがいなく、えびでありました。
「えびだ、おおきなえびだ!」
不思議ふしぎでたまりません。こんなくさうえちているのに、いまみずなかから、はねしたばかりのように、黒色くろいろこうらがぬれているなどであります。かれは、ちょっと、それをひろげるのにためらいました。が、えびであることがわかると、しぜんに勇気ゆうきて、げたのです。
なるほど、ゆうちゃんのいったように、ながあしひらたいあしとがあって、どこもきずがついていませんでした。
みずなかれたら、かえるかもしれぬと、こう一はおもったので、なるべくつよにぎらないようにして、いそいだのでありました。
「どうして、こんなところに、えびがあったんだろうな。」
かんがえれば、かんがえるほど、不思議ふしぎでなりませんでした。それから、このえびをどうしたらいいかということにもまよったのでした。うちかえって、すぐみずれてみよう、そして、きたらっておこう、もしかえらなかったら、そうだ、標本ひょうほんにしようか?
だが、もっとにかかるのは、わる病気びょうきのはやる時分じぶんに、こんなものをひろってかえると、きっとおとうさんもおかあさんも、やかましくいって、しかることでした。だから、うちひとたちのにつかないところにかなければならない。
こう一は、あたまに、いろんなことをかんがえながら、はらっぱのなかに、まって、えびを鼻先はなさきへぶらさげてにおいをかいでみました。まだ、うみおよいでいた時分じぶんの、いそのこっていました。
「きっと、かえるかもしれない。」
かれは、かばんから、半紙はんしして、えびをつつみました。そして、いそぎました。うちくと、洗面器せんめんき塩水しおみずつくって、れてみたのです。けれど、やはり、えびはうごきませんでした。かれは、ともかく、この、えびをゆうちゃんにせようとおもって、またかみつつんで、がきあいだかくしました。
ちゃだなのうえに、おやつがありますよ。」と、おかあさんが、おっしゃいました。こう一は、おやつもべないで、そとしたのであります。
ゆうちゃんがたら、びっくりするだろうな。」と、あるきながら、ときどき、えびをかみからしてながめていました。
指先ゆびさきでつまんで、これが、みずなかにいる時分じぶん姿すがた想像そうぞうして、空中くうちゅうおよがしてみました。

みやまえまでくると、ワン、ワンとけたたましいいぬのほえごえがしました。
境内けいだいをのぞくと、昨日きのう、かぶとむしをさがした、かしわのしたで、ペスが、しきりに地面じめんるように、つめで、かいて、さわいでいるのでした。
「ペスや、なにしているんだい?」
こう一は、さっそく、いぬのそばへいってみました。へびでもつけたのかとおもったのが、そうでなくちいさなあなかってほえているのでした。
「なあんだ。」といっていると、くろいものがあななかからあたましたようです。
「おや、なにかえたぞ。」
こう一は、棒切ぼうきれをきがして、あなをつついてみました。おくほうに、ちいさなしかのつのかたちをしたものが、ちょっとえています。
「やあ、かぶとのだ。こんなところに、かぶとむしのあながあるとはおもわなかったなあ。ペス、おまえはおりこうだね。」と、こう一は、よろこんでペスのあたまをなでてやりました。そして、えびをあちらののところへいてきて、いっしょうけんめいに、そのあななかからかぶとむしをすのに、夢中むちゅうになっていました。
やっと一ぴきつかまえると、まだいるだろうと、こう一は、かおあかくして、かおあせながしながら、あなかえしていました。また、あちらで、「ワン、ワン。」と、ペスが、ほえました。かおげると、おどろいたのです。ペスは、えびをくわえて、二、三あたまったが、そのまま、あちらへしていきました。
「ペス! それは、大事だいじなんだよ。」といって、こう一は、あといかけたけれど、だめでした。もう、姿すがたえなくなってしまいました。
学校がっこう運動場うんどうじょうで、あそんでいるとき、勇吉ゆうきちがそばへきましたから、
ゆうちゃん、かわさかなりにいったの。」と、こう一は、ききました。
かみなりしたろう、あめるといけないからいかなかった。それで、ばん縁日えんにちへいって、きんめだかをってきたのさ。」
「あのびんにれた?」
れたよ、こんどかわへいって、ってくるのだ。」
こう一は、えびをひろったはなしをしました。
「えっ、あのはらっぱでかい。」と、勇吉ゆうきちは、さもしんじられないというような、かおつきをしたのです。
「うそでない、くさうえちていたんだよ。」
こう一は、それ以上いじょう、ほんとうだとしんじさせるようにいえないことを、至極しごく残念ざんねんおもいました。
魚屋さかなやさんかしらん。しかし、あんなはらっぱをとおるはずがないだろう。また、ねこがさらってきたなら、べてしまうし。そのえびは、どっか、きずがついていたかい。」と、勇吉ゆうきちが、ききました。
「一ぽんあしがとれていなかった。まだきているように、黒光くろびかりがしていた。」
「そして、あしが、うごいていた?」
「じっとしていた。ぼくうちかえって、すぐに塩水しおみずれてみたけれど、んでいたよ。」と、こう一は、いいました。
「そいつは、おかしいね。それで、そのえびどうしたの。」と、勇吉ゆうきちは、そんなこと、ありないことだといわぬばかりに、いました。
ぼくゆうちゃんに、せようとおもって、っていったのだよ。途中とちゅうで、かぶとむしをつけたので、つかまえていると、ペスがくわえて、げてしまったんだ。」と、こう一は、かんがえても残念ざんねんそうに、こたえました。
「なあんだ――。」と、勇吉ゆうきちは、両手りょうてあたまうえにのせて、しばらくかんがえていたが、
「ああ、こうちゃん、わかった。きみは、ゆめたんだ! きっと、こうちゃんは、ゆめて、それをほんとうにあったこととおもっているんだ。だい一、うみにいるえびが、はらっぱへくるわけがないさ。それでなければ、おけだ!」
勇吉ゆうきちは、太陽たいようがきらきらする、もりほう見上げて、わらいました。しろくもが、のように、あおそらはしっていきました。
「えっ、おけ? なんでおけであるもんか……。」と、こう一は、りきんで、いいはったが、自分じぶんながら、昨日きのうのことをかんがえると、まったくゆめのようながしてならなかったのです。
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