迷い路
小川未明
二郎は
「兄さん、何を
兄は驚いた風で、少し
「お前は、どんな夢を見たんだ。」
と問いました。二郎は余り兄の
「兄さん! 僕の
と語る。と兄は顔の色を紅く染めて、
「二郎や、僕もそれと同じい夢を見た。母さんは初め遇うた時に
「うん、そうだったよ。じゃ兄さんも見たのか。」
「ああ、僕も見たよ。」
「じゃ、これは大変だ! 大変だ!」と二郎は気の狂うたように
「何するんだ馬鹿ッ!」
「何馬鹿だ?」と二郎は嬉しいやら、懐かしいやら、不思議やらで
「痛い! 痛い! ああ痛い!……」と太郎は泣き出して「母さん!……二郎ちゃんが
母親は物優しく「まあ二郎ちゃん、お前さんは何をしだい、何もしない兄さんを
と言いました。
二郎は物やさしく母親に言われて、心が少し
「兄さん、堪忍しておくれ。」と頭を下げました。太郎は黙ってしゃくり泣きをしていますと、母親は、
「太郎や何処か傷は付かなかったの、もう痛みはとまって。」
と、親切に言われるので、この時太郎も二郎も
兄は黙って
太郎は十二歳で二郎は十歳であります。その晩二人は寝床へ入ってから、
橋を渡り、畑や、圃の中の小道を過ぎて、目ざす隣村の村
「二郎や、この道をお前も夢に見たかい。」
「ああ、やっぱりこの道を行ったんです。」
「この、杉林も通ってまだまだ奥へ行ったよ。」
「僕も……あれ、兄さんこの道は
今迄二人の歩いて来た、道が二筋に分れて一つは広い道幅の
「二郎やこの広い道を行くんだよ。」
「いいえ兄さんこの細い道を
「だって、僕ぁ�母さんを慕うように慕っています。
母親は物優しく「まあ二郎ちゃん、お前さんは何をしだい、何もしない兄さんを
と言いました。
二郎は物やさしく母親に言われて、心が少し
「兄さん、堪忍しておくれ。」と頭を下げました。太郎は黙ってしゃくり泣きをしていますと、母親は、
「太郎や何処か傷は付かなかったの、もう痛みはとまって。」
と、親切に言われるので、この時太郎も二郎も
兄は黙って
太郎は十二歳で二郎は十歳であります。その晩二人は寝床へ入ってから、
橋を渡り、畑や、圃の中の小道を過ぎて、目ざす隣村の村
「二郎や、この道をお前も夢に見たかい。」
「ああ、やっぱりこの道を行ったんです。」
「この、杉林も通ってまだまだ奥へ行ったよ。」
「僕も……あれ、兄さんこの道は
今迄二人の歩いて来た、道が二筋に分れて一つは広い道幅の
「二郎やこの広い道を行くんだよ。」
「いいえ兄さんこの細い道を
「だって、僕は夢にこの道へ行ったのを見た。」
「僕はこの道を行ったよ。」
「この道の方が
「いいえこちらが真実だ。」
「僕は
「僕は此方へ行きたいな。」
「二郎ちゃんこの方が歩きよくていいや。」
「兄さん、此方へお
「いやだ!」
「じゃ、
兄は怒った、さっさっと広い道の方を歩いて行きます。今は二郎も意地
傍の雑木林で
昔は大名か何かの、奇麗な御殿があった所だと見えて、大きな
案の如く
二郎は魂の抜け去ったように
「
と、言うと乞食は
「真実の母さんてば……二郎さん、お前さんはどうかしていますね、きっと狐にばかされて此処へ来たのですよ。」
と、後は何かぶつぶつと口の中で
「二郎ちゃん!」と一声何処かで声がする。二郎は歩みを止めて
「お母さん!」と、思い存分に
太郎は途中からよして、自分よりは
これから兄弟とも今の母親の言うことをきいて孝行を