四
あくる日、女は森に入って昨夜聞いた泉を探して歩いた。繁った青葉は、下の草を一層濃く青く染めた。
女の顔も、着物の色も、上の青葉の色が照り返って青かった。
女は、柔らかな夢を見ている草の上に坐って耳をそばだてた。微かな風の音。ひらひらと舞う青葉の光り。葉と葉とが摺れ合って、心地よい歌をうたっていた。
女は、男が来てから不思議のことが多い。聞かなかった泉の音を聞く。分らなかった風の色が見える。
この時、はたはたと聞き慣れぬ鳥の
この、深い森の奥には、他の女の死んだ死骸が捨てられているのでないか。肉が朽ち、顔や、目や、鼻が
女は、訪ねて来た盗賊のことを思い出した。あの男は、他でも女を
けれど、鬼あざみを摘んで、それに熱い接吻をしている女の唇はもっと紫色であった。
この時、巣を作っている鳥が、怪しな声で啼いた。尾は長く、垂れて、頭の上に届きそうだ。鳥の拡げた翼の紅は、柔らかな、つやつやしい、青葉の光りに映った。鳥の長い