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山へ帰りゆく父(2)

时间: 2023-01-08    进入日语论坛
核心提示:二人ふたりは、たがいに別わかれて暮くらさなければならないのを悲かなしく思おもいました。「これは、おまえが子供こどもの時分
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二人ふたりは、たがいにわかれてらさなければならないのをかなしくおもいました。
「これは、おまえが子供こども時分じぶんに、うらにわさきでひろって大事だいじにしていたいしだ。」と、父親ちちおやはいって、とこだいうえせてあったくろいしりあげて、息子むすこせました。
わたしは、おまえが子供こども時分じぶんに、っていたおもちゃは、みんな粗末そまつにしないでしまっておく。そして、ときどきしてみては、おまえのことをおもらすのだ。」と、父親ちちおやはいいました。
これをくと、息子むすこは、どんなに父親ちちおやなさけをありがたくかんじたかしれません。そして、そのくろいしを、ってつくづくとながめますと、やはり、自分じぶんにも子供こども時分じぶんのことがおもされたのであります。
ほとんど、いくねんあいだ、そのいしは、故郷こきょうのうすぐらい、いえとこに、ほこりをびてかれていました。
「おとうさん、わたしは、このいしっていってもようございますか?」と、息子むすこは、父親ちちおやにたずねました。
「ああ、いいとも、おまえのってゆくぶんにはさしつかえない。なんでもほしいものがあったらってゆくといい。」と、父親ちちおやこたえました。
ながい、ながあいだ、こうして、じっとしていたいしが、ここから、どこかへ、まったくらぬところへってゆかれることになりました。それはおもいもよらないことで、変化へんかというものがどんなもののうえにもくることを、おもわせたのであります。
いしは、息子むすこのかばんのなかへ、かみつつまれてはいりました。
かれは、またそとて、子供こども時分じぶん、よくあそんだ草原くさはらへやってきました。そこには、いろいろなくさが、むらさきや、あおや、しろはなかせていました。そのはなは、このあたりにはたくさんあっても、みやこではとてもることができませんでした。かれは、そのはなの一つ、一つをむかしのおともだちにでもあったように、なつかしげにながめました。とんぼがんできて、かがやかしいはねを、はなまってやすめています。それに、じっと見入みいっていると、そのころ、いっしょにくさや、はなをつんであそんだ近所きんじょおんなや、おとこ姿すがたが、ありありとさきにちらつくようにうつってくるのでした。
しかし、そのおんなも、おとこも、もういまではこの土地とちにはいません。みんな大人おとなになって、おんなはおかあさんになり、おとこはおとうさんになっているのです。けれど、この草原くさはら景色けしきは、むかしとすこしのわりもありませんでした。くさいているはないろも、またとんぼのはねもすこしのわりがありませんでした。
息子むすこかんがえました。「このくさみやこってゆこう。そして、朝晩あさばんながめて、故郷こきょうのことをおもい、子供こども時分じぶんのことをかんがえよう……。」と、かれは、紫色むらさきいろはないているくさを、をつけてったのであります。
やがて息子むすこは、みやこかえることになりました。父親ちちおやに、わかれなければならぬかなしみで、むねいっぱいにして旅立たびだちました。
汽車きしゃは、くるときとおなみちとおって、ついにふたたび故郷こきょうからとおってしまったのであります。
いくも、とおいところをいしくさとがはこばれました。いしくさはどうして、こんなとおいところへくるなどとおもってましたでしょう?
息子むすこは、植木屋うえきやに、くさといっしょにいしはちうつさせました。そして、くさいしとを、ときどきようとしたのであります。植木屋うえきやは、はちなかへ、くさえ、ほどいいところへいしきました。
「これでがつけば、たいしたものです。」と、植木屋うえきやはいいました。
息子むすこは、植木屋うえきやかって、「これをどこにいたらいいだろうか。」ときました。
「さようです、さむいところにえるくさですから、風当かぜあたりのいい、たかいところがいいとおもいます。」と、植木屋うえきやこたえました。
息子むすこは、これをバルコニーにしておきました。そこからは、都会とかいのいろいろな工場こうじょうからがるけむりくろくなってられました。ちょうどくろいへびのはいがるように、いつしかあおそらに、けむりまれてえているのでありました。
また、いろいろの、ちまたからこるおとこえてきました。かぜは、いままでは、つねにみなみからいていましたが、だんだんきたからくほうがおおくなると、季節きせつわって、あつさはっていったのです。
つばめはいたり、すずめもまれにきて、屋根やねうえなどできましたけれど、くさは、故郷こきょう草原くさはらいたような、いい小鳥ことりこえにはふたたびあいませんでした。
太陽たいようは、ひがしからて、西にししずみました。けれど、あのくろ森影もりかげからがって、あのたかくもひかやまのかなたにしずむのではありませんでした。いつもほこりっぽい建物たてもの屋根やねからがって、あちらの屋根やねあいだちるのでした。くさは、夜々よよ大空おおぞらかがやほしひかりあおいで、ひとりさびしさにいたのです。故郷こきょう露深つゆぶかい、むしこえのしげき草原くさはらしたわれたからです。そこにいまもなおはないている姉妹きょうだいともだちがいるのが、かぎりなくこいしかったのです。
あるくさは、しただまってすわっていたいしかっていいました。
「あなたも、とおくからきなされたのですか。」
「ええ、やはり汽車きしゃって、あなたといっしょにまいりましたのです。」と、いしこたえました。
すると、くさはさもつかれたというようすをして、
「あなたは、からだがおじょうぶですから、どこにいられてもいいのですけれども、わたしは、もうこんなによわっています。ついここにくるまでは、はかない自分じぶん運命うんめいというものにかんがえつかなかったのです。」と、さも後悔こうかいしたようにかたりました。
これをくと、さすがにだまっていたいしも、感慨かんがいえないふうで、
わたしは、ながいくねんかのあいだ無事ぶじらしてきました。そして、おそらく、永久えいきゅうにそのようにらされるものとおもっていました。それが、おもいがけなく、こんなうえになってしまったのです。これからさきのことをかんがえると不安ふあんでなりません。」と、いしはいいました。
やさしいくさは、自分じぶんわすれて、いし同情どうじょうしたらしかった。
「けれど、あなたはおじょうぶですから、安心あんしんなさいまし。わたしは、れれば、明日あすにもあの人通ひとどおりのおおみちうえてられてしまうかもしれません。そうすれば、あのおそろしいくるまや、うまにふまれて、わたしのからだは、跡形あとかたもなくくだかれてしまうでしょう。」と、くさはいいました。
「いえ、わたしだっておなじことです。」と、いしはいいました。
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