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夕焼けがうすれて(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:夕焼けがうすれて小川未明汽笛きてきが鳴なって、工場こうじょうの門もんをでるころには、日ひは西にしの山やまへ入はいるのであ
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夕焼けがうすれて

小川未明


汽笛きてきって、工場こうじょうもんをでるころには、西にしやまはいるのでありました。ふと、達夫たつおあるきながら、
ぼくのおとうさんは、もうかえってこないのだ。」と、あたまにこんなことがおもかぶと、いつしかみんなからおくれて、自分じぶんは、ひとりぼんやりと、はしうえっていました。
もはやとおひともありません。みずうみほうかってながれています。広告燈こうこくとうあかひかりが、川水かわみずのおもてにうつっていました。
「いつか、おとうさんにうみへつれていってもらった。かえりは、くらくなった。そして、電車でんしゃまどから、あの広告燈こうこくとうえたっけ、あのときはたのしかったなあ。」
学生服がくせいふく少年しょうねんから、あつなみだがながれました。つねにかれはほがらかだったのです。おとうさんは、おくにのためにたたかって、んだのだ。そして英霊えいれい永久えいきゅうきていて、自分じぶんたちを見守みまもっていてくださるのだ。だからさびしくないとしんじていたのでした。しかるに、どうしたのか、今日きょうは、ばかにおとうさんのことがおもされてなつかしかったのです。
「もし、きていらして、あの小山こやまくんのおとうさんみたいに、凱旋がいせんなさったらなあ。」と、かんがえると、おもっただけで、びたつようながしました。
ちょうど、このとき、灰色はいいろかげが、じゅうをかついで、あちらからはしわたって、足音あしおとをたてずに、きかかりました。
「あっ、おとうさんでないか。」
達夫たつおは、をみはりました。たとい、幽霊ゆうれいでも、おとうさんだったらきつこうとっていると、それは、りざおをかついで、どこかのひとがつかれたあしきずりながらくるのでした。
えきへは、まだとおうございますか。」と、そのひとが、たずねました。
「このまちをまっすぐにいって、つきたるとじきです。」と、達夫たつおは、おしえました。
ぶどういろそられて、ボーウと、サイレンがりひびきました。これから、工場こうじょうでは、夜業やぎょうがはじまるのです。
非常時ひじょうじのことで、仕事しごといそがしくなりました。からだ強健きょうけんで、希望きぼうかたは、ふるって居残いのこってもらいたい。」と工場長こうじょうちょうのいった言葉ことばが、達夫たつおみみに、はっきりとよみがえりました。
同時どうじに、かれは、戦時せんじ日本にっぽん勇敢ゆうかん少年工しょうねんこうであったのです。きゅうに、かれあしにはちからはいったし、両方りょうほううでは、かたくなりました。まちはいると、ラジオの愛馬進軍歌あいばしんぐんかがきこえてきました。かれは、いつものごとくほがらかで、口笛くちぶえをそれにわして、いえかえるべくえきほうあるいていました。
「ああ、おそくなった。」
電車でんしゃって、こしろすと、ひとりごとをしました。そとくらくなって、ただまち燈火あかりほしのように、きらきらしているばかりです。かれは、いつもかえ時分じぶんに、れたそらにくっきりとかびた、国境こっきょう山々やまやま姿すがたるのが、なによりのたのしみだったのです。ひとのめったにいかない清浄せいじょうやまいただきや、そこにえて、かぜかれているはやし景色けしきなどをかんがえるだけでも、一にちつかれをわすれるようながしました。そして、おとうさんの霊魂れいこんは、きっとあんなようなきよらかなところにんでいらっしゃるのだろうとおもったのでした。それが、もうおそくなって、やまえないのは残念ざんねんです。
じっと、燈火あかりているうちに、うち自分じぶんかえるのをっているおかあさんの姿すがたかびました。
「そうだ、ぼくつよくなるのだ。そして、おかあさんのちからにならなければ。」
かれは、きっとして、あたまげました。
その翌日よくじつばんのことです。
かあさんは、夕飯ゆうめし用意よういをして、おなかをすかしてかえってくる息子むすこっていられました。自分じぶんにはなくても、子供こどもには、べつに滋養じようになりそうなおさかながついています。
「どうしたんでしょうね。いつも、いまごろはかえってくるのに。」と、おかあさんは、時計とけい見上みあげていられました。どうしたのか、達夫たつおは、いつになくかえりがおそかったのです。
「おかあさん。おそくなっても、心配しんぱいしなくていいよ。」と、がけにいった、わが言葉ことばおもされました。けれど、かえ時刻じこくのきまっているのに、こうおそいはずがない。なにかまちがいがあったのでなければいいがと、おかあさんは心配しんぱいしました。
機械きかいにふれて、けがをしたのではないかしらん。」
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