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雪くる前の高原の話(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
时间:
2024-10-24
作者:
destoon
进入日语论坛
核心提示:雪くる前の高原の話小川未明それは、険けわしい山やまのふもとの荒野こうやのできごとであります。山やまからは、石炭せきたんが
(单词翻译:双击或拖选)
雪くる前の高原の話
小川未明
それは、
険
けわ
しい
山
やま
のふもとの
荒野
こうや
のできごとであります。
山
やま
からは、
石炭
せきたん
が
掘
ほ
られました。それをトロッコに
載
の
せて、
日
ひ
に
幾
いく
たびということなく
高
たか
い
山
やま
から、ふもとの
方
ほう
へ
運
はこ
んできたのであります。ゴロッ、ゴロッ、ゴーという
音
おと
をたてて
石炭
せきたん
を
載
の
せた
車
くるま
は、レールの
上
うえ
をすべりながら
走
はし
ってゆきました。そのたびに、
箱
はこ
の
中
なか
にはいっている
石炭
せきたん
は、
美
うつく
しい
歯
は
を
光
ひか
らしておもしろそうに
笑
わら
っていました。
「
私
わたし
たちは、あの
暗
くら
い、
寒
さむ
い、
穴
あな
の
中
なか
から
出
だ
されて、この
明
あか
るい
世界
せかい
へきた。
目
め
にうつるものは、なにひとつとして
珍
めずら
しくないものはない。これから、どこへ
送
おく
られるだろう?」と、
同
おな
じような
姿
すがた
をした
石炭
せきたん
は
語
かた
り
合
あ
っていました。
だんまり
箱
ばこ
は、これに
対
たい
してなんとも
答
こた
えません。むしろ、それについて
知
し
らないといったほうがいいでありましょう。しかし、レールは、そのことをよく
知
し
っていました。なぜなら、
自分
じぶん
の
造
つく
られた
工場
こうじょう
の
中
なか
には、たくさんの
石炭
せきたん
を
見
み
て
知
し
っているからであります。いま、
石炭
せきたん
がゆく
先
さき
をみんなで
話
はな
し
合
あ
っているのを
聞
き
くと、ひとつ
喜
よろこ
ばしてやろうとレールは
思
おも
いました。
「あなたがたは、これから、にぎやかな
街
まち
へゆくのですよ。そして、
働
はたら
くのです……。」といいました。
石炭
せきたん
は、ふいにレールがそういったので、
輝
かがや
く
目
め
をみはりました。
「
私
わたし
たちは、
工場
こうば
へゆくんですか? そんなようなことは
山
やま
にいる
時分
じぶん
から
聞
き
いていました。それにしても、なるたけ、
遠
とお
いところへ
送
おく
られてゆきたいものですね。いろいろな
珍
めずら
しいものを、できるだけ
多
おお
く
見
み
たいと
思
おも
います。それから
私
わたし
たちは、どうなるでしょうか……。
知
し
ってはいられませんか?」と、
石炭
せきたん
は、たずねました。
レールは、
考
かんが
えていたが、
「あなたがたが、
真
ま
っ
赤
か
な
顔
かお
をして
働
はたら
いていなされたのを
見
み
ました。そのうちに、
見
み
えなくなりました。なんでも、つぎから、つぎへと、
空
そら
へ
昇
のぼ
ってゆかれたということです。
考
かんが
えると、あなたがたの
一生
いっしょう
ほどいろいろと
経験
けいけん
なさるものはありますまい。
私
わたし
たちは、
永久
えいきゅう
に、このままで
動
うご
くことさえできないのであります。」と、レールはいいました。
石炭
せきたん
は、トロッコに
揺
ゆ
られながら
考
かんが
え
顔
がお
をしていました。なんとなく、すべてをほんとうに
信
しん
ずることができないからでした。
そのとき、かたわらの
赤
あか
く
色
いろ
づいた、つたの
葉
は
の
上
うえ
に、一ぴきのはちが
休
やす
もうとして
止
と
まっていましたが、トロッコの
音
おと
がして
眠
ねむ
れなかったので、
不平
ふへい
をいっていました。
「なんというやかましい
音
おと
だろう。びっくりするじゃないか。」と、はちはいいました。
「
安心
あんしん
して
止
と
まっていらっしゃい。
天気
てんき
がこう
悪
わる
くては、どこへもいかれないでありましょう。
野原
のはら
はさびしいにちがいない。
遅咲
おそざ
きのりんどうの
花
はな
も、もう
枯
か
れた
時分
じぶん
です。そして、あの
空
そら
の
雲
くも
ゆきの
早
はや
いことをごらんなさい。
天気
てんき
のよくなるまでここに
止
と
まっていて、
太陽
たいよう
が
出
で
てあたたかになったら、
里
さと
の
方
ほう
をさして
飛
と
んでいらっしゃい。」と、つたの
葉
は
は、しんせつにいってくれました。
若
わか
い、一
本
ぽん
のすぎが、つたとはちの
話
はなし
をしているのを
冷笑
れいしょう
しました。
「トロッコの
音
おと
にたまげたり、これしきの
天気
てんき
におびえているようで、この
山
やま
の
中
なか
の
生活
せいかつ
ができるものか。もっとも、もう一
度
ど
嵐
あらし
がきたなら、つたなどは、どこへか
吹
ふ
き
飛
と
ばされてしまうであろうし、あんな
小
こ
ばちなどは、
凍
こご
え
死
し
んでしまうことだろう。この
俺
おれ
は、
嵐
あらし
と
吹雪
ふぶき
に
戦
たたか
わなければならない。そして、もうおそらく、
過
す
ぎ
去
さ
った
夏
なつ
の
日
ひ
のように、
銀色
ぎんいろ
に
輝
かがや
く
空
そら
の
下
した
で、まどろむというようなことは、また
来年
らいねん
まではできないであろう……。」と、すぎの
木
き
は、いっていました。
赤
あか
くなったつたは、
勇敢
ゆうかん
な
若
わか
いすぎの
木
き
のいっていることを
聞
き
いて、なんとなく
年
とし
とってしまった、
自分
じぶん
の
身
み
の
上
うえ
を
恥
は
ずかしく
感
かん
じたのであります。なにもこれに
対
たい
して、いうことができなかったのでした。そして、すぎの
木
き
のいうように、
今夜
こんや
にも、すさまじい
嵐
あらし
が
吹
ふ
きはしないかと
身震
みぶる
いしながら、
空
そら
を
仰
あお
いでいました。
赤
あか
い
葉
は
の
面
おもて
に
止
と
まっていた
小
こ
ばちは、
飛
と
び
上
あ
がって、つい
近
ちか
くを
走
はし
っていった
石炭
せきたん
の
上
うえ
に
止
と
まりました。この
黒
くろ
い、ぴかぴか
光
ひか
るものはなんだろうと
思
おも
ったからです。
石炭
せきたん
は、にこにことして、だまって、この
小
ちい
さな
生
い
き
物
もの
の
動
うご
くようすを
見守
みまも
っていました。はちは
石炭
せきたん
の
臭
にお
いをかいだり、また
小
ちい
さな
口
くち
でなめてみたり、どこからきたかを
自分
じぶん
の
小
ちい
さな
感覚
かんかく
で
知
し
ろうとしました。しかし、それはわかるはずがなかったのです。
レールは、また、このはちをよく
見知
みし
っていました。なぜなら、この
小
ちい
さい、
敏捷
びんしょう
な、すきとおるように
美
うつく
しい
翅
つばさ
を
持
も
ったはちが、つねに、この
近傍
きんぼう
の
花
はな
から、
花
はな
を
飛
と
びまわっていたからです。
夏
なつ
のはじめのころに、はちは
他
た
のはちたちと
共同
きょうどう
をして、一つの
巣
す
を
花
はな
の
間
あいだ
に
造
つく
っていました。そして、みつを
求
もと
めに
彼
かれ
らは
毎日
まいにち
遠
とお
くまで
出
で
かけたのでありました。
朝日
あさひ
の
細
ほそ
い、
鋭
するど
い、
光
ひかり
の
箭
や
が、
花
はな
と
花
はな
の
影
かげ
の
間
あいだ
から
射
さ
し
込
こ
む
時分
じぶん
になると、
彼
かれ
らは、レールの
上
うえ
を、それについて
南
みなみ
へ、
北
きた
へと
飛
と
んでいったのを、レールは
見
み
たのでありました。はちたちがいたるところの
花
はな
にとまって、
倦
う
まずにみつを
集
あつ
めている
間
あいだ
に、
太陽
たいよう
は
高
たか
く
上
あ
がりました。そして、トロッコの
音
おと
がしてレールの
上
うえ
が
熱
あつ
くなり、
銀
ぎん
のように
白
しろ
く
光
ひか
る
風
かぜ
が、
高原
こうげん
を
渡
わた
ったのであります。
毎日
まいにち
彼
かれ
らは
同
おな
じように
働
はたら
きました。このうちに、
巣
す
の
中
なか
に
産
う
み
落
お
とされた
卵
たまご
は
孵化
ふか
して、一ぴきのはちとなり、めいめいは、いずこへとなく
飛
と
んでゆきました。また、わずかに
残
のこ
ったはちは
夏
なつ
の
終
お
わりまで、
同
おな
じところを
去
さ
らなかったのであります。
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