いました。まだ小さかった私は、そうしないと、テーブルにとどかなかったからです。
その時、パパは、「よし、なっちゃんのために、タバコをやめよう。勉強机を買うためにお金
をためよう。」と言いました。
「わぁ、私だけの机、いいなあ! 」私はとびはねました。うちのパパは、病気で片足を切断
し、ほかのパパみたいに働けませんでした。大きい買い物は、大変でした。
「タバコをやめよう。」と言ってから、パパはよくつまようじをかんでいました。
「パパ、つまようじって、あまいの?おいしいの? 」と私は聞いたら、
「パパは、タバコをすいたいけど、がまんしてるんだよ。なっちゃんのためにね」とママが
言いました。
小学生になる前の三月のことです。
ある日、パパは、「明日、勉強机を買いに行こう。パパからの入学プレゼントだ。」と言いま
した。
「やった! 」私は大喜びでした。一晩中ねむれませんでした。
次の日、パパはぎ足をはめて、ママと三人で出かけました。
家具屋さんで、たくさんの勉強机を見て、どれもピカピカでした。私は、照明がついてい
る、ブラウンのを選びました。机の上にジェルのマット。下にピンクのハートのじゅうたん。
調節できるブルーのイス。本棚もセット。
こんなすばらしい入学プレゼントなんて、すごくない?
でも買い物のあと、そんなにたたないうちに、パパは入院しました。
四月、私は一年生になりました。毎日、勉強机で宿題して、ドリルもしました。学校で百点
を取ったテストを、その机のひき出しに入れました。パパ、早く退院してほしいなあ、と日記
帳に書きました。退院したら、私の百点を全部パパに見せたいから。
でも、パパは黒いわくの中の写真になって帰ってきました。
今、私は五年生です。机の上に、パパの写真を置いています。毎日、パパは写真の中から、私
の勉強の姿を見て、ニコニコ笑っています。私は、百点のテストを見せる時、「いいなあ、なっ
ちゃん。よくがんばったねえ。」とパパがいつもほめてくれる気がします。私は、休けいの時、
学校の事や家の事を全部パパに言います。パパは、やさしいから、私の話を全部聞いてくれ
ます。
「パパ、勉強机を買ってくれてありがとう。パパ、大好き! 」