私の心の中には、小さなかいじゅうがいます。普段はおとなしくしているけれど、しから
れると、とつ然大きくなってあばれだします。そしてお母さんを困らせて、またよけいにし
かられます。
例えば、弟とけんかした時、お手伝いをさぼった時、ついだらだらしてしまった時に、しか
られます。私はそんなに怒らなくてもいいのに、と思い、つい口ごたえしたり、たまに、泣い
て大さわぎしてしまいます。悔しくて、悲しくて、もっと分かってほしいのに、と思います。
時に、足をドンドンとふみならして、お母さんなんて大きらい!とまで、思ってしまいます。
でも本当は、お母さんのことが大好きで、言うことも聞きたいです。しかられていっぱい反
こうした後は、さびしくて、胸が何かにギュッとしめつけられたような気持ちになります。
あんなこと言わなければよかった、と後悔します。
どうしてだろう。どうして自分の気持ちをおさえられないのかな。お母さんのことが大好
きなのに、どうして困らせてしまうのかな。私がなやんでいると、お母さんが言いました。
「あのね、花奈の中には小さなかいじゅうが住んでいるんだよ。納得がいかないことがある
と、すぐにあばれだすんだよ。でも、悪いかいじゅうではないよ。心が成長するのに必要なか
いじゅうなんだよ。誰の中にもいるし、実はね、お母さんもまだこっそり飼っているのよ。」
私はなるほど、と思いました。そして、もしかしたら、心の中で飼っているかいじゅうは、
体が大きくなるにつれて小さくなるのかな、と考えました。私はお母さんに言いました。
「でもさ、花奈のかいじゅうは、同じ年の友達よりも、少し大きめかもしれないね。」
それを聞いてお母さんは、大笑いしました。そして、
「花奈の中のかいじゅうも、好きだよ。」
と言ってくれました。私はほっとしました。たくさん反こうするのは、悪い子がすることだ
と心配になったけど、かいじゅうがいるのはおかしなことじゃないんだ、と分かったからで
す。
でも私は、できるだけかいじゅうにあばれてほしくないです。好きな本をじっくり読んだ
り、家族とたくさんおしゃべりしたり、愛犬と遊んだりすると、おとなしいままでいてくれる
ことに気づきました。
私のかいじゅうは時々やっかいだけれども、どうやら長い付き合いになりそうだから、
ずっと仲良くして行きたいです。
お母さんありがとう。私の小さなかいじゅうに気付いてくれて、好きだと言ってくれて、
本当にありがとう。