いって思っていたから、お父さんにきいたとき、うれしいなんて思えなかったです。ぼ
くは、お父さんもおかあさんも、大すきだから、赤ちゃんなんかにとられたくないって…
ぼくだけでいいのにって思いました。
おかあさんは、ずっとトイレではいてるのに、おなかをさわってうれしそうにしてる
し、ぼくの手をにぎって「お兄ちゃんが、いい子いい子してくれてるよ。うれしいね。」っ
て話しかけてても、なんだかやっぱりうれしいって思えませんでした。
ある日、おかあさんが「いっしょにびょういんへいこう。」と言ったので、ついていく
ことにしました。おなかにきかいをあてると、「トットットットットッ」と音がきこえて
きました。ぼくはビックリして、おかあさんの手をぎゅっとにぎりました。パソコンみ
たいなきかいに、小さな赤ちゃんがうつりました。先生が、手と足、かおと体をおしえて
くれて、「今日はよくうごいてるなぁ。お兄ちゃんがいるからよろこんでるのかな。」と
ぼくに言ったけど、ぼくは小さな赤ちゃんにむ中で、へんじができなかったです。
おかあさんのおなかが、すごく大きくなって、さわると赤ちゃんがパンチやキックを
してきます。ぼくは赤ちゃんを「こっちゃん」とよんでいました。
八月二日の朝、お父さんにおこされて、三人でびょういんへ行きました。おかあさん
はずっといたいってうなっていました。ぼくは、おかあさんがなかないか、すごく心ぱ
いでした。ちがうへやへ、おかあさんが行くとき、「こっちゃんにやっと会えるよ。まっ
ててね。」と言いました。しばらくまってると、赤ちゃんのなくこえがして、かんごしさ
んがこっちゃんをつれてきてくれました。まっ赤なかおでずっとないてるこっちゃん
は、テレビや絵本で見たことのある赤ちゃんより、ずっとへんなかおしていたけど、ぼく
はかわいいって思いました。
こっちゃんは、かいじゅうです。ぼくの大切なものもこわすし、らくがきもします。ぼ
くがあそんでいるものも、すぐとりにきます。かいじゅうは、すごくつよいからぼくは、
まけてしまいます。たまにやりかえすと、ぼくがおかあさんにおこられます。おかしい
と思うけど、これがお兄ちゃんのしごとなんだってぼくは知っています。お父さんもお
かあさんも、いつもぼくが一番すきって言うから、ぼくはお兄ちゃんがんばれます。
かいじゅうは、ぼくのことが一番すきっていつも言います。何回きいても、ぼくです。
ぼくはそれをきくと、すごくうれしくなって「ありがとう」ってこたえます。こっちゃ
んのお兄ちゃんにしてくれて、ありがとう。