番号を見ればわかります。ぼくのおじいさんからです。
「もしもし、けいすけか? 」「はい。」
「元気か? 」「はい。」「今ど、いつ来るの? 」
「まだ決まってないよ。」「えー?はよ来い。さみしいがゃー。」
前回行ったのは、ほんの一週間前です。
「もう会いたくなったのかなぁ。」と、ぼくは思います。ぼく
が住んでいるのは京都市で、おじいさんは名古屋市に住んで
いるのです。ぼくはあわててカレンダーを見ます。
「えっと、今週末は空手の試合があるから行けないし、来週
は漢検があるし、その次の週に行きます! 」「もっと早くこ
やー。」
「んーっと、じゃあ漢検終わってから行きます。」「ん。分
かった。楽しみに待ってるからね。」「はい! 」
ガチャン。こんな感じで、しょっちゅう電話がかかってくる
のです。
ぼくのおじいさんは七十五才になりますが、とても元気で
す。ご飯なんて山ほど食べます。白米が大好きで、食べるとき
にはかならず、
「このお米の一粒一粒はな、お百しょうさんたちが汗水流し
て作ってくれたんだぞ。のこすなよ。」と言います。ぼくは、お
茶わんにくっついたご飯を一粒残らずおはしでこすりとるの
にひっしになります。さい後にお茶をかけてし上げるとピカ
ピカになります。「えらいぞ。」おじいさんはほめてくれます。
そんなおじいさんのお茶わんも、ぼくのに負けないぐらいピ
カピカです。「洗うの楽だわ。」おばあさんは笑います。
おじいさんは、とても物知りです。歴史、政治、芸術のこと
など、何でもよく知っています。ぼくもおじいさんにしつ問し
たり、自分の知っていることを話したりします。歴史について
は、ぼくの方がよく知っていて上回ることもあります。そんな
時、おじいさんは、「おお。そうか。よく知ってるな。かしこい
な。」と、うれしそうにほめてくれます。
そんなおじいさんですが、とてもきびしい時があります。そ
れは、おまいりの時です。おじいさんは、お仏だんと神だなを
とても大切にします。ぼくたちまごにも、すごくきびしいで
す。
ぼくは、そんなおじいさんのことが大好きです。だから、実
はぼくの方こそすぐに会いたくなるのです。おじいさんから
の電話はぼくを元気にしてくれます。電話がないとさびしい
です。電話をちらりと横目で見たりします。そんな時は、ぼく
の方からかけるのです。おじいさんの声を聞くと、元気になり
ます。まるでま法のようです。
トゥルル、トゥルル。
また電話が鳴りました。京都に帰ってきてから三日目です。さ
い短記ろくこう新中です。