宿毛(すくも) (高知県宿毛市)
古代の人々が「すくも」と呼んでいたのは葦のこと
四国の西南端に位置する高知県宿毛市では、温暖な気候を活かしてオクラ、ブロッコリー、ミョウガ、小ネギなどの農業が盛んだ。
また、古くからの主要産業である漁業では、まき網や敷き網などのさまざまな漁法が湾内でみられる。養殖業も盛んで、ブリ、タイ、カンパチなどが水揚げされている。
現在の宿毛市は、一九五四(昭和二十九)年の町村合併の施行にともなって、宿毛、小こ筑づく紫し、平田、山奈、橋上、沖の島の六つの町村が合併して誕生した。
ところで、この宿毛市の「宿毛」という地名は、この地のかつての地形に由来している。
いまから三〇〇〇~四〇〇〇年前の宿毛の中心地は遠浅の海で、そのため満潮時には海水が押し寄せてくるほどの大湿原だった。そのため、一面に葦あしが生い茂っていたのだ。
古代の人々は、枯れた葦のことを「すくも」と呼んでいたらしく、このことは、当時の和歌などにも詠まれている。これが、地名の由来だというのだ。
宿毛の町はずれには、国の史跡に指定されている宿毛貝塚があって、縄文時代の頃からすでに文化が存在していたことがわかっている。葦の生い茂る時代にも、人々はこの地でたくましく生きていたのであろう。