道玄坂(どうげんざか) (東京都渋谷区)
人影まばらな坂を根城にする、山賊の首領?道玄 東京都渋谷区にある「道玄坂」は、多くの飲食店や専門店、映画館などがひしめく一大繁華街で、一年中、若者を中心とした多くの人々でにぎわっている。
この道玄坂は、江戸から大山へ向かう街道の坂の名前だ。その地名の由来については諸説あるが、なかでもユニークなのが、山賊の名をとったとする説だ。
鎌倉前期に活躍した武将に、和わ田だ義よし盛もりがいる。源頼朝の挙兵に参加して戦功をあげ、侍所別当などの重要な役割を担った人物である。
そして、この和田義盛一族の残党の子孫に、道玄という人物がいた。彼は、現在の道玄坂のあたりで山賊になったのだという。
江戸時代に書かれた『江戸名所図ず会え』には、「俚り諺げんに云う、大和田氏道玄は和田義盛が一族なり。建けん暦りやく三年五月和田一族滅亡す。其残党此所の窟中に隠れ住みて山賊を業となす。故に道玄坂というなり」とある。このことから、道玄坂という名は山賊?道玄にちなんだものとされているのである。
いまの姿からは想像もできないが、かつての道玄坂は山賊が出没するほどの草深い場所だったというわけだ。
ちなみに、その道玄が物見をしたといわれる松を「物見の松」とする言い伝えもあり、その所在地についても諸説あるようだ。
そのほか、道玄坂とは、かつてこのあたりに道玄庵という寺があったことから命名されたもので、道玄はその寺の僧侶だったとする説などもある。