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四、記録会(6)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:「最後はおまえ、まわりをだれも走ってない状態だったんだから、よかったじゃねえか」とニコチャンがからかう。「そうだけどさあ
(单词翻译:双击或拖选)

「最後はおまえ、まわりをだれも走ってない状態だったんだから、よかったじゃねえか」

  とニコチャンがからかう。

「そうだけどさあ」

  王子は口をとがらせた。「僕、追い抜かれざまに東体大のやつに、『どんくせえんだ

よ、どけ』って言われたんですよ?  あー、むかつく!  スポーツマンシップなんて幻

だ」

  どんくさいのは真実なんだから、しかたがないだろ。のんきなやりとりを、走はいつも

のようには楽しめなかった。六道大の藤岡のすごさを知ったあとでは、竹青荘の住人たち

の態度が、悠長すぎるように感じられてならない。

  このままでは、十人のメンバー全員が十七分以内のタイムを出すことも難しい。予選会

出場もままならないというのに、笑ってる場合か。

   の言った「かけっこ」という言葉が、走のなかをぐるぐるまわった。

  素人が十人ぽっきりで箱根駅伝を目指すなんて、やっぱり無理だったんだ。どうして俺

は高校時代に、怒りを自制できなかったんだろう。おとなしくしておいて、陸上が強い大

学の推薦をもらえばよかった。そうすれば、レベルの高い選手と一緒に練習できる、恵ま

れた環境にいられたはずだ。

  竹青荘の住人たちに合わせて夢物語を追っているうちに、自分がどんどん速度の世界か

ら取り残されてしまうのではないかと、走は怖くなった。

  はじめての記録会を終え、リラックスしてしゃべる竹青荘の面々をよそに、走は車内で

一人、黙りこくっていた。そんな走の様子を、運転席の清瀬がバックミラーでちゃんと見

ていたことにも気づかずに。

  一度崩れだした調子を、走はなかなか立て直すことができなかった。

  あせりで目が曇り、自分の状態をちゃんと見極められない。どれだけ練習に打ちこんで

も、まだたりない気がする。走っても走っても、スピードが上がっていく実感を得られな

かった。タイムは思うように縮まない。サプリメントで栄養もきちんと補っているし、こ

んなに走っているのになぜ、とまたあせる。それでも走ることをやめられなかった。もっ

と悪い状況に陥ってしまいそうで、怖くて止まれなかった。

  走は本練習のあとも、空がすっかり暗くなるまで走った。泳ぎやめたら窒息してしまう

魚のように。羽ばたかなかったら海に落ちてしまう渡り鳥のように。

  なにかに取り憑かれたみたいに、走はハードな走りこみをつづけた。最初は感嘆ととも

に眺めていた住人たちも、そのうち走の練習ぶりに、尋常ならざるものを感じだしたのだ

ろう。

「走、もう上がろう」

  と声をかけてくるようになった。

「今日の夕飯は、トンカツだってさ。揚げたてを食わせてやるって、ハイジさんは先に

戻ったよ。俺たちも帰ろう」

「もう少ししたら行く」

  心配するジョージに言葉少なに答え、夕闇迫る原っぱの奥へ去っていく走は、まるで目

ばかり光らせて走る幽鬼だ。

  そんな走に対して、清瀬は特になにも言ってこなかった。たまに、「走、走りすぎだ

ぞ。気をつけろ」と注意はするが、あとは静観の構えだ。走にとってはそれも気に入らな

い。練習を控えろと言うなんて、ハイジさんは真剣さがたりないんじゃないか、と思えた

し、ではなぜ走ってはいけないのか、走らずになにをすれば速くなるのかを、具体的に教

えてくれないことも不満だった。

  走自身はがむしゃらに練習しているつもりなのに、皮肉なことにタイムは縮むどころ

か、じりじりと後退していった。関東インカレでも、故障中の清瀬と同じぐらいしか走れ

なかった。飛び抜けて悪いわけではないが、インカレに出場する選手としては、凡庸と言

わざるをえないタイムだった。

  すでに雨の季節に入っていた。

  ある晩、ジョッグから戻った走は、台所にいた清瀬に呼び止められた。清瀬は食卓に向

かい、練習計画を練っていたらしい。ほかの住人たちは、みんなもう自分の部屋に引きあ

げているようで、竹青荘のなかは静かだ。走は雨に濡れた頭をタオルで拭きながら、おと

なしく清瀬の向かいの椅子に座った。

「全日本インカレへの出場は、見合わせよう。きみも俺も」

  と清瀬は言った。驚いた走はもちろん、猛然と反発した。

「どうしてですか。俺は走りたい」

「不調なのは自分でもわかってるだろう。ハードトレーニングのせいで、少し貧血気味な

んじゃないか。そういうときは無理をしないほうがいい」

「俺はハイジさんとちがって、故障してるわけじゃない。走っていれば、すぐに調子も戻

ります」

「そうかな」

  と清瀬は、練習日誌に目を落としたまま首をかしげた。「いまの状態でいくら走って

も、無駄だと俺は思う。きみは、自分自身をちゃんと見ていない。ほかの選手と比べてど

うだとか、そんなことばかり考えているだろう。そういうときにインカレに出たって、逆

効果だ」

「話にならない」

  走は食卓に拳を叩きつけた。「十七分の壁だって、まだ越えてないひとがいるような状

況なんですよ?  箱根の予選会に出られるかどうかもたしかじゃないのに、俺にインカレ

に出るなだって?  じゃあ俺は、どこで記録を残せばいいんです。あんたたちにつきあっ

て、この一年を無駄にさせるつもりか」

「きみは記録のためだけに走るのか」

  清瀬も、手にしていた紙を荒っぽく食卓に放りなげた。走を正面から見据えてくる目

に、わずかな苛立ちと怒りが宿っていた。

「それじゃあ、選手を管理してひたすらスピードを追求させる指導者とおんなじだ。かつ

て、きみが嫌って反抗したやつらと同じ考えだ!」

「ちがう!」

  走は叫んだ。高校時代の監督と、ひとくくりになどされたくなかった。だが、どこがど

うちがうのか、確信を持って清瀬に説明することもできなかった。走はたしかに、いつま

でたっても遅いタイムでしか走れない竹青荘の面々を厄介に感じていたし、「なんて駄目

なやつらだ」と馬鹿にする気持ちもあった。

  走は必死に言葉を探し、清瀬に訴えた。

「なあなあで走ってたって、速くなんてなれっこない。大学の陸上部で走って、箱根駅伝

を目指すってことは、趣味で走るっていうレベルじゃないでしょう。俺たちがやってるの

は、競技でしょう!」

「もちろんだ。なあなあで走ってるものなど、アオタケにはいない。俺は趣味や思いつき

で箱根を目指してるつもりはない」

  清瀬はもういつもどおり、冷静に答えた。「走、なにをあせってる」

「あせってなんか……」

「どうしたの?」

  台所の入り口から、王子がひょこりと顔を出した。緊迫した気配を漂わせる二人を見比

べ、

「喧嘩?」

  と尋ねる。

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