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十、流星(16)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:「一年間、きみの走る姿を見て、きみと過ごしたいまは」清瀬の声は澄んで深い湖のように、走の心のなかで静かに潤う。「きみに対
(单词翻译:双击或拖选)

「一年間、きみの走る姿を見て、きみと過ごしたいまは……」

  清瀬の声は澄んで深い湖のように、走の心のなかで静かに潤う。「きみに対する思い

を、『信じる』なんて言葉では言い表せない。信じる、信じないじゃない。ただ、きみな

んだ。走、俺にとっての最高のランナーは、きみしかいない」

  ああ。走の胸は歓喜に満ちた。このひとは俺に、かけがえのないものをくれた。きらき

らと永遠に輝く、とても大切なものをいま、俺にくれたんだ。

「ハイジさん……」

  ありがとうございました。あの春の夜、俺を追ってきてくれて。俺を真実の意味での走

りへ導き、俺を信頼し、まるごとひっくるめた俺自身を認めてくれて。

  走はそう言おうとして、できなかった。心にあふれたこの思いは、言葉で伝えきれるも

のではない。

  しばし落ちた沈黙から、清瀬は走の内心を鋭敏に察したらしい。

「礼を言うにはまだ早いぞ」

「すぐに行きます。待っててください」

「転ぶなよ」

  と清瀬は言った。楽しそうだ。

  午前十一時二十分。走は通話を終えた携帯電話をジョージに預け、ジャージを脱いだ。

寛政大のユニフォーム姿になって、軽くストレッチをする。霧雨が、降るとも漂うともつ

かず、周囲を煙らせはじめた。ユニフォームの銀色のラインが、濡れて光る。そのあいだ

にも、八区の選手が続々と戸塚中継所に到着し、襷を受け取った九区の選手が走りだして

いく。

  午前十一時二十三分。係員の呼びだしに応じ、走は中継ラインに近づいた。荷物を抱

え、ジョージが緊張の面もちでついてきた。

「ジョージ、俺も勝田さんが好きだ」

  とうとう葉菜子への気持ちを口にしたが、それで世界が変わるわけでもない。「でも、

ジョージが勝田さんとうまくいくといい、と思ってるのも、本当なんだよ」

  走の突然の宣言に驚いたらしく、ジョージは目をまんまるにしていたが、すぐに笑顔に

なった。

「大手町で抜け駆けしないでよ、走」

「しないよ」

  と走も笑った。手を振るジョージにひとつうなずき、走は中継ラインへ出ようとした。

東体大の がちょうど八区を走り終え、襷を渡して脇によけてきたところだった。走と

はすれちがった。

「無駄だよ、蔵原。寛政大はもう終わりだ」

   は走の耳もとで囁く。八区で寛政大を含めて四校を抜き、チームを十位に押しあげた

自信がそう言わせたのだろう。 のタイムは一時間〇六分三十八秒で、区間五位だった。

  走はちらりと藤沢の方向を確認した。甲府学院大、あけぼの大が中継所に走りこんでく

る。その後方で、キングが走っていた。帝東大に追撃され、中継所を目前にして抜かれて

しまったところだ。それでもキングは遅れを取るまいと、中継所に向かって、走に向かっ

て、懸命に走っていた。

「終わるわけがない」

   の目を見て、走ははっきりと言った。 。おまえは身勝手にすべてを終わらせた俺

を、試合のこともチームメイトのことも考えなかった高校時代の俺を、許せないんだろ

う。いまさら謝ったって意味がないし、俺も謝りたくない。本当にまちがっていたとは、

どうしても思えないから。

  だけど、あのときとはちがう方法を見つけたんだ。俺の心を、意志を表すための、暴力

ではない方法を。

  見ていてほしい、と走は言いたかった。 に対して、そんな都合のいい頼みを言えるわ

けがないと、わかってもいた。だから決意をこめて告げるだけで、ゆっくりと から離れ

る。

「俺はもう、絶対に終わらせたりしない」

  中継ラインに立った。帝東大が、すぐ横で襷リレーする。

「キングさん」

  走は右手を高くあげた。霧のなかに灯火を掲げるように。襷を持った手を、キングがの

ばす。

「すまねえ、走」

  荒い息に混じって、キングは囁いた。走の右手に、襷を強く握らせる。汗と雨で湿った

キングの拳に、走は一瞬、そっと左手をのせた。謝る必要なんてありませんよ、キングさ

ん。

  キングは八区、二十一・三キロを走り抜いた。東体大の に遅れること、ちょうど一分。

タイムは一時間〇七分四十二秒で、区間十位だった。

  寛政大は現在、十四番目。実質的な順位は十六位。シード権獲得圏内にいる十位の東体

大とは、総合タイムで二分五十三秒の差がある。この差をゼロにし、さらに一秒でも速い

タイムを出さなければならない。

  午前十一時二十四分二十九秒。希望の襷を託された走が、戸塚中継所から走り去って

いった。

  沿道で応援する人々も、中継映像をテレビで眺める人々も、実況するアナウンサーと解

説者の谷中も、九区の首位争いに目を奪われていた。

  トップを走る房総大と、それを五十八秒差で追う六道大。このまま逃げきりたい房総大

と、首位を奪還して王者の実力を示したい六道大。「復路のエース区間」「裏の二区」と

言われる九区に、両校とも主将をエントリーした。こうなるともう、意地と意地とのぶつ

かりあいだ。

  房総大の主将、四年の沢地は、首位に立っているからといって、気のゆるみなど微み塵

じんも見せない。最初の一キロを二分四十六秒というハイペースで入った。六道大の藤岡

からは、前方を走る沢地の姿をまだ見ることができない。藤岡は感情をうかがわせぬ表情

で、黙々と脚を運ぶ。こちらも、最初の一キロを二分四十八秒。どちらが先に体力を使い

果たし、ペースを落とすのか。それとも、両者ともハイペースのままレースが展開するの

か。キャプテン対決に注目が集まった。

「お互いの姿は見えていないのに、両者は示しあわせたように強気のペースで、最初の一

キロを通過しています」

  アナウンサーは興奮の色を隠せない。「これはすごい戦いになりそうですね、谷中さ

ん」

「沢地くんも藤岡くんも、キャプテンの名に恥じぬ走りを見せています。ただ、映像を見

るかぎりでは、藤岡くんのほうに余裕があるようですね。あるいは横浜駅あたりで、順位

に変動があるかもしれません」

  そこへ、中継カメラを積んだ二号車からの映像が入った。

「おっと、これは?  四位の西京大ですが、その後方に、喜久井、真中、北関東大が迫っ

ていますね」

「はい、四校が四位集団を形成しようとしています!」

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