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十、流星(19)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:走りは、走を一人にするばかりではない。走りによって、だれかとつながることもできる。走るという行為は、一人でさびしく取り組
(单词翻译:双击或拖选)

  走りは、走を一人にするばかりではない。走りによって、だれかとつながることもでき

る。走るという行為は、一人でさびしく取り組むものだからこそ、本当の意味でだれかと

つながり、結びつくだけの力を秘めている。

  清瀬に会うまで、走は自分の持つ力に気づけていなかった。長距離とはどういう競技な

のか、よくわからないまま走っていた。

  走りとは力だ。スピードではなく、一人のままでだれかとつながれる強さだ。

  ハイジさんが、それを俺に教えた。言葉をつくし、身をもって、竹青荘の住人たちに示

した。好みも生きてきた環境もスピードもちがうもの同士が、走るというさびしい行為を

通して、一瞬だけ触れあい、つながる喜び。

  ハイジさんは、信じるという言葉ではたりないと言った。俺もそう思う。どんな言葉も

嘘になりそうなほど、ただ自然に湧きあがる全幅の信頼が胸のうちにある。自分以外のだ

れかを恃たのむ尊さを、俺ははじめて知った。

  走ることも、それに似ている。理由や動機は必要ない。ただ呼吸するのにも似た、俺が

生きるために必要な行為だ。

  走りはもう、走を傷つけない。走を排除したり、孤立させたりしない。走がすべてをか

けて求めたものは、走を裏切らなかった。走るという行為は、走の思いに応えて強さを返

した。呼べば振り向き、近づいてきてくれる大切な友人のように、走りは走のかたわらに

寄り添う。征服し、ねじ伏せるべき敵としてではなく、いつまでもともにあり、走を支え

る力となって。

「見て、ハイジさん」

  王子の携帯電話の画面には、横浜駅手前の様子が映しだされていた。六道大の藤岡が、

房総大の沢地にとうとう追いつき、並ぶ間もなく抜き去っていく。アナウンサーが叫んで

いる。

「藤岡くんが抜いた!  王者・六道大が、九区でついに首位に立ちました!」

  十五キロ近くを走ったというのに、藤岡は一キロ三分ペースを維持している。沢地をか

わして首位に立ち、そのペースは衰えるどころか、ますます上がっていくようだ。

  藤岡は九区の残りを独走して、鶴見中継所に来ることになるだろう。区間エントリーが

発表になった日から、六道大はずっと、この展開を予測していたはずだ。

  房総大が主力選手を持ってくるのは、往路か復路か。六道大は、区間エントリーで藤岡

を補欠にまわし、房総大の出方をじっくりと見きわめていた。そして、房総大が往路に勝

負をかける布陣だと見て取るや、当日のエントリー変更で藤岡を九区に入れた。往路は房

総大についていくことを第一とし、復路で巻き返して勝つ戦法を選んだのだ。

  選手層の厚い六道大だからこそ、実行できた作戦だった。巻き返しの要かなめとなっ

た、主将の藤岡にかかるプレッシャーは、どれほどのものだっただろう。だが藤岡は、見

事なまでに責務を果たそうとしている。王者とはどうあるべきかを、走りで示している。

「沢地はついていけないな」

  清瀬は察した。藤岡が内心に期すものは、六道大の勝利だけではない、と。

「藤岡は区間新記録を狙っている」

「え!?」

  王子は思わず、画面を確認した。九区の区間記録は、五年前にやはり六道大の選手が出

した、一時間〇九分〇二秒だ。画面の片隅に、そのときのラップと、藤岡のいまのタイム

が並んで表示されている。たしかに藤岡は、区間記録とほぼ互角のペースを維持してい

た。

  藤岡は淡々と走っているように見える。その藤岡の内部に、激しい闘争心があるとは。

王子は驚いた。外見からは、とてもうかがうことができない。優勝だけでは飽きたらず、

個人タイトルをも手中に収めようとする。なんという意欲。すがすがしいまでに徹底し

た、走りへの貪欲さだろう。

「藤岡に対抗できる選手は、走しかいない。後半、走にスパートをかけさせるためにも、

情報が必要だ。王子、藤岡のタイムに注意してくれ」

  清瀬はベンチコートを脱いで、王子に渡した。「俺はウォーミングアップしてくる」

  走は横浜駅まで四キロと迫った。道は片側二車線になった。それにつれて、沿道の人垣

も何重にもなり、車道に押しだされる見物客もいるほどだった。

「危ないですから、下がって!  選手に旗を向けないでください!」

  警備にあたる係員や警察官が、膨れあがる人垣を必死に抑え、悲鳴に近い声で注意す

る。走る走にとっては、一瞬で過ぎゆく光景だが、何キロ走っても沿道で同じような攻防

が繰り広げられているので、さすがにおかしくなってきた。

  俺にしてみれば、箱根駅伝は真剣勝負で挑むレースだけど、それを見るひとたちにとっ

ては、新年のお祭りなんだ。

  いろんなひとがいるなあ、と走は笑いを み殺す。選手に、心からの声援を送ってくれ

るひと。「蔵原!」と個人名をあげて声をかけてくるひともいた。見も知らぬひとなの

に、出走する選手のことをちゃんと調べて、力づけてくれる。

  反対に、こっちは懸命に走っているというのに、テレビカメラに映りこむことに夢中な

見物客もいる。

  車道に出てきた男が持つ旗に、走はあやうく顔面から突っ込むところだった。選手は自

転車よりも速いスピードで走っているから、衝突したらどちらも怪我をしてしまう。走は

軽く手をあげて、走路を邪魔する小旗を払った。失礼にならぬよう、そっと払ったつもり

だったが、薄い紙で手の甲が切れ、肌に一本の細い線が刻まれた。

  赤くにじみだした血を、走はなめる。痛みはなかったし、腹も立たなかった。寒さで手

がかじかんでいることと、「そういえば、手袋をするのを忘れていたな」ということを、

改めて思い出しただけだった。

  お祭りなんだから、楽しんでくれればいいや、と走は思う。俺がどんな気持ちで走って

いるか、いま、この走りにどれだけの体力と気力を注いでいるか、理解してもらいたいと

は思わない。走る苦しさと高揚は、走るものにしかわからない。でも、この場所の楽しさ

をわけあうことはできる。大手町までつらなる熱と歓声を、一緒に感じ、味わうことはで

きる。

  一人だけど、一人ではない。流れる川のように道はつづく。

  十三キロ地点で、ついに前方を走る西京大と喜久井大の姿をとらえた。追いつける。追

い越す。絶対に。走はあせることなく、少しずつ距離を詰めていった。

  十三・七キロ地点にある、戸部警察署前を通過。沿道の人並みは途切れず、ますます数を

増していく。十四キロ地点で高島町の交差点を渡り、ガード下をくぐると、道はいよいよ

片側四車線になった。高速道路の巨大な高架が、複雑に絡みあって頭上を覆う。

  横浜駅前には、大観衆がつめかけていた。歩道は見物客で埋めつくされ、植え込みのわ

ずかな段差のうえにも、ビルのスロープにも、びっしりとひとが立っている。人々の歓声

が高架に跳ね返り、怒号にも似た地響きとなって、広い車道を揺るがすほどだ。

  こんなにたくさんのひとが、走る人間を応援しているなんて。群衆と、群衆が発する声

に、走はさすがにびっくりして沿道を見た。蠢うごめく小旗は嵐の夜の森みたいに、低い

うなりを湧き起こす。

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