人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の香(か)ににほひける
紀貫之
【歌意】 いくら親しくしていたとはいえ人の心は変りやすい?だからあなたのお心は、昔のままかどうか分かりませんが?昔馴染みのこの里では、梅の花だけは変らない香りで咲き匂っていますよ。
【作者】 (きのつらゆき) 866?~945年 『古今集』撰集に主導的役割を果たし、「仮名序」をも執筆。『土佐日記』の作者でもある。官吏としての履歴には恵まれなかったが、文学的業績は偉大。
【説明】 かつて長谷寺参詣の常宿にしていた家を久しぶりに訪ねた折、その家の主人が疎遠の恨み言を言ったので、この歌で応じたとある。「そういうあなたの心も、変わっているかいないか分かりません」と皮肉で応酬している。