日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 正文

怪談人恋坂12

时间: 2018-07-30    进入日语论坛
核心提示:8 人恋坂の場  夜。  ゆるく壁を巻くように続く人恋坂を、青白く街灯が照らし出している。  制服姿の少女が、右手に鞄《
(单词翻译:双击或拖选)
 8 人恋坂の場
 
 
  夜。
 
  ゆるく壁を巻くように続く人恋坂を、青白く街灯が照らし出している。
 
  制服姿の少女が、右手に鞄《かばん》を持ち、左手で、笹倉医師の手を引いて、坂を上って来る。
 
 
笹 倉「(少し息を弾ませているが、まだ余裕がある)そうか。君もあの家に招《よ》ばれてるのか」
 
少 女「ええ。大丈夫ですか? 少し休む?」
 
笹 倉「いや……。もう大分来たさ、そうだろう? たぶん、半分以上は上って来てるね。実際、ここを上るのはずいぶん久しぶりだ。(足を止めて)何だかいやに長く感じる」
 
少 女「無理をしないで、一息いれましょう」
 
笹 倉「却《かえ》ってくたびれてしまいそうだ。いくら長くても、山登りじゃないんだし、上ろう」
 
少 女「そう? きつかったら、いつでも言ってね」
 
笹 倉「ああ、君はやさしい子だね」
 
 
 
  少女と笹倉、しばらく坂を上って行く。笹倉、段々息づかいが荒くなって、左手をポケットへ突っ込み、探る。少女が気付いて振り向く。
 
 
 
少 女「どうかした?」
 
笹 倉「ああ……。ハンカチをな、ちょっと汗を拭こうと思ったんだが、どうやら忘れて来たらしい。(照れ隠しに笑って)なあ、少し蒸し暑い夜じゃないか」
 
少 女「(足を止めて)まあ、ひどい汗! 私のハンカチを使って」
 
笹 倉「(ハンカチを受け取り)ありがとう……。いや、実際、こんなに暑いとはね……」
 
 
 
  笹倉、ふっとよろけて、壁にもたれかかる。少女がびっくりした様子で、駆け寄る。
 
 
 
少 女「大丈夫? 休みましょう。——悪かったわ。無理だったのね、この坂が」
 
笹 倉「いやいや……。(しゃがみ込み)それにしても……こんなに長かったかな? もう倍も——三倍も上って来たような気がする」
 
少 女「そんな気がするんだわ、きっと。下りならねえ、良かったのに。転り落ちれば、アッという間だわ」
 
笹 倉「(ちょっと、少女から目をそらす)この坂は……どうも好かん。なあ、途中からは、坂の下も、上も見えん。今までどれくらい来て、あとどれだけあるのか分らんってのは、いやなものだよ」
 
少 女「人生のようね」
 
 
 
  少女、壁にもたれて、ちょっと空を見上げる。
 
 
 
笹 倉「(喘《あえ》ぎながら笑って)人生のようか。全くだ! 君は面白いことを言うね。しかし、私は、あとにそう残っとらん。君はまだまだ上る分の方がずっと長い」
 
少 女「そうとも限らないでしょう。若くたって、早く死ぬ子もいるわ」
 
笹 倉「そりゃそうだが……。可愛いハンカチだ。いい匂《にお》いがするね。(ハンカチを顔の近くへ持って行く)——ワッ!」
 
 
 
  笹倉、突然声を上げて、ハンカチを投げ出す。
 
 
 
少 女「どうしたの?」
 
笹 倉「(うろたえて)すまん……。いや、今急に……何だかハンカチに……血がついているように見えたんだ」
 
少 女「あら! どこか、けがでも? (ハンカチを拾って)——血なんかついてないわ」
 
笹 倉「そうか。——いや、すまん! 君のハンカチを……」
 
少 女「いいえ、構わないわ。早く行って休んだ方がいいかもしれないわね。手を引いてあげるわ。行きましょう!」
 
 
 
  少女が手を差し出すと、笹倉は催眠術にでもかかったように、その手を取り、フラリと立ち上る。
 
  二人、再び坂を上り始める。
 
  しかし、少し上ると笹倉は足がもつれ、苦しげに喘いで、座り込んでしまう。
 
 
 
笹 倉「(苦しげに息をして)もう上れん! どうしたんだ? こんなに遠いなんて。それに、真夏のように暑いぞ!(シャツの胸もとを開ける)君、すまんが、一人で上って行って、あの家の者を誰か呼んで来てくれんか……」
 
少 女「(振り向いて)もう大丈夫。着いたのよ」
 
笹 倉「何だって? ——しかし、まだ見えんじゃないか。まだ着いとらんよ」
 
少 女「いいえ、着いたのよ。ここで、あなたの坂は終ったの」
 
笹 倉「私の坂……。何の話だ?(苛《いら》立《だ》たしげに)ふざけてる場合か。早く呼んで来るんだ!」
 
少 女「暑そうね。でも、あの日に比べれば……。アッという間に血も乾いたあの暑さに比べれば、楽なものでしょ」
 
笹 倉「(少女を見上げて)何を言ってるんだ? 冗談はやめてくれ。呼んで来ないと言うんだな? それなら……。上って行ってやる!」
 
 
 
  笹倉、這《は》うように坂を上りかけるが、ほんの数メートル進んだところで、突っ伏してしまう。
 
 
 
笹 倉「(息も絶え絶えに)頼む……。助けを……」
 
 
 
  笹倉、ふと自分の手を見て、目をみはる。ガバッと起き上って、
 
 
 
笹 倉「(自分の手を見て)何だ、これは! 血が……血がべっとりついて! ——ここは……。そうか、あのとき棺が落ちた所か!」
 
 
 
  制服の少女、白《しろ》装《しよう》束《ぞく》の裕美子に変る。笹倉、それを見て悲鳴を上げ、坂を這い上ろうとする。
 
 
 
笹 倉「近寄るな! お前だったのか! こっちへ来るな!」
 
裕美子「助けを呼ぶといいわ。私も呼んだ。喉《のど》を切られて、血が流れ出ていくのを感じながら、声を出そうとしたわ。一瞬の間に死ねれば良かった。じわじわと血が失われて、次第に意識が薄れていく、今、死んで行くと自分で意識している、あの恐ろしさ……。あなたも、その何十分の一でも味わってみなさい」
 
笹 倉「裕美子……。私が何をしたというんだ! 私は——私は——。(胸をかきむしる)苦しい……」
 
裕美子「私が病気で死んだと偽の証明を出したわ。お金と引き換えに、私が殺されたことを隠したわ」
 
笹 倉「それは……悪かった。しかし……金が必要だったんだ! 許してくれ! もう……目がかすんで、見えん……」
 
裕美子「苦しそうね。——楽にして上げましょう」
 
 
 
  裕美子、落ちていたハンカチを拾い上げると、笹倉の傍に膝《ひざ》をつく。
 
 
 
裕美子「(ハンカチを笹倉の目の前へ出して)これが見える?」
 
笹 倉「よく……分らん。何か……白っぽいもんだ……」
 
裕美子「光ってるのよ。よく切れるでしょ、きっと。あなたは長く苦しまなくてすむわ」
 
笹 倉「(目をむいて)助けてくれ! 殺さんでくれ! 後生だ! 私は……言われた通りにしただけだ……(泣く)」
 
裕美子「一つ教えて。——私を殺したのは誰?」
 
笹 倉「(激しく咳《せき》込《こ》む)苦しい……。お願いだ……。救急車を……」
 
裕美子「言えば呼んであげる。私の喉を切ったのは誰?」
 
 
 
  笹倉、何か言いかけて喘《あえ》ぐ。裕美子、笹倉の口もとに耳を寄せる。
 
 
 
裕美子「何と言ったの? ——もっとはっきり! ……」
 
 
 
笹 倉「私は知らん! 本当に知らんのだ……」
 
 
 
  裕美子、ゆっくりと体を起す。そして、手にしたハンカチを笹倉の喉へ触れさせると、サッと払う。
 
 
 
笹 倉「(息をのみ、手を喉へ持って行く)ああ……。血が! 血が出てる! お願いだ!血を止めてくれ! ——頼む。死んでしまう……。血がどんどん流れ出て……ああ、もう目の前が真暗だ! 許してくれ……。血を……」
 
 
 
  笹倉、徐々に体の力が脱けて、その場に倒れ、動かなくなる。
 
  裕美子、ハンカチを笹倉の上に投げる。そして、坂の上の方をハッと見上げる。
 
 
 
裕美子「あなたは!」
 
 
 
  裕美子、誰もいない坂の上をじっと見つめて立っている。
 
  坂に、雨が降り始める。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%