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第八章 抜け穴の冒険 二(1)

时间: 2023-12-26    进入日语论坛
核心提示:二 四人のものがいっせいに、手にした懐中電灯を前方にさしむけた。しかし、そこに何者かの姿を発見しようとしたのなら、それは
(单词翻译:双击或拖选)

 四人のものがいっせいに、手にした懐中電灯を前方にさしむけた。しかし、そこに何者

かの姿を発見しようとしたのなら、それはかれらの妄もう想そうというべきだったろう。

四つの懐中電灯の光芒は、二、三間さきの白っぽく風化して、粗いセメントの修理をほど

こされた、古い煉瓦の壁を照らし出したに過ぎなかった。トンネルはそこでくの字型に屈

曲しているらしい。

「だれかいるんですね。このトンネルのなかに……」

 わかい小山刑事が声をふるわせたのもむりはない。だれか自分たち以外の人間が、この

トンネルのなかに潜んでいるという連想ほど、このさい無気味なものはなかった。しか

も、そいつは自分たちに挑戦してきているのだ。さっきの笑い声の物もの真ま似ねは、お

のれの存在を誇示しようとしているとしか思えない。

「だれだ! そこにいるのは!」

 とつぜん井川刑事が、割れ鐘のような蛮声を張りあげた。とたんに煉瓦が四、五枚くず

れ落ちてきたことはいうまでもないが、だれもそれをとがめようとするものはいなかっ

た。しばらくあいだをおいて、

「だれだ! そこにいるのは!」

「だれだ! そこにいるのは!」

「だれだ! そこにいるのは!」

 あちこちの壁に反響しながら、谺は陰々として闇のなかに消えていったが、最後の谺が

消えるとまもなく、

「だれだ! そこにいるのは!」

 井川老刑事に負けず劣らず、むこうのほうから割れ鐘のような蛮声がきこえてきた。

 声の質からあいての正体をわりだすのは困難だった。男であることはたしかであるが、

ただそれだけしかわからない。年齢や人柄を判断することはむつかしかった。声ははじめ

から澱んで圧迫された空気のなかで、陰にこもっているのである。

「だれだ! そこにいるのは!」

「だれだ! そこにいるのは!」

「だれだ! そこにいるのは!」

 例によって適当のまをおいて、きこえてくる谺の消えるのを、井川刑事は待っていな

かった。

「畜生!」

 だが、性急な追跡はしょせんむりであることがすぐわかった。井川老刑事が五、六歩駆

けだしたとたん、左右の壁から煉瓦が五、六枚、物凄い音をたてて落下してきた。さすが

温厚な田原警部補も、思わず声をはげまして、

「おい、おやじさん、君はわれわれを生き埋めにするつもりかい」

「だからといって、主任さん」

「いいですよ、いいですよ。井川さん、ここはそろりそろりといこうじゃありませんか」

「金田一先生、それはどういう意味です」

「いえね、井川さん、テキさんはみずから自分の存在を誇示してきてるんです。それにど

ういう意味があるのか、つぎの出かたを見るんですね」

「じゃ、どうすればいいんです」

「この抜け穴をこのままゆっくり、進んでいくよりしかたがなさそうですね」

「そうするとあいてがなにか、仕掛けてくるというんですかい」

「それはわかりません。しかし、いま主任さんのおっしゃったとおり、おたがいに生き埋

めになるのはいやですからね。ときに、われわれはいままでにどのくらい歩いたかな」

「せいぜい十五、六間じゃないですか」

 小山刑事が心細そうな声を出した。

 金田一耕助は懐中電灯で腕時計を照らしてみて、

「いま十一時三十二分ですね。ぼくが最後に抜け穴へもぐりこむとき見たら、十一時二十

二分でしたよ。するとあれから十分たっていますが、じっさいに歩いたのはその半分くら

いのものでしょう」

「それがどうしたというんです」

「いや、この抜け穴を通りぬけるには、二十分くらいかかるらしい。こんな暗闇のトンネ

ルですから、昼でも夜でもおなじことでしょう。そうするとここを抜けだすには、あと十

五分かかるということです。そろりそろりと急ごうじゃありませんか」

「先生、だけどさっきの声の男、われわれに危害をくわえるつもりじゃ……」

 小山刑事は武者ぶるいするような声である。

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