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人面瘡 六(1)_人面瘡(人面疮)_横沟正史_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:六 その午後、岡山市から出張してきたT博士執刀のもとに、由紀子の解剖が行われたが、かくべつ検けん屍しの結果をくつがえすよ
(单词翻译:双击或拖选)

 その午後、岡山市から出張してきたT博士執刀のもとに、由紀子の解剖が行われたが、

かくべつ検けん屍しの結果をくつがえすような材料も発見されなかった。

 由紀子の死因はたしかに溺でき死しで、その時刻も昨夜の九時前後と断定された。

 しかし、溺死と断定されたといっても、そこから一足飛びに、自殺か他殺か、それとも

過失死か、そこまでは決定するわけにはいかなかった。

 不思議なことには、きのう着ていた由紀子の着物は、家の内からも外からも発見され

ず、それが一いち抹まつの疑惑として取りのこされた。しかし、繊維品が貴重品扱いされ

る当節のこととて、だれかが由紀子の脱ぎすてた衣類を、こっそり持ち去ったのかもしれ

なかった。こういう山の奥のひなびた山村でも、油断もすきもない時代なのである。

 解剖の結果をきいて金田一耕助と磯川警部が一服しているところへ、貞二君がしずんだ

顔をしてやってきた。

「先生」

 貞二君のようすはゆうべからみると、だいぶんおだやかになっている。

 いちじの昂奮がおさまったのと、ゆうべ危いところを救われたことにたいする感謝のお

もいが、貞二君の態度からいくぶんなりとも、とげとげしさを拭い去ったのであろう。

「貞二君、なにか用……?」

 磯川警部は物問いたげな視線をむけると、貞二君はしょんぼりと頭を垂れて、

「はあ、松代が金田一先生と磯川警部さんに、なにかお話し申上げたいことがあるという

のです。ぜひ聞いていただきたいことがあるから、ご迷惑でもむこうの部屋へきていただ

けないかといっているんですが……」

 金田一耕助と磯川警部はふっと顔を見合わせたが、金田一耕助はすぐ気軽に立ちあがっ

て、

「ああ、そう、警部さん、それじゃお伺いしようじゃありませんか」

 昨夜の部屋へ入っていくと、寝床のうえに起きなおった松代が、蒼あおい顔をしてふた

りを迎えた。その顔はいくらか硬こわ張ばっていたが、なにもかも諦あきらめつくしたよ

うな平静さがそこにあった。

 そのそばの積み重ねた夜具にはお柳さまがよりかかっていて、気づかわしそうに松代の

横顔を見まもっていた。

 松代は磯川警部の顔をみると、ひくい声で昨夜の応急処置の礼をいった。

「いや、いや」

 と、磯川警部は厚いてのひらを気軽にふって、

「それはわしのせいじゃない。あんたの運が強かったんじゃな。しかし、そんなことより

も、なにか話があるということだが、体のほうは大丈夫かな。あんまり無理をせんほうが

いいよ」

「はあ、有難うございます。でも、どうしてもみなさんに聞いていただきたい話がござい

ますもんですから……」

「ああ、そう、じゃ、ぼつぼつでいいから聞かせてもらおうか」

「はあ……」

 松代は強い決意のこもった眼で、金田一耕助と磯川警部を見くらべながら、

「さきほど貞二さまからおうかがいしたんでございますけれど、由紀ちゃんの死んだのは

昨夜の九時ごろのことだということでございますけれど……」

「ああ、そういうことになっている」

「しかし、それ、なにかの間違いじゃございませんでしょうか」

「間違いというと……?」

「いいえ、由紀ちゃんの死んだのはゆうべの九時ごろじゃなく、ほんとうは、けさの一時

ごろではないかと思うんですけれど……」

 磯川警部は金田一耕助と顔見合せたが、やがておだやかに体を乗りだすと、

「松代君、科学というものをもう少し信用してもらわなければ困るね。けさの検屍の結果

も、さきほどの解剖の結果も一致しているんだよ。由紀ちゃんの死んだのは昨夜の八時半

から九時半までのあいだにちがいなし」

「はあ……」

 と、松代はたゆとうような眼をあげて、磯川警部と金田一耕助の顔を見くらべている。

その眼にはかえって不安の色が濃かった。

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