池のまはりには、一面に
蛙はその池の中で、永い一日を飽きず、ころろ、かららと鳴きくらしてゐる。ちよいと聞くと、それが唯ころろ、かららとしか聞えない。が、実は盛に議論を
中でも芦の葉の上にゐる蛙は、大学教授のやうな態度でこんなことを云つた。
「水は
「ヒヤア、ヒヤア」と、池中の蛙が声をかけた。空と
「土は何の為にあるか。
「ヒヤア、ヒヤア。」
蛇は、二度目の賛成の声を聞くと、急に体を
芦の葉の上の蛙は、依然として、大きな口をあけながら、辯じてゐる。
「空は何の為にあるか。太陽を
蛙は、空を仰いで、眼玉を一つぐるりとまはして、それから又、大きな口をあいて云つた。
「神の
さう云ふ
「からら、大変だ。」
「ころろ、大変だ。」
「大変だ、からら、ころろ。」
池中の蛙が驚いてわめいてる
「水も
「さうだ。蛇も我々蛙の為にある。蛇が食はなかつたら、蛙はふえるのに相違ない。ふえれば、池が、――世界が
これが、自分の聞いた、年よりらしい蛙の答である。
(大正六年九月)
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