一
ある日の事でございます。
やがて御釈迦様はその池のふちに
するとその地獄の底に、
 陀多
陀多 陀多と云う男は、人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた大泥坊でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、ある時この男が深い林の中を通りますと、小さな
陀多と云う男は、人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた大泥坊でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。と申しますのは、ある時この男が深い林の中を通りますと、小さな 陀多は早速足を挙げて、踏み殺そうと致しましたが、「いや、いや、これも小さいながら、命のあるものに違いない。その命を
陀多は早速足を挙げて、踏み殺そうと致しましたが、「いや、いや、これも小さいながら、命のあるものに違いない。その命を御釈迦様は地獄の容子を御覧になりながら、この
 陀多には蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした
陀多には蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。そうしてそれだけの善い事をした二
こちらは地獄の底の血の池で、ほかの罪人と一しょに、浮いたり沈んだりしていた
 陀多
陀多 陀多も、やはり血の池の血に
陀多も、やはり血の池の血にところがある時の事でございます。
 陀多が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の
陀多が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の 陀多はこれを見ると、思わず手を
陀多はこれを見ると、思わず手をこう思いましたから
 陀多
陀多しかし地獄と極楽との間は、何万里となくございますから、いくら
 陀多もくたびれて、もう一たぐりも上の方へはのぼれなくなってしまいました。そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、糸の中途にぶら下りながら、遥かに目の下を見下しました。
陀多もくたびれて、もう一たぐりも上の方へはのぼれなくなってしまいました。そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、糸の中途にぶら下りながら、遥かに目の下を見下しました。すると、一生懸命にのぼった甲斐があって、さっきまで自分がいた血の池は、今ではもう暗の底にいつの間にかかくれて居ります。それからあのぼんやり光っている恐しい針の山も、足の下になってしまいました。この分でのぼって行けば、地獄からぬけ出すのも、存外わけがないかも知れません。
 陀多は両手を蜘蛛の糸にからみながら、ここへ来てから何年にも出した事のない声で、「しめた。しめた。」と笑いました。ところがふと気がつきますと、蜘蛛の糸の下の方には、
陀多は両手を蜘蛛の糸にからみながら、ここへ来てから何年にも出した事のない声で、「しめた。しめた。」と笑いました。ところがふと気がつきますと、蜘蛛の糸の下の方には、 陀多はこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、しばらくはただ、
陀多はこれを見ると、驚いたのと恐しいのとで、しばらくはただ、そこで
 陀多は大きな声を出して、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は
陀多は大きな声を出して、「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸はその途端でございます。今まで何ともなかった蜘蛛の糸が、急に
 陀多のぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて
陀多のぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて 陀多もたまりません。あっと云う
陀多もたまりません。あっと云う後にはただ極楽の蜘蛛の糸が、きらきらと細く光りながら、月も星もない空の中途に、短く垂れているばかりでございます。
三
 陀多
陀多 陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。
陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまったのが、御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には
(大正七年四月十六日)
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