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R変身

时间: 2023-09-13    进入日语论坛
核心提示:R変身まだ昼なのに、夕ぐれのように、うすぐらい森の中へはいると、じいさんは、カニおけをかついだ棒を、かたからおろして、こ
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R変身


まだ昼なのに、夕ぐれのように、うすぐらい森の中へはいると、じいさんは、カニおけをかついだ棒を、かたからおろして、こちらにむきなおりました。そして、カニとそっくりの顔で、ニヤリと笑いました。
「きみは、りっぱな少年だ。わしは、きみのような少年が、ひとり、ほしかったのだ。どうだ、おれの弟子にならないかね。」
じいさんは、さっきのいなかことばとは、まるでちがった、標準語で、そんなことをいいました。じいさんとはおもえないわかわかしい声です。
「弟子になるって、どうすればいいんだい?」
井上君は、勇気をだして、たずねてみました。
「つまり、おれの命令どおりに、うごくのさ。そのかわり、きみは、地球の人間のだれもしらないものをみることができる。このひろい宇宙を旅行することができる。」
とんでもないことを、いいだしました。ひょっとしたら、このじいさんは、気がちがっているのではないでしょうか。
「どうして、宇宙旅行をするんだい?」
井上君はあいてをばかにしたように、聞きかえしました。
「Rすい星にのってさ。」
「えっ、Rすい星だって?」
この、よぼよぼのじいさんの口から、Rすい星なんてことばがでるのは、ふしぎです。
「だって、Rすい星まで、どうしていけばいいんだい?」
「カニ怪人といっしょにいけばいいのさ。ちゃんとのりものが、海の底にまっている。それにのりこんで、ピューッと、空へとびだしていくのさ。」
じいさんは、千葉県の銚子の近くの海に、おそろしい音をたてておちた、あのロケットのようなもののことを、いっているのかもしれません。井上君は、いよいよ、気味がわるくなってきました。
「だって、カニ怪人はきえてしまったじゃないか。それに、カニ怪人が、ぼくをRすい星へつれていってくれるかどうか、わからないじゃないか。」
井上君は、まるで、夢の中で、ものをいっているような気持でした。Rすい星へいくなんて、できっこないことを、しっていながら、つい、じいさんのことばに、まきこまれてしまったのです。
「わからなくはないよ。カニ怪人さえ、しょうちすればいいのだ。」
じいさんは、わかわかしい声で、自信ありげにこたえました。
「じゃあ、おじいさんは、カニ怪人をしっているのかい?」
「しっているとも、いや、しっているどころじゃない。いま、そのしょうこをみせてやるぞ。」
じいさんは、みょうなことを、いったかと思うと、パッと、姿をけしてしまいました。
じいさんのすぐうしろに、直径一メートルもある大きな木が立っていました。とっさに、ひととびで、その木のうしろへ、かくれたのかもしれません。しかし、あのよぼよぼのじいさんに、そんなはやわざができるでしょうか。おばけか、忍法にんぽうつかいのように、パッときえてしまったとしか、考えられないのでした。
井上君は、つぎつぎと、いがいなことばかりおこるので、あっけにとられて、ボンヤリと、つったっていました。夢に夢みるここちです。
ふと気がつくと、二つのブリキおけがすっかり、からっぽになっていました。あの何百というカニは、どこへいってしまったのでしょう。
井上君は、目をこらして、まえに立っている大きな木のみきをみつめました。木のみきがウネウネと、ゆれていたからです。
コケのはえた、大木のみきが、ヘビの背中のように、うごいているのです。
「あっ、カニだっ。」
それは、何百ぴきというカニが、かさなりあって、木のみきを、のぼっているのでした。それがモゾモゾとうごくたびに、木がゆれるようにみえたのです。
井上君は、ハッとおもいだしました。カニ怪人が銚子の近くの海から、あらわれたときにも、また、古山博士の庭にあらわれたときにも、そのまえぶれのように、たくさんのカニが、はいだしてきたというではありませんか。
すると、いま、この大木のみきを、はいあがっているカニのむれも、やっぱり、おなじまえぶれではないのでしょうか。
井上君は、サーッと、からだじゅうから、血がひいていくような恐怖を感じました。
そのときです。大木のみきのうしろから、なにか黒いものが、チラッとあらわれました。
ひらべったい、かさのようなものです。ピカッと光りました。電気のように、つよい光です。やがて、その光が二つになりました。
あっ、目です。怪物の目です。
その上にかぶさっている、かさのようなものは、巨大な、カニのこうらです。目の下に口があります。口からはブツブツと、白いあわをふきだしています。
カニのこうらの上には、アンテナのような二本の触手しょくしゅ、口のよこからは、するどいはさみのついた二本の腕、それから、カニのはらのように、気味のわるい胴体、二本のまがりくねった足。
ああ、カニ怪人です。カニ怪人が、井上君の目のまえに、姿をあらわしたのです。
「しんぱいしなくてもよろしい。きみを、とってくうわけじゃない。」
口のあわの中から、カニ怪人のことばが、もれてきました。
銚子の近くの海からあらわれたときには、まだ、かたことにしかいえなかったのに、あれから、十日もたたないうちに、こんなにうまく、日本語がしゃべれるようになったのでしょうか。
「おれたちR星人は、みたもの、きいたものをすぐ、じぶんのものにできるのだ。ことばでも、顔でも、姿でも、地球人は、ならって、おぼえるのだが、おれたちは、ことばでも、姿でも、そのまま、こちらへ、のりうつってしまうのだ。さっきは、地球人の七十のじいさんにばけていた。おれは、きのう、あのとおりのじいさんを、道でみかけて、それにばけたのだよ。地球には変身ということばがあるね。だから、これはR変身とでもよべばいいだろう。」
みにくい大ガニのばけものが、じつにただしい日本語をつかっているのです。地球人の知恵では、想像もできないことでした。
「まだある。おれはじぶんのからだをけすことができる。いや、じぶんばかりじゃない。だれのからだだってけせるのだ。地球人のからだだってね。だから、きみの姿をみえなくすることだって、わけはないのだよ。」
いよいよ、ふしぎなことを、いいだしました。
井上君は、じぶんのからだが、けされて、なくなってしまうことをかんがえると、ゾーッと、身ぶるいしないではいられませんでした。
「日本には忍法というのがあるそうだね。やっぱりからだをけす術だね。その術はもうわすれられてしまったそうじゃないか。いまでは、だれもできるものがないというじゃないか。だが、R星人には、わけのないことだよ。それには、きまったやりかたがある。それをしらないと、きえられないのだ。ひとつみせてやろうか。」
井上君は、いよいよ、夢みごこちで、ぼうぜんとしていました。ふつうの、ものの考えかたが、すっかり、ぎゃくになってしまったみたいで、なにがなんだか、わけがわからないのです。
「ほら、よくみてるんだよ。」
カニ怪人の、あわだらけの口から、そんなことばが、もれたかとおもうと、カニのこうらの上の二本の触手のさきが、パッと光って、そこからこまかい白いあわのような、煙のようなものが、もうもうと、ふきだしてきました。
その煙のなかで、カニ怪人は、いきなり、グルグルと、からだをまわしはじめたのです。まるでコマのようにまわるのです。
ああ、そのはやさ。もう怪人の姿は、よくみえません。なにか気体のようなものが、クルクル、クルクル、まわっているばかりです。それが触手からふきだす、白い煙につつまれて、いよいよ、ぼんやりしてくるのです。
プロペラが早く回転すると、目にみえなくなります。あれと同じりくつなのでしょうか。
白い煙まで、いっしょになって、グルグルと、まわりはじめました。そして、それがスーッと、上のほうへ、たちのぼっていきます。
ああ、もうみえなくなりました。木のみきのまえには、なにもありません。井上君は木のうしろにまわってみました。そこにも、なにもありません。まったくきえてしまったのです。
古山博士の書庫の中できえたのも、このやりかただったのでしょうか。そうおもうと、井上君は、なんともいえない、へんな気持になっていきました。
「アハハハハ……、おどろいたかね。これがR星人の忍法だよ。地球人はおどろくだろうが、R星では、からだをけすなんて、なんでもないことだよ。アハハハハ……、こんどは、ひとつ、きみのからだをけしてみようか。」
井上君はギョッとして、へんじをする力もありません。
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