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はてしなき世界(1)

时间: 2022-12-05    进入日语论坛
核心提示:はてしなき世界小川未明ここにかわいらしい、赤あかちゃんがありました。赤あかちゃんは、泣なきさえすれば、いつも、おっぱいが
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はてしなき世界

小川未明


ここにかわいらしい、あかちゃんがありました。あかちゃんは、きさえすれば、いつも、おっぱいがもらわれるものだとおもっていました。まことに、そのはずであります。いつもあかちゃんがきさえすれば、やさしいおかあさんはそばについていて、やわらかな、しろいあたたかな乳房ちぶさあかちゃんのくちびるへもっていったからであります。
それから、まただいぶがたちました。
あかちゃんは、もとよりまだものがいえませんでした。ただまねをしてみせたばかりです。あかちゃんは、なにかお菓子かしがほしいと、ちいさなかわいらしい、それは大人おとなくちなら一口ひとくちでのんでしまわれそうな、やわらかなって、「おくれ。」をいたしました。
すると、なんでも、よくあかちゃんの心持こころもちがわかるおかあさんは、いつでも、あかちゃんのきそうな、そしてどくにならないお菓子かしあたえました。それで、あかちゃんは、いつもおちちみたければ、すぐにおちちまれ、またお菓子かしがほしければ、いつでもお菓子かしをもらうことができたのです。
あかちゃんは、そう都合つごうよくいくのを、けっして不思議ふしぎともなんともおもいませんでした。そして、むしろそれがあたりまえのようにおもっていました。というのは、おかあさんがそばにいなかったときでも、おっぱいがほしいといって、すぐにもらわれないとおこっていたからです。
あるとき、あかちゃんは、だれもそばにいなかったとき、ちゃだんすにつかまってちながら、たなのうえっている、めざまし時計どけいをながめました。時計とけいは、カッチ、カッチ、といって、なにかいっていました。あかちゃんは、不思議ふしぎなものをたように、しばらく、びっくりしたつきで、だまって時計とけいていました。そして、あかちゃんはにっこりとわらいました。あかちゃんは、時計とけいがなにかいって、自分じぶんをあやしてくれるとおもったのです。あかちゃんは、時計とけいをいつまでもていました。時計とけいはしきりに、なにかあかちゃんにかっていっていますので、あかちゃんは、いくたびもにっこりとわらって、時計とけいこたえていました。そのうちに、あかちゃんは、お菓子かしがほしくなりました。それで、かわいらしい右手みぎてして、時計とけいかって、「おくれ。」をしました。
まるかお時計とけいは、ちょっとあたまをかしげて、わらがおをしましたが、なんにもあかちゃんにあたえるものを、時計とけいっていませんでした。あかちゃんは、いくたびもいくたびも「おくれ。」をしました。しかし、なんのこたえもなかったのです。このことは、どんなに、あかちゃんをさびしく、またたよりなくかんじさせたかわかりません。そして、そのとき、きゅうあかちゃんは、おかあさんがなつかしく、こいしくなりました。
あかちゃんは、きゅうがおをしました。そして、のまわりをまわしましたけれど、そこにはおかあさんがいませんでした。さびしさをこらえていたのが、ついに我慢がまんがしきれなくなって、あかちゃんはおおきなこえをあげてしました。すると、おかあさんは、おどろいて、はしってきました。
こうしてあかちゃんには、おかあさんが、だんだんはっきりとわかってきました。
かあさんがわかると、一こくもおかあさんからはなれるのは、あかちゃんにとって、このうえなくかなしかったのであります。けれど、おかあさんは、あかちゃんが、ひとりであそぶようになると、いろいろ仕事しごとがあって、いそがしいので、そういままでのように、あかちゃんのそばにばかりは、ついていることができませんでした。
かあさんは、お勝手かってや、洗濯せんたくをなさるときには、こまかいこうしじまのエプロンをていなさいました。あかちゃんは、おかあさんが、そのこうしじまのエプロンをなされた姿すがたるのが、なによりもかなしく、さびしかったのです。あかちゃんは、エプロンをなされると、おかあさんが、あっちへいってしまわれるのをったからです。そして、おかあさんが、そのしまのエプロンをぎなされた姿すがたたときは、また、どんなにうれしかったでありましょう。おかあさんは、すぐにここへきて自分じぶんいて、おっぱいをくださることがわかったからです。
それで、あかちゃんには、なによりもいやなにくらしいものは、そのよごれた、こうしじまのエプロンでありました。
あかちゃんは、エプロンをると、かんしゃくをこしたり、だだをこねたりしました。
「ほんとうに、あかちゃんは、エプロンがだいきらいなのね。」と、おかあさんはわらいながらいわれました。
あかちゃんは、いつのまにか、うちひとたちがらないまに、エプロンを縁側えんがわから地面じめんとしてきました。しかしあかちゃんのてたり、かくしたりすることは、おかあさんにとってなんでもありませんでした。いつでも必要ひつようなときは、すぐにつけられたからであります。
ある、おかあさんは、よごれたエプロンを洗濯せんたくして、にわさきのさおにかけておきました。すると、エプロンから、しずくが、ぴかぴかとひかって、いくつとなくちては、またあとからあとからとちたのでありました。
あかちゃんは、座敷ざしきにちょこなんとすわっていながら、まぶしそうなつきをして、エプロンがさおにかけてあるのをながめていました。どんな気持きもちであかちゃんがそれをながめているか、ったものはありません。
しかし、あかちゃんは、にくらしいエプロンだとおもっていたには相違そういないとおもわれます。みじかであって、一にちには、そのエプロンはよくかわきませんでした。そして、日暮ひぐがたからかぜてきて、天気てんきわりかけたのであります。
エプロンが、さおにかかって、ひらひらとなびいているのを、その晩方ばんがたあかちゃんはもう一縁側えんがわ障子しょうじにつかまってちながらたのでありました。
やはり、だれも、そのときのあかちゃんの心持こころもちを、るものはありませんでしたけれど、あかちゃんは、うんとエプロンがかぜかれて、かぜが、あのエプロンをとおい、もうけっしてつからないところへ、っていってくれればいいとおもったでありましょう。
エプロンはまだぬれてもいたし、またしいしなでもなかったから、そのままにしていえうちへいれずにおきますと、その雨風あめかぜれて、ほんとうによるあいだに、エプロンは、どこへかんでいってしまったのです。
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