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花の咲く前(1)

时间: 2022-12-05    进入日语论坛
核心提示:花の咲く前小川未明一赤あかい牛乳屋ぎゅうにゅうやの車くるまが、ガラ、ガラと家いえの前まえを走はしっていきました。幸吉こう
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花の咲く前

小川未明



あか牛乳屋ぎゅうにゅうやくるまが、ガラ、ガラといえまえはしっていきました。幸吉こうきちは、はるひかりびた、そのあざやかなあかいろが、いまりたてたばかりのようながしました。それから、もう一つのついたことは、このくるまがいってしまってからまもなく、カチ、カチという拍子木ひょうしぎおとがきこえたことです。昨日きのうもそうであったし、一昨日おとといもそうであったようながするのです。
不思議ふしぎだなあ、牛乳屋ぎゅうにゅうやくるまと、紙芝居かみしばいのおじさんと、どうして、いつもいっしょにくるのだろうな。」と、ブリキみせから、そとていた幸吉こうきちは、おもったのでした。
紙芝居かみしばいは、今日きょうも、あかトラのつづきをやるにきまっています。あかトラのはなしは、なかなか長編ちょうへんなんでした。おじさんはじめ、子供こどもたちは、みんなあかトラをわるいねこだといっていましたけれど、幸吉こうきちは、こころなかあかトラに同情どうじょうしていました。なぜなら、もとをいえば人間にんげんわるいからです。三びきのむと、一ぴきは、近所きんじょ子供こどもいかけて、どぶのなかとしたし、一ぴきは、だれかがれていってしまったし、もう一ぴきは、くるまあしをひかれたので、ははねこは、そのたびにかなしんでくるいそうになり、ついに仕返しかえしをしようと決心けっしんするようになりました。あかトラはひとうちはいんで、はじめのうちは、金魚きんぎょをとったり、カナリヤをべたり、おぜんについているおさかなをさらったりしたくらいのものですが、だんだんいたずらがつのって、あかぼうをひっかいたり、おじょうさんの手提てさげくしたり、かえしのつかないことをするようになりました。しまいには、「あかトラ」と、きくと、みんながふるえあがるようになりました。
なかには、やりや、鉄砲てっぽう用意よういしておいて、きたら退治たいじしてやろうとちかまえているものもありましたが、神通力じんずうりきましたあかトラは、なかなか人間にんげんにははいりませんでした。
いつしのんできて、いつそんないたずらをするかわからないので、まったく悪魔あくまのしわざとしかおもわれなくなりました。まちひとたちは、よるになると心配しんぱいでろくろく安眠あんみんはできなかったのです。
ここにK技師ケーぎしという、わか発明家はつめいかがあって、あかトラのはなしをきくと、たいそうはらてました。
世間せけんさわがせるわるいねこだ。いかほどの神通力じんずうりきがあるにせよ、科学かがくちからにはかなうまい。わたし退治たいじしてやろう。」と、電気でんき応用おうようして、いよいよ、あかトラと勝負しょうぶけっすることになったのです。
ここまでは、幸吉こうきちた、はなしのあらましでありました。
「きょうは、どうなるだろうか?」
かれうちにじっとしていられませんでした。ちょうど叔父おじさんが、みせにいなかったので、幸吉こうきちは、酒屋さかやまえほうはしっていきました。
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