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花の咲く前(4)

时间: 2022-12-05    进入日语论坛
核心提示:四ジャックは、森もりの中なかへ深ふかく入はいってゆきました。彼かれの後あとからは、びっこの白犬しろいぬと、耳みみの垂たれ
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四


ジャックは、森もりの中なかへ深ふかく入はいってゆきました。彼かれの後あとからは、びっこの白犬しろいぬと、耳みみの垂たれた斑犬まだらいぬがついていきました。そして、たがいにジャックの右みぎになり、左ひだりになりして、ジャックの身みを護衛ごえいするように注意深ちゅういぶかく先方せんぽうを見みつめていました。すぎや、松まつの木きのしげった森もりの中なかにはところどころ日ひの光ひかりが、にじのごとく洩もれて下したのささの葉はを明あかるく照てらしています。ここまでは彼かれを追おってくるものがありません。野犬やけんの一群ぐんは、ジャックを中心ちゅうしんにして、自分じぶんたちの生活せいかつを営いとなむことにしました。彼かれらは、どこへいくにも一塊ひとかたまりとなって、いつでも敵てきに当あたる用意よういをしていました。犬いぬたちの間あいだにも、戦たたかって弱よわいものは、強つよいものに絶対ぜったいに服従ふくじゅうするというおきてがあって、夜よるになると、どこかの飼かい犬いぬが、畜犬票ちくけんひょうをチャラチャラと鳴ならしながら、牛うしの骨ほねや、パンくずなどをくわえて、彼かれらの機嫌きげんを取とるべく森もりの中なかへ持もち運はこぶのもありました。
ある日ひ、幸吉こうきちは、ジャックのことを思おもい出だしました。
「ジャックは、どうしたろうか。」
往来おうらいへ出でると、紫色むらさきいろの美うつくしい着物きものをきたみつ子こが遊あそんでいました。日ひの光ひかりの中なかに、ぱっと花はなが咲さいたように、道みちの上うえまでがまぶしかったのです。
「みつ子こさん、赤あかトラはどうなった?」
幸吉こうきちは、このごろ、カチカチという拍子木ひょうしぎの音おとをきいても、いくことがなかったのです。
「とうとうK技師ケーぎしに、電気でんきで殺ころされちゃったのよ。」
「かわいそうだね。」
「だって、赤あかん坊ぼうをひっかいたり、人間にんげんにかみついたりするんですもの、しかたがないわ。」
「どこかへゆくの?」
幸吉こうきちは、みつ子こにたずねました。
「叔母おばさんがいらして、お母かあさんと三人にんでお買かい物ものにいくの。幸吉こうきちさんにお土産みやげを買かってきてあげるわね。」と、みつ子こは、ぱっちりとした黒くろい目めで幸吉こうきちを見みました。
「みつ子こさん、もう僕ぼく、晩ばんにいないかもしれない。」と、幸吉こうきちは、じっとみつ子この顔かおを見返みかえすと、みつ子こも、ちょっと驚おどろいた顔かおつきをしたが、すぐにいきいきと笑わらって、
「そんなことうそよ、だましたって知しっているわ。」と、くるりと彼方むこうを向むいて、駆かけ出だしていきました。げたについている鈴すずの音おとが、リンリンと幸吉こうきちの耳みみにきこえました。
軽気球けいききゅうの上あがっているであろう、遠とおい町まちの空そらはかすんでいました。こうして耳みみをすますと、大海原おおうなばらの波音なみおとのように、あるいは、かすかな子守唄こもりうたのように、都会とかいのうめきが、穏おだやかな真昼まひるの空気くうきを伝つたってくるのです。幸吉こうきちは、原はらっぱへいったが、原はらっぱには、だれも遊あそんでいませんでした。丘おかの木立こだちは、みんなうす紅あかく色いろづいていました。あちらの高たかい煙突えんとつからは、今日きょうも黒くろい煙けむりが上のぼっていました。幸吉こうきちは、その煙けむりを見みて、明日あすも、明後日あさってもまたこのように立たち上のぼることであろうと思おもったのです。
まだ霜しもで枯かれたままになっている、草株くさかぶの上うえへ腰こしを下おろすと、黄色きいろな小ちいさいちょうが、風かぜに吹ふかれて目めの前まえを飛とんでいきました。幸吉こうきちは、年としちゃんや、正しょうちゃんたちと、ボールを投なげて遊あそんだ去年きょねんの秋あきの日ひのことを思おもい出だしていました。
このとき、突然とつぜん後方うしろから、飛とびついて幸吉こうきちの頭あたまを抱かかえたものがあります。
「あっ、ジャックだ!」
彼かれは、びっくりしたよりは、踊おどり上あがったほど喜よろこびました。そして、ジャックと原はらっぱで相撲すもうを取とりました。
「ジャック、どこにいたんだい。僕ぼく、晩ばんに田舎いなかへ帰かえるんだ、もうあえないのだぜ。」
知しらずに熱あつい涙なみだが、目めの中なかからわいて出でました。ジャックは、いったことがわかるのか、幸吉こうきちの涙なみだにぬれた顔かおを舌したでぺろぺろとなめています。
遠とおくで、ほかの犬いぬのなき声ごえがしました。すると、ジャックは、急きゅうに幸吉こうきちを振ふり捨すて、あちらへ走はしっていってしまいました。
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