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僕はこれからだ(3)

时间: 2022-12-22    进入日语论坛
核心提示:かくして、一年ねんとたたぬうちに、彼かれはもう大胆だいたんにりっぱに、仕事しごとができるようになりました。あるとき、親方
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かくして、一ねんとたたぬうちに、かれはもう大胆だいたんにりっぱに、仕事しごとができるようになりました。
あるとき、親方おやかたは、つくづくとかれ仕事しごとぶりをていたが、
「おまえは、いつまでも、ペンキらそうとはおもわないだろうが、いったいなにになりたいなのだ。」と、かれにききました。
ぼくは、軍人ぐんじんになりたい。」と達吉たつきちは、こたえたのです。いつか准尉じゅんいにあってから、かれはそうこころなかおもったのでした。
軍人ぐんじんにか、それはいい。おまえは、ひくいが、なかなか強情ごうじょうだから、いい軍人ぐんじんになれるだろう。」と親方おやかたは、達吉たつきち意見いけんに、反対はんたいしませんでした。
達吉たつきちは、おなとしごろの少年しょうねん学校がっこうへいくのをたりすると、うらやむかわりに、よるも、つかれたからだちいさなつくえまえにもたせて、航空雑誌こうくうざっしんだり、地理ちりや、歴史れきし復習ふくしゅうしたりしていました。そして、ひるになれば、かれは、普通ふつう子供こどもたちなら、とうていがれない、のまわりそうなたか建物たてものいただきって、
学校がっこう勉強べんきょうするよりか、こんなところで、大人おとなといっしょに仕事しごとをするおれのほうが、よほどえらいんだぞ!」と、だれにかっていうとなく、ひとりで豪語ごうごしました。
それは、かれが、東京とうきょうへきてから、たびめにむかえるなつあつのことでした。
みどりおおおかっていた教会堂きょうかいどうまえとおりかかると、たくさんひとあつまって、とううえをながめていました。
「どうしたんですか。」
「あのたくさんなからすが、はとをねらっているのですよ。」
このごろ、どこのごみをあさっても、あまりものつからないので、都会とかいにすむえたからすたちは、よわとりをいじめてそのにくべることをかんがえついたのでした。それで、はとのおそったのです。いつ、どこからんできたのか、二のはとは、ここを安全あんぜん場所ばしょおもって、とう屋根やねつくりました。そして、やがて子供こどもんで、そだてていました。これをっていて、からすは、いま計画的けいかくてきに、れをなしてやってきたのです。はやくもさとったおやばとは、おくほうへ二ばとをかくして、ははばとは、むね子供こどもをおおい、たぶんそれはちちばとであったでしょう、いちばんはしにうずくまって、からだぐちをふさぐようにして、てきとにらみっていました。
どうなることかと、達吉たつきちもいっしょになって、ていました。すると、そのなか獰猛どうもうな一のからすが、ふいにちちばとにびかかって、とうとうからそときずりしてしまいました。っていたとばかり、ほかのからすたちが、四ほうからってたかって、あわれなはとをうばい、最後さいごにまみれたはとを屋根やねうえへたたきつけて、たがいにくちばしでちぎりはじめたが、あっというに、こうかつな一がそのかばねをさらってどこかへると、あわてて三、四、そのあといかけていきました。
「なんて、ひどいことをしやがる。まだ、あのなかには、はとがいるから、それもころされるだろう。」
こういって、ている人々ひとびとが、小石こいしひろって、からすにかってげつけていた。しかし、いしはそこまでとどきませんでした。からすは、いしたらないのをっていて、こちらのことはにもめずに、だんだんほう近寄ちかよって、じっと機会きかいをねらっていました。
「わるいやつだな。」と、達吉たつきちは、つくづくおもいました。かれむねは、いきどおりのために、どきんどきんとりだしました。
おそらく、子供こどもすくうために、自分じぶん犠牲ぎせいにしようと覚悟かくごしたのでしょう。ふいに、ははばとが、からした。からすらが、なんで、それを見逃みのがそう。我先われさき獲物えものにありつこうとかけるはとにかって突進とっしんしました。ははばとは、たくみに方向ほうこうえて、子供こどもたちのいるから、てき遠方えんぽう遠方えんぽうへとさそったのであります。ていると、とういただきそらたかく二、三かいもぐるぐるまわってから、したまちほうへ、できるだけの速力そくりょくで、っていきました。そのあとを、カアカアとさけびながら、くろくなって、からすらが執拗しつよういかけていきました。
けれど、まだ二、三意地悪いじわるいからすがのこっていて、どこへもらずに、とう屋根やねまって、けわしいをねらっていました。そこには、親鳥おやどりうしなった、かわいそうなばとがおそろしさのためにふるえているのでした。それとった、達吉たつきちは、もうなんで我慢がまんができましょう。
「よし、あの不埒ふらちなからすめをいはらってくれよう。そして、子供こどもおれふところいてきてやろう。」
達吉たつきちは、人々ひとびとがなんといってもかまわずに、さくえて、寂然せきぜんとした教会堂きょうかいどう敷地内しきちないはいみ、まどわくを足場あしばとして、さるのごとく、といをつたって、建物たてものかべじり、急角度きゅうかくど傾斜けいしゃしている屋根やねへはいがろうとしました。
「おうい、やめろ、あぶないぞう!」と、したからわめくこえがきこえました。このこえかれみみはいったけれど、
「なに、くそ……。」と、かれは、返事へんじをするかわりに、ぎしりをしていた。
突然とつぜん人間にんげんあたまが、にょっきりと屋根やねはしからがると、さすがにからすは、これにかなわぬとおもったか、いちはやく、どこかへげていきました。
スレートのめんは、太陽たいようねつあぶらながすごとくけていて、あしうらへ、はりすようにいたさをかんじさせた。
「もう、りろう!」と、ていたもののなかから注意ちゅういするものがあった。
達吉たつきちは、ただのぼらなければならぬがしていた。かおげると、まだのところまで三、四メートルありました。同時どうじしたると、すぐちかおおきなはいり、四ほうったえだやわらかな緑色みどりいろ毛氈もうせんひろげたように、こまかなが、微風びふうにゆれていました。そして、こんなさいに、どうしてか、いつか病院びょういんまどからた、あおぎりの幻覚げんかくかんだ。
おれは、どうすればいいのか?」さっと感激かんげきせた刹那せつな自分じぶんのすることがわからなくなり、こころがぐらつくとあし感覚かんかくまでなくなって、からだがずるずるとしたすべりはじめた。かたいスレートにはどこにもつめのてようがない!
かれは、絶体絶命ぜったいぜつめいかんじた。数秒すうびょうのちに、自分じぶんからだが、いくしゃくたかいところから地上ちじょう落下らっかして粉砕ふんさいするのだと意識いしきするや、不思議ふしぎにも、気力きりょくがった。かれは、   屋根やねると、眼下がんか大木たいぼくがけて、それにしがみつこうとしてんだ。
軽業師かるわざしにやれるはなれわざなら、なんで人間にんげん生死せいし瀬戸際せとぎわにできぬというはずがありましょう。
達吉たつきちは、天地てんちくらだった。大波おおなみが、自分じぶんんだ。からだ前後上下ぜんごじょうげれていた。わずかに、けると、しっかりと自分じぶんはけやきのえだにしがみついていた。
「おお、おれは、きているぞ! おれは、たすかったのだ。おとうさんにちかいます。ぼくは、軍人ぐんじんになります。かみさまにちかいます。ぼくは、かならず飛行兵ひこうへいになります。」
とっさに、希望きぼうあたまにひらめいた。どこをてもただあかるく、さんらんたるひかりのうちにいるのを発見はっけんした。どこかで、がやがやひとこえが、きこえるようながしたけれど、達吉たつきちは、ただ、手足てあしちかられて、どうしてもつよきなければならぬということだけしかかんがえていなかった。
このときの、かれは、からすのよりも、さとくいきいきとかがやいて、いったんこころにつかんだものを一しょうのがすまいとしていました。
 
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