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星の子(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:星の子小川未明あるところに、子供こどもをかわいがっている夫婦ふうふがありました。その人ひとたちの暮くらしは、なにひとつと
(单词翻译:双击或拖选)
 
せんだって降ふった雪ゆきは、まだ町まちの中なかにも消きえずに、そこここに残のこっていました。彼女かのじょは夜よるになるのを待まっていました。その夜よは、いつになく空そらが清きよらかに晴はれて、青あおくさえたうちに星ほしの花はなのごとくきれいに乱みだれていました。その一つ一つ異ことなった色いろの光ひかりを放はなって、輝かがやいていたのであります。彼女かのじょは、寒さむい風かぜが吹ふく中なかを歩あるいて、町まちの西にしのはずれにいたりました。そこには、大おおきな河かわが音おとをたてて流ながれていました。あたりは、一面めんに煙けむるように青白あおじろい月つきの光ひかりにさらされています。この河かわのふちは、一帯たいに貧民窟ひんみんくつが建たて込こんでいて、いろいろの工場こうじょうがありました。どの工場こうじょうの窓まども赤あかくなって、その中なかからは機械きかいの音おとが絶たえ間まなく聞きこえてきました。そして建物たてものの頂いただきにそびえたった煙突えんとつからは、夜よるの青あおい空そらに、毒々どくどくしい濁にごった煙けむりを吐はき出だしているのでありました。
彼女かのじょは、ある工場こうじょうの前まえでは、多おおくの女工じょこうが働はたらいているのだと思おもいました。また、鉄槌てっついの響ひびいてくる工場こうじょうを見みては、多おおくの男おとこの労働者ろうどうしゃが働はたらいているのだと思おもいました。その人々ひとびとは、みんな、このあたりのみすぼらしい家いえに住すんでいるのだと思おもったときに、彼女かのじょは、自分じぶんたちはどうしてここに生うまれてこずに、金持かねもちの家いえへ生うまれてきたか、しあわせといえば、そうであるが、そのことが不思議ふしぎにも思おもわれたのでありました。
ここを離はなれて、だんだん寂さびしい野原のはらにさしかかると雪ゆきが深ふかくなりました。手足てあしは寒さむさに凍こごえて、ことに踏ふむ足あしの指先ゆびさきは、切きれて落おちそうに、痛いたみを感かんじたのであります。
どこを見みましても、あたりは、灰色はいいろの雪ゆきにおおわれていました。そして、あの天国てんごくで聞きこえるであろうような、よい音色ねいろも、また輝かがやかしい明あかりもさしていませんでした。彼女かのじょは、せっかく子供こどもにあえると思おもって、苦痛くつうを忍しのんで歩あるいてきたのでした。
彼女かのじょは、葉はのない林煙けむりを吐はき出だしているのでありました。
彼女かのじょは、ある工場こうじょうの前まえでは、多おおくの女工じょこうが働はたらいているのだと思おもいました。また、鉄槌てっついの響ひびいてくる工場こうじょうを見みては、多おおくの男おとこの労働者ろうどうしゃが働はたらいているのだと思おもいました。その人々ひとびとは、みんな、このあたりのみすぼらしい家いえに住すんでいるのだと思おもったときに、彼女かのじょは、自分じぶんたちはどうしてここに生うまれてこずに、金持かねもちの家いえへ生うまれてきたか、しあわせといえば、そうであるが、そのことが不思議ふしぎにも思おもわれたのでありました。
ここを離はなれて、だんだん寂さびしい野原のはらにさしかかると雪ゆきが深ふかくなりました。手足てあしは寒さむさに凍こごえて、ことに踏ふむ足あしの指先ゆびさきは、切きれて落おちそうに、痛いたみを感かんじたのであります。
どこを見みましても、あたりは、灰色はいいろの雪ゆきにおおわれていました。そして、あの天国てんごくで聞きこえるであろうような、よい音色ねいろも、また輝かがやかしい明あかりもさしていませんでした。彼女かのじょは、せっかく子供こどもにあえると思おもって、苦痛くつうを忍しのんで歩あるいてきたのでした。
彼女かのじょは、葉はのない林はやしの中なかに入はいってゆきました。そこにも明あかるいほど星ほしの光ひかりはさしていました。
「どこに、私わたしのかわいい子供こどもがいるだろう。」
彼女かのじょは、こう思おもって、灰色はいいろの世界せかいをさがしていました。
このとき、すこし隔へだたったところに、黒くろい人影ひとかげが人ひとのくるのを待まっているように立たっていました。彼女かのじょは、その方ほうに歩あるいてゆきました。すると、髪かみの毛けを乱みだして、やせた女おんなが子供こどもを抱だいて立たっていました。その女おんなは泣ないていました。彼女かのじょが近ちかづくと、みすぼらしいふうをした女おんなは、
「どうか助たすけてください。」といいました。
彼女かのじょは、もっと近ちかづいて、よくようすを見みますと、この工場町こうじょうまちに住すんでいる貧乏びんぼうな若わかい女房にょうぼうでありました。
「おまえさんは、こんなところに立たって、なにをしているのですか?」と、彼女かのじょはたずねました。
すると、やせた貧まずしげな若わかい女おんなは、
「私わたしたちは、この子供こどもを養やしなってゆくことができません。それで、だれも、もらってはくれませんから、かわいそうですけれど、ここへ捨すてにやってきたのです。けれど、やはり捨すてられないのでもらってくださる人ひとのくるのを待まっていました。」といいました。
彼女かのじょは、これを聞きくとびっくりしました。
「まあ、こんな雪ゆきの上うえへ、子供こどもを捨すてる気きなんですか。」といって、やせた女おんなを見みすえました。
やせた女おんなは泣なきながら、
「奥おくさま、私わたしたちは、この子供こどもがあるばかりに、手足てあしまといになって、どんなに困こまっていますか、どうかお慈悲じひをもって、この子供こどもを育そだててくださいませんか。」と頼たのみました。
金持かねもちの妻つまは、心こころの中なかで、不思議ふしぎなことがあればあるものだと思おもいました。
「まあ、どんな子供こどもですか、私わたしに、見みせてください。」といいました。そして、星ほしの明あかりに照てらして、やせた女おんなに、抱いだかれている子供こどもの顔かおをのぞきました。星ほしの光ひかりは、下界げかいをおおうた雪ゆきの面おもてに反射はんしゃして、子供こどもの顔かおがかすかにわかったのであります。けれど、その子供こどもは、彼女かのじょが探さがしている自分じぶんの死しんだ子供こどもではありませんでした。
「この子供こどもは、私わたしの死しんだ子供こどもじゃない。」と、彼女かのじょはいいました。
やせた女おんなは、しくしくと泣ないていました。そのようすは、いかにも哀あわれに見みられました。
「奥おくさま、どうかこの子供こどもを育そだててくださいませんか。そうしてくだされたら、私わたしどもは、どんなに助たすかりましょう。」といいました。
金持かねもちの妻つまは、私わたしがこれほどまでにせつない思おもいをして、神かみさまに願ねがっているのも、みんな死しんだ自分じぶんの子供こどもがかわいいからのことだ。自分じぶんの死しんだ子供こどもが、永久えいきゅうに帰かえってこないものなら、なんで、見みず知しらずの人ひとの子供こどもを苦労くろうして育そだてることがあろう? 私わたしは、あくまで、私わたしの死しんだ子供こどもを神かみさまから返かえしてもらわなければならぬと考かんがえました。
「私わたしは、いま自分じぶんの子供こどもを探さがしているのです。それが見みつかるまでは、知しらない人ひとの子供こどもをもらうことはできません。」と、彼女かのじょは断ことわりました。
やせた女おんなは、絶望ぜつぼうして、ため息いきをついていました。
「奥おくさま、子供こどもはみんなかわいいものでございます。しかたがありません。私わたしは、またこれから、この子供こどもを育そだててくださる人ひとを探さがさなければなりません。」といって、やせた女おんなはしおしおと、彼女かのじょの前まえを離はなれて雪ゆきの上うえをあちらに歩あるいてゆきました。
彼女かのじょは、このとき、女おんなのいったことをよく考かんがえてみました。そして、だんだん遠とおざかってゆく哀あわれな女おんなの姿すがたを見送みおくりながら、もう一度ど、あの子供こどもの顔かおをよくながめて、どこか死しんだ自分じぶんの子供こどもの顔かおつきに似にているところがあったら、もらって育そだてようかと思おもいました。
しかし、こう思おもったときは、もう遅おそかったのであります。もはや、どこを探さがしても、やせた女おんなの姿すがたは見みえませんでした。
雪ゆきの上うえを、空そらの星ほしの光ひかりが、寒さむそうに、かすかに照てらしていました。彼女かのじょは、寒さむい身みにしみる風かぜにさらされながら、なお、死しんでしまった子供こどもを探さがして歩あるいていました。
その夜よ、遅おそくなってから、彼女かのじょは疲つかれて、空むなしく町まちの方ほうへ帰かえってゆきました。
この二人ふたりの夫婦ふうふは、それから後のち、長ながい間あいだ、子供こどもというものがなく、さびしい生涯しょうがいを送おくったのであります。
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