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北海の波にさらわれた蛾(1)

时间: 2022-12-24    进入日语论坛
核心提示:北海の波にさらわれた蛾小川未明鈍にぶい砂漠さばくのあちらに、深林しんりんがありましたが、しめっぽい風かぜの吹ふく五月がつ
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北海の波にさらわれた蛾

小川未明


にぶ砂漠さばくのあちらに、深林しんりんがありましたが、しめっぽいかぜく五がつごろのこと、そのなかから、おびただしいしろ発生はっせいしました。
、ときならぬはなびらの、かぜかれたごとく、木々きぎ枝葉えだはがとまっていたのです。それは、また、ちょうど、りかかった、つめたいゆきのようにもられました。
しかし、その深林しんりんは、にとって、あまりこのましくなかった。なつにでもなれば、そこにはいろいろの毒草どくそうや、雑草ざっそうはないたであろうけれど、この時分じぶんには、まだはなすくなかったからです。
あるのこと、仲間なかまが、そとからはやしかえってくると、おおぜいによろこばしいらせをもたらしたのでした。
「ここから、あちらにえるおかしてゆくと、いま、りんごの花盛はなざかりです。それは、いいにおいがしています。」といいました。
このらせは、たちまち、ぜんたいにれわたりました。
「それなら、わたしたちは、この陰気いんきもりなかから、そのあかるいりんごばたけに、うつろうじゃありませんか……。」
そとから、らせをもたらした一ぐん道案内みちあんないとなりました。そして、そのあとからみんながいっしょにつづいてったのであります。
「さあ、かけましょう。」
ぐんが、はなびらをりまいたように、そらったのです。つづいて大群たいぐん大空おおぞらをかすめて、さきんでいった、れのあとにつづきました。
しかし、こんなに、みんながこの深林しんりん見捨みすてて、出発しゅっぱつしたあとにも、二十や、三十のは、みんなといっしょにゆかずにあとにとどまりました。
わたしたちは、ここでまれたのだ。ここでらしましょう。そのうちに、きっとおもしろい、幸福こうふくなことがあるにちがいない。」と、のこったたちは、かたったのでした。
りんごばたけにうつったれは、あかるいおくりました。やわらかな、あたたかなかぜは、しろいりんごのはなうえいて、ひるとなくよるとなくにおっています。かれらには、このうつくしい殿堂でんどうが、自分じぶんたちのためにつくられたのではないかとおもわれたほどでした。
「こんなに、あかるい、心地ここちのいい場所ばしょがあるのに、なんで、あのくらはやしこいしがって、あのひとたちはいっしょにこなかったのだろう。」と、あとにのこったわらったのでした。
りんごのは、びっくりしました。どこからこんなちいさな、しろ羽虫はむしんできたろうかとおもったのです。けれど、べつに、自分じぶんたちにがいくわえるものでないとったときに、はなは、たちにかってはなしかけました。
「あなたがたは、どこから、ここへんできたのですか?」
「あちらのくらい、深林しんりんなかからんできました。もう、あの陰気いんきなところは、いやでたまりません。」
「そうじゃありません。いつか、こいしくなることがありますから……。」と、しろいりんごのはなは、しずかにいいました。
たちはわらいました。こんなにじょうぶなはねっているのに、まれたはやしに、いつまでもじっとしている理由りゆうがわからなかったからです。
わたしたちにも故郷こきょうがあります。それは、とお北海ほっかいなかしまです。そこには、どんなにりんごのがたくさんあることか。そのほか、いろいろのくさがあって、香気こうきたか紫色むらさきいろはなや、黄色きいろはなが、はるから、あきにかけてえずいています……。」
 
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