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北海の波にさらわれた蛾(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:北海の波にさらわれた蛾小川未明鈍にぶい砂漠さばくのあちらに、深林しんりんがありましたが、しめっぽい風かぜの吹ふく五月がつ
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北海の波にさらわれた蛾

小川未明


鈍にぶい砂漠さばくのあちらに、深林しんりんがありましたが、しめっぽい風かぜの吹ふく五月がつごろのこと、その中なかから、おびただしい白しろい蛾がが発生はっせいしました。
一時じ、ときならぬ花はなびらの、風かぜに吹ふかれたごとく、木々きぎの枝葉えだはに蛾ががとまっていたのです。それは、また、ちょうど、降ふりかかった、冷つめたい雪ゆきのようにも見みられました。
しかし、その深林しんりんは、蛾がにとって、あまり好このましくなかった。夏なつにでもなれば、そこにはいろいろの毒草どくそうや、雑草ざっそうに花はなが咲さいたであろうけれど、この時分じぶんには、まだ花はなが少すくなかったからです。
ある日ひのこと、蛾がの仲間なかまが、外そとから林はやしに帰かえってくると、おおぜいに喜よろこばしい知しらせをもたらしたのでした。
「ここから、あちらに見みえる丘おかを越こしてゆくと、いま、りんごの花盛はなざかりです。それは、いい香においがしています。」といいました。
この知しらせは、たちまち、蛾がぜんたいに知しれわたりました。
「それなら、私わたしたちは、この陰気いんきな森もりの中なかから、その明あかるいりんごばたけに、移うつろうじゃありませんか……。」
外そとから、知しらせをもたらした一群ぐんの蛾がが道案内みちあんないとなりました。そして、そのあとからみんながいっしょにつづいて飛とび立たったのであります。
「さあ、出でかけましょう。」
一群ぐんの蛾がが、花はなびらを振ふりまいたように、空そらを飛とび舞まったのです。つづいて蛾がの大群たいぐんが大空おおぞらをかすめて、先さきへ飛とんでいった、蛾がの群むれのあとにつづきました。
しかし、こんなに、みんながこの深林しんりんを見捨みすてて、出発しゅっぱつした後あとにも、二十や、三十の蛾がは、みんなといっしょにゆかずにあとにとどまりました。
「私わたしたちは、ここで生うまれたのだ。ここで暮くらしましょう。そのうちに、きっとおもしろい、幸福こうふくなことがあるにちがいない。」と、残のこった蛾がたちは、語かたり合あったのでした。
りんごばたけに移うつった蛾がの群むれは、明あかるい日ひを送おくりました。やわらかな、あたたかな風かぜは、白しろいりんごの花はなの上うえを吹ふいて、昼ひるとなく夜よるとなく香におっています。彼かれらには、この美うつくしい殿堂でんどうが、自分じぶんたちのために造つくられたのではないかと思おもわれたほどでした。
「こんなに、明あかるい、住すみ心地ここちのいい場所ばしょがあるのに、なんで、あの暗くらい林はやしを恋こいしがって、あのひとたちはいっしょにこなかったのだろう。」と、あとに残のこった蛾がを笑わらったのでした。
りんごの木きは、びっくりしました。どこからこんな小ちいさな、白しろい羽虫はむしが飛とんできたろうかと思おもったのです。けれど、べつに、自分じぶんたちに害がいを加くわえるものでないと知しったときに、花はなは、蛾がたちに向むかって話はなしかけました。
「あなたがたは、どこから、ここへ飛とんできたのですか?」
「あちらの暗くらい、深林しんりんの中なかから飛とんできました。もう、あの陰気いんきなところは、いやでたまりません。」
「そうじゃありません。いつか、恋こいしくなることがありますから……。」と、白しろいりんごの花はなは、静しずかにいいました。
蛾がたちは笑わらいました。こんなにじょうぶな羽はねを持もっているのに、生うまれた林はやしに、いつまでもじっとしている理由りゆうがわからなかったからです。
「私わたしたちにも故郷こきょうがあります。それは、遠とおい北海ほっかいの中なかの島しまです。そこには、どんなにりんごの木きがたくさんあることか。そのほか、いろいろの草くさがあって、香気こうきの高たかい紫色むらさきいろの花はなや、黄色きいろの花はなが、春はるから、秋あきにかけて絶たえず咲さいています……。」
 
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