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真昼のお化け(3)

时间: 2022-12-24    进入日语论坛
核心提示:下日曜にちようの午前ごぜんでした。空そらは、曇くもっていました。どうしたことか、このごろは、晴はれたり、降ふったりして、
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日曜にちよう午前ごぜんでした。そらは、くもっていました。どうしたことか、このごろは、れたり、ったりして、おかしな天気てんきがつづくのでした。こう一は、ともだちがあそんでいないかとおもって、赤土あかつちはらっぱへくると、あちらにくろひとあつまって、なにかています。ちょうどえびがちていたあたりでした。
「なにをているのだろうか。」と、かれは、はしっていきました。そこには、自転車じてんしゃめた職人しょくにんふうのおとこもいれば、小僧こぞうさんもいました。またちいさなおんなもいました。けれど、自分じぶんったかおは、一人ひとりもなかったのです。こう一は、なんだかさびしいがしたが、みんなのなかはいってみると、おじいさんがくさうえみせひらいていました。一つのバケツには、かにや、かめのはいっていました。のぞくと、むずむずとかさなりったり、ぶつぶつとあわをいています。の一つのバケツには、それこそ奇妙きみょうなものがはいっていました。くろいろをして、かぶとむしくらいで、あたまおおきく、みじかい、さかなさかなでないものでした。この奇妙きみょうなものは、バケツのなかで、たがいにしくらまんじゅうをして、バケツのまわりにあたまをつけています。
「おじいさん、こんなおおきなおたまがあるものかね?」と、職人しょくにんふうのおとこがきいていました。
「こいつのすんでいるいけは、そうたくさんはありません。これは遠方えんぽうからおくられてきたんですよ。よるになるときます。」
「どういって?」
「ボーオ、ボーオといって、きます。」と、おじいさんがこたえました。
くって、ボーオ、ボーオと、こいつがかい?」
今度こんどは、鳥打帽とりうちぼうをかぶった小僧こぞうさんが、きいて、たまげていました。
「まるで、自動車じどうしゃふえみたいだな。」と、職人しょくにんふうのおとこは、わらいました。
「なに、薬品やくひんでもまして、おたまをおおきくしたんだろう。」と、小僧こぞうさんが、おじいさんのいったことをけなかったようです。
ちいさなおんなは、大人おとなたちのあいだから、おかっぱあたまして、バケツをながら、
「これ、なまずのでないこと。」といっていました。
「いくら、なまずのあたまおおきいって、こんなおおきいのはない。やはり、これはおたまだ。おたまにちがいねえが、おじいさん、食用しょくようがえるはくというが、これは、そのでないのかね。」と、職人しょくにんふうのおとこは、いったのでした。
おじいさんは、きせるに煙草たばこをつめて、マッチでをつけていながら、それには、こたえないで、
「なにしろめずらしいもんでさあ。ぼっちゃんたちは、かにや、かめのには、きましてね。」と、おじいさんはいったのです。
こう一は、はやくおうちかえって、おかあさんにおかねをもらってこようとおもいました。
「このおたまだけは、どうしてもわなければならないものだ。」と、こころなかで、さけびました。おじいさんは、一ぴき五せんるのだけれど、きょうは特別とくべつに三せんけておくといいました。かれは、このあいだおとうさんから、お小使こづかいをもらったのを大事だいじにしておけばよかったと後悔こうかいしたのです。バッチンをしたり、花火はなびったりして、みんな使つかってしまったのでした。どういって、おかあさんに、ねだったらいいだろうかとかんがえながら、んでかえりました。おかあさんのかおると、
「ねえ、おかあさん、くおたまってありますか?」
いきなりこう一は、質問しつもんはっしました。ふいに、こんな質問しつもんをされたので、おかあさんは、
「さあ、くおたまじゃくしなんて、まだ、きいたことがありませんね。」と、ついはなしにつりこまれて、なんでこんなことをいったのからずに、おっしゃいました。
「それが、おかあさんあるんですよ。れると、ボーオ、ボーオって、くというのです。」
こう一は、自分じぶんおどろいたといわぬばかりに、をまるくして、おかあさんのかおました。
「なんか、きっとほかのものでしょう、かじかではないんですか。」
いろくろで、あたまおおきくて、がちょっぴりついているんです。それは、かわいいのですよ。」こう一は、いいました。
「まあ、気味きみわるいこと、おたまじゃくしのおけみたいなのね。」と、おかあさんは、かわいいどころか、ぞっとするように、おっしゃいました。
「一ぴき三せんけておくって、ねえ、ってよ。」
こう一は、おかあさんがめずらしいといってくださらなかったので、おおいにてがはずれたのです。
「どこへ、そんなものをりにきたんですか、うちってこられるとこまりますね。」
「ちっともこわくなんかないんだよ。ただ、くおたまなんだもの。」
かれは、無理むりにも、おかあさんに承知しょうちしていただいて、おかねをもらわなければなりませんでした。それで、いえうちをおかあさんのあとについてあるきました。そして、やっと三びきうほどのおかねをいただいたとき、かれは、どんなにうれしかったかしれない。だが、うんわるあめしてきました。
こまったなあ、おじいさんは、どっかへいってしまうだろうな。」と、こう一は、をもんでいたのであります。
「このあめなかを、いつまではらっぱにいられるものですか。」と、おかあさんは、おかしそうにおっしゃいましたが、あまりこう一が落胆らくたんするので、あとでかわいそうになって、
「じきに、このあめがりますよ。」と、やさしく、いたわるように、いわれました。しかし、おひるのごはんべてしまっても、まだあめはやみそうもありませんでした。もうおじいさんは、とっくに、どこへかいってしまったものとあきらめなければならなかったのです。
晩方ばんがたになって、やっとあめれて、そらあかるくなりました。ちょうど、その時分じぶんでした。
「おたまがきた!」とさけんで、どこかのが、いえまえはしってゆきました。こう一は、はっとして、みみましました。
「あの、おじいさんがきたのだ!」
かれは、すぐにうちからしました。そして、子供こどもはしっていった方角ほうがくましたが、なんらそれらしい人影ひとかげもありません。あちらの煙突えんとつのいただきに、青空あおぞらて、そのしたのぬれてひかみち人々ひとびとが、いきいきとしたかおつきをしてくのでした。
「おたまは、どこへきたんだろうな。」と、こう一はしばらく往来おうらいっていました。そこへ、おからがって、かお白粉おしろいしろにつけたかねさんが、ながいたもとの着物きものをひらひらさして、横道よこみちから、てきました。
こう一さん、ばんにチンドン行列ぎょうれつがあってよ。」と、らせました。
「どこに?」
青物市場あおものいちばまえに、もうじきはじまるわ。」
かねさんは、それをにいくらしいのです。こう一は、市場いちばほうると、チン、チン、ジャン、ジャン、というおとがきこえてくるようながしました。おたまのことは、わすれられないけれど、つい、自分じぶんもかねさんといっしょにチンドン行列ぎょうれつになって、みちのくぼみのみずたまりをけながら、二人ふたりは、まちほうかってあるいたのでした。
くる! くる! くる! いろんなようすをしたチンドンが……はたて、くろ山高帽やまたかぼうをかぶってくるもの、兵隊帽子へいたいぼうしにゴムながをはいてくるもの、あか頭巾ずきんをかぶって、行燈あんどんをしょってくるもの、燕尾服えんびふくて、かね太鼓たいこをたたいてくるもの……。
さきのが、かぶとむし、つぎは、さいかち、そのつぎは、えび、そのつぎが、ボーオ、ボーオとくおたま、……こう一のには、みんなむしになってえたのであります。
もう、両側りょうがわみせには、燈火あかりがついて、大空おおぞらは、紫水晶むらさきすいしょうのようにくらくなっていました。
こう一は、かねさんに、昼間ひるまたおたまのはなしをすると、
「そんな、おたまなんかないわ。」と、かねさんは、すげなくいいました。
「あの、おじいさんから、おたまをっていたらなあ。」と、こう一は、残念ざんねんでなりません。
「かねさんさえしんじないのだから、きょうのことをゆうちゃんにはなしたら、ゆうちゃんも、きっと、そんなおたまはないというだろう。そして、こうちゃんは、またみょうなゆめたといってわらうだろう……。」
そうかんがえると、こう一は、たよりなく、さびしかったのでした。そして、このなかには、自分じぶんにだけしんじられて、ひとには、どうしてもわからない、不思議ふしぎなことがあるものだということを、かれは、しみじみとかんじたのでありました。
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