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緑色の時計_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:緑色の時計小川未明おじさんの髪かみは、いつもきれいでした。そして、花畑はなばたけでも通とおってきたように、着物きものは、
(单词翻译:双击或拖选)
 

三


また、あるところに、年としの若わかい男おとこがありましたが、毎晩まいばんのように、海岸かいがんの岩いわの上うえへきては、海うみの中なかから起おこる、かすかな笛ふえの音ねを聞きいたのでありました。海うみの中なかには、人魚にんぎょというものがすんでいるということだが、その男おとこは、この笛ふえを人魚にんぎょが吹ふくのでないかとさえ思おもったのです。
「なんという、いい笛ふえの音ねだろう。」と、彼かれは、夜よの更ふけるのも知しらずに、その笛ふえの音ねに聞ききとれていました。月つきのいい晩ばんには、その笛ふえの音ねは近ちかくに聞きこえてきました。曇くもった夜よには、その笛ふえの音ねは遠とおくになって聞きかれました。そして、あらしの晩ばんには、まったく聞きこえないことすらもあったのです。
ある夜よ、彼かれは、いつものごとく岩いわの上うえにたたずんで耳みみを傾かたむけていました。明あかるいよい月夜つきよなのにもかかわらず、笛ふえの音ねがきこえてきませんでした。どうしたのだろうと、彼かれは思おもっていました。そして、ただ聞きこえるものは、打うち寄よせる波なみのひびきだけであって、笛ふえの音ねはきこえてきませんでした。おそらく、それは永久えいきゅうに聞きかれないもののようにすら、なんとなく思おもわれたのであります。
このとき、砂すなの中なかにうずもれている光ひかったものに、彼かれの目めはとまりました。海うみの中なかから、波なみがそこに打うち上あげたものでした。彼かれは、それがなんだろうと思おもって拾ひろい上あげると、金色きんいろのかぎでありました。このかぎが浜はまに上あがった日ひから、笛ふえの音ねのやんだことを不思議ふしぎとも思おもいました。もしや、人魚にんぎょがこのかぎを自分じぶんに授さずけてくれて、なにかまだこの世よに発見はっけんせられない、隠かくされた箱はこを開ひらかせるためではないかと考かんがえました。彼かれは、そのかぎを持もって家うちに帰かえりました。
三人にんの男おとこは、べつべつにかぎを持もって、この世よの中なかに隠かくされている宝たからの箱はこを探さがして歩あるいたのであります。このうわさは、いつしか人々ひとびとの口くちの端はしにも上のぼりました。そして、三人にんの男おとこが、ついにあるとき、あるところで落おちあって、自分じぶんの持もっているおのおののかぎを出だしてみると、三つはまったく同おなじかぎであることを知しりました。
「どうして、こう同おなじものが三つあるのだろうか。」と、一人ひとりの青年せいねんは怪あやしみました。
「きっと、三つのかぎが、三つとも見みつかるものでない。その中なかの一つが、この世よの中なかに残のこればいいと、箱はこの主ぬしは思おもったにちがいない。」と、他たの若者わかものは答こたえました。
「いや、三つのかぎの中なかで、だれかそのかぎを拾ひろって、いちばん早はやく箱はこを開あけたものに、その箱はこの中なかの宝たからをやるということではなかろうか。」と、年としの若わかい男おとこがいいました。
「きっと、その箱はこの中なかには、宝たからがはいっているにちがいない。」
「私わたしも、そう思おもう。」
「あるいは、私わたしたちの思おもっているような宝物たからものではないかもしれない。」
三人にんの男おとこは、思おもい思おもいのことをいいました。しかし、その宝たからのはいっている箱はこは、どこにあるものか、まったく見当けんとうすらつかなかったのであります。
「私わたしは、このかぎを昔むかしの城跡しろあとから見みつけ出だしたのだから、昔むかしのものにちがいないと思おもう。」と、一人ひとりがいいますと、
「しかし、私わたしは、わしの足あしに結むすびつけられているのを取とったのだから、そんなに昔むかしのものであるはずがなかろう。」と、一人ひとりはいいました。
三人にんは、このかぎを、都みやこに持もって出でて、ある学者がくしゃに見みせて判断はんだんをしてもらうことにしたのであります。
学者がくしゃは、子細しさいに見みてこういいました。
「このかぎのかかる黄金こがねの箱はこは、幾年前いくねんまえか土つちの中なかから掘ほり出だされて、いま博物館はくぶつかんに収おさめてあります。しかし、私わたしの考かんがえでは、その中なかになにもはいっているようすがなかった。とにかく、これから博物館はくぶつかんへごいっしょにまいりまして調しらべてみましょう。」
三人にんは、学者がくしゃの言葉ことばを聞きいて失望しつぼうしました。けれど、あるいは、この箱はこの中なかに、なにかはいっていはしないかという一筋ひとすじの希望きぼうを持もちながら、出でかけてゆきました。
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