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港に着いた黒んぼ(3)

时间: 2022-12-25    进入日语论坛
核心提示:白鳥はくちょうは、その目めに見みえない細ほそい糸いとの、切きれては、また、つづくような、悲かなしい音色ねいろがどこから聞
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白鳥はくちょうは、そのえないほそいとの、れては、また、つづくような、かなしい音色ねいろがどこからこえてくるかとつばさをゆるやかにきざんで、しばらくはよるそらをまわっていましたが、やがて、広場ひろばからこることをりました。白鳥はくちょうは、注意深ちゅういぶかくその広場ひろばりたのであります。そして、そこに、一人ひとり少年しょうねんくさうえにすわって、ふえいているのをました。
白鳥はくちょうは、少年しょうねんちかづきました。
「どうして、こんなところに、たった一人ひとりふえいているのですか。」とたずねました。
盲目めくら少年しょうねんは、やさしいこえで、だれかこうしんせつにいてくれましたので、少年しょうねんは、あね自分じぶんをここにいて、どこへかいってしまったことをありのままにげました。
「ほんとうに、かわいそうに。わたしが、ねえさんにかわってめんどうをてあげます。わたしは、子供こどもをなくした白鳥はくちょうです。これから、あちらのとおくにかえろうとおもっています。二人ふたりは、みなみくにへいって、なみおだやかな岸辺きしべふえいたり、おどったりしておくりましょう。わたしは、いまあなたをわたしとおなじしろとり姿すがたにしてあげます。うみえ、やまえてゆくのですから……。」と、白鳥はくちょうはいいました。
ついに、盲目めくら少年しょうねんは、しろとりとなりました。よるのうちに、二白鳥はくちょうは、このさびしい、くら広場ひろばからびたって、ほんのりとあかるく、そらめたみなと見下みおろしながら、そのうえぎて、とおくいずこへとなく、ってしまったのであります。あとには、そらほしかがやいていました。大地だいちくろ湿しめって、草木くさきおとなくねむっていました。
あねは、それから程経ほどへて、大尽だいじん屋敷やしきからもどってきました。おもったより、たいへんに時間じかんがたったので、おとうとはどうしたろうと心配しんぱいしてきたのであります。けれど、そこには、おとうと姿すがたえませんでした。どこをたずねてもえませんでした。ほしひかりが、かすかにうえらしています。そこには、いままではいらなかった月見草つきみそうが、かわいらしいはなひらいていました。そして、これもいままでなかった、あねあお着物きもののえりに、宝石ほうせきほしひかりられてかがやいていました。
くるから、あねは、狂人きちがいのようになって、すはだしでみなと町々まちまちあるいて、おとうとさがしました。
つきひかりが、しっとりと絹糸きぬいとのように、そらしたみなと町々まちまち屋根やねらしています。そこの、果物屋くだものやには、店頭みせさきに、とおくのしまからふねんでおくられてきた、果物くだものがならんでいました。それらの果物くだものうえにも、つきひかりちるときに、果物くだものは、はかないかおりをたてていました。また、酒場バーでは、いろいろの人々ひとびとあつまって、うたをうたったり、さけんだりしてわらっていました。その店頭みせさきのガラスにも、つきひかりはさしています。また、みなとにとまっているふねはたれている、ほばしらのうえにもつきひかりたっています。なみは、むかしからの、物憂ものう調子ちょうしで、はませてはかえしていました。
あねは、あてもなくそれらの景色けしきをながめ、かなしみにしずみながら、おとうとをさがしていました。けれど、おとうとは、どこへいったのかわかりませんでした。
にち、このみなと外国がいこくから一そうのふねはいってきました。やがて、いろいろなふうをした人々ひとびとが、みなとおかへうれしそうにがってきました。なんでも、みなみほうからきたので、人々ひとびと姿すがたかるやかに、かおけて、には、つるでんだかごをぶらさげていました。それらのれのうちに、なれない、小人こびとのようにひくい、くろんぼが一人ひとりじっていました。
くろんぼは、日当ひあたりのみちあるいて、あたりを物珍ものめずらしそうに、きょろきょろとながめながらやってきますと、ふと、町角まちかどのところで、うすあお着物きものをきたむすめあいました。むすめくろんぼを、物珍ものめずらしそうにかえりますと、くろんぼはまって、不思議ふしぎそうに、むすめかおつめていましたが、やがて近寄ちかよってまいりました。
「あなたは、みなみしまで、うたをうたっていたむすめさんではありませんか。いつ、こちらにこられたのですか。わたしは、あちらのしまをたつまえに、あなたを、しまましたはずですが。」と、くろんぼはいいました。
あねは、不意ふいいかけられたのでびっくりして、
「いえ、わたしはみなみしまにいたことはありません。それはきっと人違ひとちがいです。」とこたえました。
「いや、人違ひとちがいでない。まったくあなたでした。水色みずいろ着物きものをきて、盲目めくらとおばかりになる、おとこふえ調子ちょうしわせて、うたをうたっておどっていたのは、たしかにあなたです。」と、くろんぼはうたがぶかつきで、むすめをながめながらいいました。
あねは、これをくと、さらにびっくりしました。
とおばかりのおとこふえいている? そして、その子供こども盲目めくらなんですか?」
「それは、しまでたいした評判ひょうばんでした。むすめさんがうつくしいので、しまおうさまが、あるきん輿こしってむかえにこられたけれど、むすめおとうとがかわいそうだといって、おことわりしてゆきませんでした。そのしまには、白鳥はくちょうがたくさんすんでいますが、二人ふたりふえいたり、おどったりしている海岸かいがんには、ことにたくさんな白鳥はくちょうがいて、夕暮ゆうぐがたそらっているときは、それはみごとであります。」と、くろんぼはこたえて、それなら、やはり、このむすめ人違ひとちがいかというようなかおつきをしていました。
「ああ、わたしは、どうしたらいいだろう。」と、あねは、自分じぶんながかみ両手りょうてでもんでかなしみました。
「もう一人ひとり、このなかには、自分じぶんというものがあって、その自分じぶんは、わたしよりも、もっとしんせつな、もっと善良ぜんりょう自分じぶんなのであろう。その自分じぶんが、おとうとれていってしまったのだ。」と、あねむねけそうになって、後悔こうかいしました。
「そのしまというのは、どこなんですか。わたしは、どうかしていってみたい。」と、あねはいいました。
くろんぼは、このとき、みなとほうゆびさしながら、
「ずっと、いくとなくとおいところに、銀色ぎんいろうみがあります。それをわたっておかがり、ゆきしろひかった、たか山々やまやまかさなっている、そのやまえてゆくので、それは、容易よういにゆけるところでない。」とこたえました。
このとき、なつれかかって、うみうえいろどられ、そらは、昨日きのうのようにえてられました。
 
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