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雪の上のおじいさん(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:雪の上のおじいさん小川未明ある村むらに、人ひとのよいおじいさんがありました。ある日ひのこと、おじいさんは、用事ようじがあ
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雪の上のおじいさん

小川未明


ある村むらに、人ひとのよいおじいさんがありました。ある日ひのこと、おじいさんは、用事ようじがあって、町まちへ出でかけました。もう、長ながい間あいだ、おじいさんは、町まちに出でたことがありませんでした。しかし、どうしてもいかなければならない用事ようじがありましたので、つえをついて、自分じぶんの家いえを出でました。
おじいさんは、幾いくつかの林はやしのあいだを通とおり、また広々ひろびろとした野原のはらを過すぎました。小鳥ことりが木きのこずえに止とまって鳴ないていました。おじいさんは、おりおりつえをとめて休やすみました。もう、あたりの圃はたけはさびしく枯かれていました。そして、遠とおい、高たかい山々やまやまには、雪ゆきがきていました。おじいさんは早はやく町まちへいって、用事ようじをすまして帰かえろうと思おもいました。
村むらから、町まちまでは、五里りあまりも隔へだたっていました。その間あいだは、さびしい道みちで、おじいさんは、あまり知しっている人ひとたちにも出であいませんでした。
やっと、おじいさんは、昼ひるすこし過すぎたころ、その町まちに入はいりました。しばらくきてみなかった間あいだに、町まちのようすもだいぶ変かわっていました。おじいさんは、右みぎを見み、左ひだりをながめたりして、驚おどろいていました。それもそのはず、おじいさんは、めったに村むらから出でたことがなく、一日にち、村むらの中なかで働はたらいていたからであります。
「私わたしが、くわを持もって、毎日まいにち、同おなじ圃はたけを耕たがやしている間まに、町まちはこんなに変かわったのか、そして、この私わたしまでが、こんなに年としをとってしまった。」と、おじいさんは、独ひとりため息いきをもらしていたのです。
「私わたしは、遊あそびに町まちへ出でたのでない。早はやく用事ようじをすまして、暗くらくならないうちに、村むらまで帰かえらなければならぬ。」と、おじいさんは思おもいました。
そこで自分じぶんのたずねる場所ばしょをさがしていますと、公園こうえんの入いり口ぐちに出でました。
公園こうえんには、青々あおあおとした木きがしげっていました。人々ひとびとが忙いそがしそうに、その前まえを通とおり抜ぬけて、あちらの方ほうへいってしまうものもあれば、また公園こうえんの中なかへ入はいってくるもの、また、そこから出でてゆくものなどが見みえました。しかし、その人々ひとびとは、みんな自分じぶんのことばかり考かんがえて、だれも、その入いり口ぐちのそばの木きの下したに立たって、しくしくと泣ないている子供こどものあることに気きづきませんでした。またそれに気きがついても、知しらぬ顔かおをしてゆくものばかりでありました。
このおじいさんは、しんせつな、人情深にんじょうぶかいおじいさんで、村むらにいるときも、近所きんじょの子供こどもらから慕したわれているほどでありましたから、すぐに、その子供こどもの泣ないているのが目めにつきました。
「なんで、あの子こは泣ないているのだろう。」と、おじいさんは思おもいました。けれど、おじいさんは、用事ようじを急いそいでいました。そして、早はやく用ようをたして、遠とおい自分じぶんの村むらに帰かえらなければなりませんのでした。いまは、それどころでないと思おもったのでしょう。その子供こどものことが気きにかかりながら、そこを通とおり過すぎてしまいました。
しかし、いいおじいさんでありましたから、すぐに、その子供こどものことを忘わすれてしまうことができませんでした。いつまでも、子供こどもの姿すがたが目めに残のこっていました。
「あの子こは、なんで泣ないていたのだろう。母親ははおやにでもまぐれたのか、それとも、友ともだちを見失みうしなったのか。よくそばへいって、聞きいてみればよかった。」と、おじいさんは、日ひごろ、やさしい心こころにも似にず、情つれなく、そこを通とおり過すぎてしまったのを後悔こうかいいたしました。
「それは、そうと、私わたしのたずねていくところがわからない。」と、おじいさんは、あちらこちらと、まごまごしていました。そして、おじいさんは、昔むかし、いったことのある場所ばしょを忘わすれてしまって、幾人いくにんとなくすれ違ちがった人々ひとびとに聞きいていました。
「あのあたりで聞きいてごらんなさい。」などといいのこして、さっさといってしまうものばかりでありました。
おじいさんは、うろうろしているうちに、またさびしいところへ出でてしまいました。そこは、先刻さっきその入いり口ぐちの前まえを過すぎた、同おなじ公園こうえんの裏手うらてになっていました。青々あおあおとした常磐木ときわぎが、うす曇ぐもった空そらに、風かぜに吹ふかれて、さやさやと葉はずれがしています。弱よわい日ひの光ひかりは、物悲ものかなしそうに、下したの木きや、建物たてものや、その他たのすべてのものの上うえを照てらしていました。
「また、公園こうえんのところへ出でてしまったか。」と、おじいさんは、もどかしそうにいいました。
すると、すぐ目先めさきに、鉄てつのさくに寄よりかかって、さっき見みた六つばかりの男おとこの子こが、しくしく泣ないていました。これを見みると、おじいさんはびっくりしてしまいました。
おじいさんは、なにもかも忘わすれてしまいました。そして、すぐに泣ないている子供こどものそばに近寄ちかよりました。
「坊ぼうは、どうして泣ないているのだ。」と、おじいさんは、子供こどもの頭あたまをなでながら聞ききました。
「お家うちへ帰かえりたい。」と、子供こどもは、ただいって泣ないているばかりでした。
「坊ぼうやのお家うちはどこだか? 私わたしがつれていってやるだ。」と、おじいさんは田舎言葉いなかことばでいいました。
しかし、子供こどもは、自分じぶんの家いえのある町まちの名なをよく覚おぼえていませんでした。それとも、悲かなしさが胸むねいっぱいで、問とわれてもすぐには、頭あたまの中なかに思おもい浮うかばなかったものか、
「お家うちへ帰かえりたい。」と、ただ、こういって泣ないているばかりでありました。
おじいさんは、ほんとうに困こまってしまいました。それにしても、さっきから、この子供こどもはこの公園こうえんのあたりで泣ないているのに、だれも、いままで、しんせつにたずねて、家うちへつれていってやろうというものもない。なんという町まちの人ひとたちは、薄情はくじょうなものばかりだろう。それほど、なにか忙いそがしい仕事しごとがあるのかと、おじいさんは不思議ふしぎに感かんじたのでした。
「お家うちへ帰かえりたい。」
子供こどもは、こういって泣なきつづけていました。
「ああ、もう泣なかんでいい。私わたしが、坊ぼうやをつれていってやる。」と、おじいさんは、子供こどもの手てを引ひいて、そこの鉄てつさくから離はなれました。
「坊ぼうや、困こまったな。お家うちのある町まちがわからなくては。」と、おじいさんは子供こどもをいたわりながら、小ちいさな手てを引ひいて歩あるいてきました。すると、あちらに、風船球ふうせんだま売うりがいて、糸いとの先さきに、赤あかいのや、紫むらさきのをつけて、いくつも空そらに飛とばしていました。
「どれ、坊ぼうやに、風船球ふうせんだまをひとつ買かってやろう。」と、おじいさんはいいました。
子供こどもは、見みると、ほしくて、ほしくてたまらない、紫むらさきのや、赤あかいのが、風かぜに吹ふかれて浮うかんでいましたので、泣なくのをやめて、ぼんやりと風船球ふうせんだまに見みとれていました。
「赤あかいのがいいか、紫むらさきのがいいか。」と、おじいさんは聞きいていました。
「赤あかいのがいいの。」と、子供こどもは答こたえた。
泣ないているのに、だれも、いままで、しんせつにたずねて、家うちへつれていってやろうというものもない。なんという町まちの人ひとたちは、薄情はくじょうなものばかりだろう。それほど、なにか忙いそがしい仕事しごとがあるのかと、おじいさんは不思議ふしぎに感かんじたのでした。
「お家うちへ帰かえりたい。」
子供こどもは、こういって泣なきつづけていました。
「ああ、もう泣なかんでいい。私わたしが、坊ぼうやをつれていってやる。」と、おじいさんは、子供こどもの手てを引ひいて、そこの鉄てつさくから離はなれました。
「坊ぼうや、困こまったな。お家うちのある町まちがわからなくては。」と、おじいさんは子供こどもをいたわりながら、小ちいさな手てを引ひいて歩あるいてきました。すると、あちらに、風船球ふうせんだま売うりがいて、糸いとの先さきに、赤あかいのや、紫むらさきのをつけて、いくつも空そらに飛とばしていました。
「どれ、坊ぼうやに、風船球ふうせんだまをひとつ買かってやろう。」と、おじいさんはいいました。
子供こどもは、見みると、ほしくて、ほしくてたまらない、紫むらさきのや、赤あかいのが、風かぜに吹ふかれて浮うかんでいましたので、泣なくのをやめて、ぼんやりと風船球ふうせんだまに見みとれていました。
「赤あかいのがいいか、紫むらさきのがいいか。」と、おじいさんは聞きいていました。
「赤あかいのがいいの。」と、子供こどもは答こたえた。
「風船球屋ふうせんだまやさん、その赤あかいのをおくれ。」といって、おじいさんは、懐ふところから大おおきな布ぬので縫ぬった財布さいふを出だして、赤あかいのを買かってくれました。
「飛とばさないように、しっかり持もっていくのだ。」と、おじいさんはいいました。
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