それから半世紀を経たというのに、この”古典的事例”がその何倍もの規模で繰り返されてしまったのは、どうしたことだろう。 被災地では今ようやく犠牲者の遺体の確認が始まったばかりである。先進諸国の自然災害で感染症が集団発生したという話も他にあまり聞かない。いつの世も、災害はその文明の隠れた実相を明るみに出す。被災直後の略奪や無政府状態は、人々がふだんクラス平和な秩序の底にわだかまっていたものを解き放ってしまった。市民の間の貧富の差が、こと災害下においては生と死を分かつという残酷な現実も浮き彫りにされた。(中略)
歴史を振り返れば、ヨーロッパなど旧世界の貧困や政治的抑圧から避難してきた人々によって築かれたアメリカである。困窮し、虐げられた人々の避難所としての文明の初心をどうか忘れないでほしい。
(「ハリケーン」2005年9月9日付け毎日新聞「余禄」による)
1、「この”古典的事例”」とは何か。
①経済的貧困や人種差別による社会的格差が災害の被害の拡大を呼んだこと。
②災害、抗争、悪疫の繰り返しがアメリカの繁栄をもたらしたこと。
③被災地で犠牲者の遺体の確認が始まったこと。
④アメリカは貧困や政治的抑圧から避難してきた人々によって築かれたこと。
2、「災害はその文明の隠れた実相を明るみに出す」とあるが、この文章で言う実相に最も近い例を一つ選びなさい。
①警察官が道に倒れている市民を助けてあげている。
②市民が互いに協力して治安の維持に取り組んでいる。
③スーパーや家電量販店などでお金も払わずにものを持っていく。
④金持ちの人が貧しい人たちに生活必需品を配っている。
3、「避難所」とはどういうことか。
①アフリカ出身の人々がアメリカに移住したこと。
②ハリケーンの被害を受けた黒人グループがヨーロッパに避難したこと。
③生活に困ったり、差別を受けたり、抑圧される人々がアメリカに避難していること。
④ヨーロッパの自然災害で感染された人がアメリカに避難していること。