こうした荒っぽい事件がある一方で、目立たないもの、静かに立てこもる、「引きこもり事件」が全国の至るところで進行中です。似て非なる両者の違いは何でしょうか?立てこもりの原因を調べてみると、いずれも現状に不満があることが分かります。
東京の事件では、暴力団の先輩からの要求がきつくてやってゆけないと感じて先輩に銃を発射。その後の捜査中に立てこもっています。
一方愛知では別れたままではやってゆけないと感じた結果の立てこもりなのでしょうか?そういう意味では引きこもりの方も、多くは学校や勤務先など、社会の中でやってゆけない、ということが原因になっています。
しばらくは不満を持ったままやってみるものの、やがて我慢が限界を超えて、ついに行動に出る時がやってきます。立てこもりは銃を持ったり人質をとったりと、それだけで十分に脅威で、しかも法律に違反していることから、ニュースになって全国に流れ、警察や報道陣も大勢やってくるので、逮捕されるのは時間の問題です。
一方引きこもりのほうは、これもしばらくは学校や勤務先などで我慢を続けていますが、やがて何かをきっかけにして、行動に出ます。家の中に閉じこもる、という行動です。しかし引きこもりの場合は、それだけでは法律に違反しておらず、多くの場合は脅威でもないので、警察沙汰にはなりません。だから人知れず長いことこの状態が続くことになります。
両者とも現状を変えたいという欲求が発端でありながら、立てこもりはそれが犯罪であるゆえに公権力が働いて、ほぼ自動的に刑務所に送ってくれます。そこでは頭を冷やす機会になるかもしれず、そうはならずに今より自体が悪化したにしても、強制的に現状を変えることにはなります。
一方引きこもりは、なかにはたとえば家族に対して暴力事件などを起こし、警察の厄介になる人もいますが、たいていは事件にならないため、公権力は働きません。引きこもりという状態から抜け出すためには、家族が変わるか、自分が変わるしかありません。しかし、自分が変わった結果その状態から抜け出すほうが、時間はかかっても結局は近道のような気がします。
(2007年5月19日心理コラム「立てこもりと引きこもりの違い」による)
1、「立てこもり」の説明として本文の内容と一致しないものを一つ選びなさい。
①銃を持ったり人質をとったりと脅威であり、しかも法律に違反している。
②家に閉じこもるだけで法律に違反しておらず、多くの場合は脅威でもない。
③ニュースになって全国に流れるため、逮捕されるのは時間の問題である。
④社会の中でやってゆけないと感じたことが発端となっての行動である。
2、次のうち「引きこもり」「立てこもり」の共通の原因として、間違っているものはどれか。
①現状に対する不満。
②現状を変えたいという欲求。
③学校や勤務先など、社会の中でやってゆけないということ。
④暴力団の先輩からの欲求がきつくてやってゆけないということ。
3、次のうち、本文の内容と合うものと一つ選びなさい。
①引きこもりも立てこもりも学校教育に重大な問題がある。
②引きこもりも立てこもりも現状を変えたいという欲求が原因になっている。
③立てこもりは事件にはなりにくく、公権力が働くことは少ない。
④引きこもりは法律に違反しているため、警察に厄介になる場合が多い。
4、引きこもりの状態から抜け出すためのすすめとして、筆者の考えに最も近いものはどれか。
①家族が変わった結果、その状態から抜け出すほうがいい。
②自らが変わって、その状態から抜け出す方がいい。
③家族も自分も同時に変わらなければ、その状態から抜け出せない。
④刑務所に入って頭を冷やして、もう一度やり直したほうがいい。