文字・活字文化振興法案である。与野党の286人からなる超党派の議員連盟がまとめた。法案では、読み書きだけでなく、伝える力や調べる力なども含めて「言語力」と呼ぶ。言語力を育むことで、心豊かな生活を楽しめるようにする。そんな目的を掲げて、図書館の充実などを国と自治体に求めている。
言葉の力をつけるのをわざわざ法律で定める必要があるのか。そんな疑問を抱く人がいるかもしれない。しかし、さまざまな学力調査が示すように、児童や生徒の読解力や表現力が低下している。大学生の採用試験で企業が最も重視するのは、コミュニケーション能力である。伝える力や聞く力の乏しい学生が少なくないからだ。
言葉の力をつけるには、言葉と出会う機会を増やすにかぎる。それには本を読むことが欠かせない。全国学校図書館協議会の0④年度の調査では、小学生で7%、中学生で19%、高校生では43%に昇った。最悪だったころに比べれば、本を読まない中高生はやや減っている。しかし、進学するにつれて、読書から遠ざかる傾向は変わっていない。大学でも、本を読む学生と読まない学生の二極化が進んでいる。
今はインターネットでさまざまな情報が得られる時代だ。だからといって、読書の意義が薄れたわけではない。言葉の使い方を知り、漢字や慣用句を覚える。論旨を読み取り、展開の仕方を学ぶ。文科や歴史を学び、思考を伸ばす。想像力を磨く。そうしたことに、読書ほど手軽で効率的な方法はない。
昨年2月の文化審議会は、急速に変化していく今後の社会では、今まで以上に国語力が必要だと答申した。そのために、「自ら本に手を伸ばす子供」を育てようと提言している。すでに、いくつかの学校図書館で母親らが児童への「読み聞かせ」を続けている。図書の整理や受付を手伝うグループも多い。家庭で要らなくなった本を集めて学校に配っている自治体もある。
本好きの子供を増やす取り組みが、もっと広がってほしい。法案をつくった議員は息長く国や自治体に働きかけ、後押しを続けてもらいたい。言葉の能力の低下というと、大人は若者だけの問題と考えがちだ。しかし、文化庁の世論調査では、年配の人ほど敬語に自信を持っているのに、実際には敬語の使い方を誤っている回答が目立った。「青田買い」などの慣用句でも、50歳以上は若者より間違える人が多かった。
言葉が豊かになれば、人生も楽しくなる。本を読み、辞書を引き、日本語を学び続ける。そんな姿を子供や若い人に見せることも、大人の役割である。
(「言語力やはり読書が大切だ」2005年7月20日付朝日新聞「社説」による)
1、「文字・活字文化振興法案」が作られたきっかけになったのは次のうちどれか。
①企業が大学生の採用試験でコミュニケーション能力を重視するから。
②言語力を育むことで心豊かな生活を楽しむことができるから。
③児童や生徒の読解力や表現力の低下がさまざまな学力調査で示されているから。
④大学で本を読む学生と読まない学生の二極化が進んでいるから。
2、言語力を向上させるために法案ではどんなことを求めているのか。
①漢字や慣用句を覚えさせたり、文化や歴史などを教えること。
②国や自治体は図書館の充実などを図ること。
③本を読む学生と読まない学生をはっきりと区別すること。
④企業の採用試験で、コミュニケーション能力を問うことを義務化すること。
3、この文章で筆者が言いたいことは何か。
①最近はインターネットを通じて多くの情報が得られるようになった。だからわざわざ学校の図書館で本を借りてまで読む必要はない。
②言語力をつけるには読書は不可欠だ。だから国や自治体は接触的に図書館を増やしていくべきだ。
③子供や若者だけでなく、年配の人も言語力低下の傾向をみせている。大人のほうからまず率先して本を読むべきだ。
④年配の人ほど敬語と慣用句などに詳しいから、児童や若者たちに積極的に教えてあげるべきだ。
4、「全国学校図書館協議会」の調査内容として、本文の内容と合っているものはどれか。
①一か月一冊も本を読まない学生は、小中学生でそれぞれ19%以上に昇っている。
②読書から遠ざかっている中高生は、以前よりかなり増えている。
③50歳以上の年配の人は敬語に自信を持っているが、実際は使い方をよく誤っている。
④高学年になるほど、本を読まなくなる傾向は以前と変わらない。