科学文明というものはどういうものかと考えていくと、いつでもより新しく、より効率良く、僕たちの手や足に代わって便利で快適な暮らしを作ってくれるものである。では、文明に対して文化とはどういうものかというと、困ったことに全く反対の性格を持っているのである。つまり、いつでもより古く、より深く、したがって効率が悪く、不便や我慢がいっぱいある。
便利で効率が良い方がいいではないか、古いものよりも新しいものの方がいいではないか、と僕たちは考えるかもしれないが、実はそれが間違いなのだ。なぜか。例えば、私たちは飛行機や新幹線で便利になったけれど、馬の背で旅をする幸福感が失ったのである。環境問題や核兵器のように、行き過ぎた科学文明は凶器となり、人間を滅ぼしてしまう恐れがある。この行き過ぎた科学文明を幸福のために使う力、〔ア)が凶器になる部分を緩やかに穏やかにする力こそが〔イ)なのである。〔ウ)とは本来、科学技術の高さの代わりに深みのあるもの、便利になる代わりにゆっくり考えることなのである。私たちは便利さだけでなく、不便さも大切にし、我慢の力を尊び(注)、人の幸福を考えていくようにしなければならない。
注:尊ぶ: 大事なものとして重んずる。大事にする。「自立の精神を―・ぶべきだ」
問1 ア~ウに入る言葉の組み合わせで正しいのはどれか。
1.ア:文明 イ:文化 ウ:文明 2.ア:文明 イ:文化 ウ:文化
3.ア:文化 イ:文明 ウ:文明 4.ア:文化 イ:文明 ウ:文化
問2 筆者は文化と科学文明の関係についてどのように考えているか。
1.科学文明は生活を便利に快適にするが、人を幸福にする力はない。
2.これからの時代は、文明の便利さよりも文化の不便さが大切になる。
3.科学文明によって生活が豊かになれば、人の心も豊かになる。
4.文化と科学文明は対立する面もあれば、補い合い、共存する面もある。