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三角のあたま02

时间: 2018-03-31    进入日语论坛
核心提示:美女のいる町 だれが言いだしたことか知らないけれど〓日本海側一県おき美人説〓という学説(?)がある。二、三度、聞いたこと
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 美女のいる町
 
 
 
 だれが言いだしたことか知らないけれど〓“日本海側一県おき美人説〓”という学説(?)がある。二、三度、聞いたことがあるから、ある程度流布していることなのだろう。いや、ほんのジョーク、ジョーク、座興として聞いてください。
 
 まず北海道よし。つまり美人の産地である。青森県はダメ。秋田県よし。山形県ダメ。一県おきなのだから……。かくて新潟県よし。富山県ダメ。石川県よし。福井県ダメ。京都府はよし。兵庫県はほんの少し日本海に触れているけれど、なぜかここは京都府と一緒に扱われ、次は鳥取県ダメ、島根県よし、山口県ダメ、福岡県よし、佐賀県ダメ、長崎県よし……日本海はこのへんまで、となる。
 
 兵庫県のあたりで少々インチキがおこなわれたような気配もあるけれど、若干の修正をほどこさないと、うまくいかない。
 
 札幌の町を歩いていると、たしかにきれいな女性によく会う。だから北海道美人説は一応頷《 うなず》ける。混血の歴史もあるし、あれだけ大きければ、きっと美しい人もいるだろう。
 
 秋田美人、新潟美人、京美人、博多美人、長崎美人……世評にあがる美人国はみんなこの区分法に適《かな》っているし、石川県はなにしろ加賀百万石のお膝《ひざ》元《もと》、石川美人という言葉こそあまり聞かないけれど、やんごとないお姫様の末《まつ》裔《えい》もいるだろう。島根美人……これも熟した言葉ではないが、ここは古くから韓《かん》国《こく》との交流が深いところ。そして韓国はまちがいなく美人の多いところである。血筋は連綿と受け継がれているにちがいない。
 
 無理にこじつけたような部分もあるけれど、ほかの県との対比で考えてみれば、当たらずとも遠からず。山口県なんて、これはもう圧倒的に総理大臣をたくさん出しているところだから、このうえ美人まで生みだすと、
 
 ——陰謀ではあるまいか——
 
 あらぬ疑いをかけられるかもしれない。
 
 先日、山形市と秋田市へ行った。
 
 どちらの町も初めてではないけれど、久しぶりの訪問であることはまちがいない。
 
 山形から秋田まで列車を乗り継いで行ったが、二つの町はかなり趣きが異っている。山形市は文字通り山の中にあり、秋田市は海に面している。山形市のほうがずっとひなびている。秋田市のほうが開けている。ビルの高さがちがう。町の明るさがちがう。ことのよしあしを言うのではない。好みを言えば、私は古い家並みを残す、ひなびた町もきらいではない。どこへ行ってもリトル東京ばかりではつまらない。
 
 あらためて地図を調べてみると、山形市は本州のセンターラインよりむしろ右のほうにある。つまり直線距離を計れば日本海より太平洋に近い。山形県が日本海に面した県であることを考えれば、この位置は意外である。それだけ山形市は山の中にあることになる。
 
 この二つの町を見て私はふと〓“日本海側一県おき美人説〓”を思い出し、少し考えた。
 
 ——あの区分法は、県庁所在地がどれだけモダン化しているか、そのことと関係しているのではなかろうか——
 
 住んでいるところが都会らしくなれば、それだけ女性はきれいに見える。本質的な美しさはともかく、都会にいれば化粧もうまくなるし着るもののセンスもよくなる。見かけは都会の人のほうが美しい。
 
 県庁の所在地がどんな町か、都市のモダン化の度あいを考えてみると、まず札幌、これは本当にリトル東京だ。言葉の訛《なま》りが少ないから酒場で酒を飲んでいたりすると、東京にいるような気がする。モダン化は充分に進んでいると言ってよい。
 
 青森市は少々ひなびている。秋田市と山形市についてはすでに述べたし、新潟市は港町らしくモダンな感じに溢《あふ》れている。
 
 富山市は素朴な様子を残しているし、金沢市はみやびの気配を帯びている。福井市はけっして開けていない町ではないけれど、両隣の金沢市や京都市との比較で考えてみれば、やはり田舎っぽい。松江市も洗練されたたたずまいだし、博多は文字通りの大都市、長崎市は異国の文化の受け入れ口であった。
 
 つまり〓“日本海側一県おき美人説〓”は本来的にそこが美人を生む土地かどうかの問題ではなく、日本海側ではたまたま一県おきにモダン化の進んだ都市を中心に持っていて、そこが一見美人ふうの女性を多く町に散らしているにすぎない。後天的に作られた美人であり、町を歩いていて、
 
 ——あっ、美人がいるぞ——
 
 と、目立つだけのことだろう。つまり……目立つかどうかの問題。〓“この県はダメ〓”と言った中にも、隠れた美形がいることは疑いない。
 
 
 
 眼を全国に向け……旅に出ると私はきまって、
 
「この県出身の美女はだれですか」
 
 と、土地の人に尋ねる。女優やタレントのことである。
 
「さあ、だれじゃろう」
 
 即座に答が返って来るかと思いきや、首を傾《かし》げる人が多い。長野県では、
 
「市丸がそうだねえ。〓“天竜下れば〓”を歌ってた……」
 
 などと、相当に古い返事が返って来たりする。市丸姐《ねえ》さんはたしかに一世を風《ふう》靡《び》した美形かもしれないけれど、私だってよくは知らない。
 
 ——もう少し新しい人はいないのかなあ——
 
 と訝《いぶか》ってしまう。
 
 まったくの話、一県に一美人くらいいてもよさそうなものではないか。反応のにぶさを見て、
 
 ——美人てのはどこでとれるのかなあ——
 
 と考え込んでしまった。やはり東京が圧倒的に多いのだろうか。
 
 ここ十年ばかり鼻息が荒いのは熊本県である。タクシーの運転手が私の質問に答えて教えてくれた。
 
「熊本には美人が多いね」
 
「あっ、そうですか」
 
 と私は身を乗り出した。
 
「うん。島田陽子」
 
 これはまちがいなく美しい。異論はあるまい。
 
「なるほど」
 
「斉藤慶子。生まれは宮崎だけど、こっちの学校出てるから」
 
「それはちょっとずるいな」
 
「まだいるよ。宮崎美子」
 
「かわいい感じの人ね」
 
「そう、そう。それからあと、八代亜紀」
 
「はあ」
 
 意見の分かれるところである。
 
「水前寺清子もそうだねえ」
 
「…………」
 
 私はたしか美人について聞いたはずだが……。
 
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