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家族ゲーム03

时间: 2018-03-31    进入日语论坛
核心提示:第三話 ここだけの話「ここだけの話だけれど」 姉の初子の声が廊下を通りぬけ、キッチンまではっきりと聞こえて来る。 ああ、
(单词翻译:双击或拖选)
 第三話 ここだけの話
 
 
「ここだけの話だけれど……」
 姉の初子の声が廊下を通りぬけ、キッチンまではっきりと聞こえて来る。
 ——ああ、またやっている——
 良子は、あげだし豆腐の器に汁を注ぎながら口をとがらせた。
 六角形の深い器。今日、初めて使う。あげだし豆腐のできぐあいも、まずまずだろう。姿よく仕上がったときは、たいてい味もよいものである。
 かますの塩焼きは、すでにテーブルのほうへ運んである。お盆の上に六角の器を三つ載せ、廊下を急いだ。
 初子の話なんか聞きたくもないが、やっぱり気がかりだった。
「こんなものよ。ありあわせで」
 短い廊下を挟んでリビングルームがある。
「いいのよ、いいのよ。良ちゃんも一緒に飲もう」
「ええ」
 良子はすわってビールのグラスをとった。夫の直樹が、
「子どもたちは、まだか」
 と尋ねながらビールを注ぐ。
「今日は子ども会なの」
「遅いのかしら」
「九時頃じゃないの」
「会ってから帰るわ。伯母ちゃんの顔、忘れられちゃうと困るから」
 姉から電話があったのは二時過ぎだった。
「銀座のデパートまで出て来たから、帰りに寄るわ。うちは出張なの」と言う。姉の家は小田原にある。こんな機会でもなければ、そうそう会うこともできない。良子は「いいわよ」と答えた。
 土曜日である。姉が到着するより先に直樹が帰って来た。
「あら、早いのね」
「ああ、たまにはな」
「初子姉さんが遊びに来るって。よかったわ。子どもたちは子ども会だし……」
「寿司でもとって、くつろいだらいいじゃないか」
 自分の姉だから、そう張り切ってご馳走を作ったりはしない。上寿司を三つとり、あとはかますとあげだし豆腐、姉が持って来た野沢菜をそえた。頃あいを見て吸物を出そう。
「もう、おたくはおしまい?」
 と初子が聞く。七割がたは直樹に尋ね、残りの三割が良子のほうへの質問である。
「なにが?」
 見当はついたが、あえて聞き返した。
「お子さん。多いほうがいいわよ」
「二人でたくさん。家計が持たないわよ」
「おたくなんかいいじゃない。ご主人が協力的だから」
 姉のところも子どもは二人である。
「兄弟が多いのは、わるくないけどな」
「そうよ。だから章にもそう言ったんだけどねえー。伸子さんがいやがって」
 と初子は唇を曲げた。
 章というのは、初子の夫の弟である。伸子はその妻である。初子はおせっかいのところがあるから、義弟のところの家族計画にまで口を出すにちがいない。
 ——あ、そうか——
 さっき聞こえた言葉の先がわかった。初子は「ここだけの話だけれど……」と言ったあと、声をひそめて直樹に「章のとこ、子どもを堕ろしたのよ」と告げたにちがいない。そうにきまっている。姉の表情まで浮かんで来る。
 ついこのあいだ、良子も電話口で初子から聞かされたばかりだった。
「ここだけの話だけど……」
 あまり聞きよい話ではない。事情はどうあれ、一つの生命を抹殺した話である。初子は……というより初子の夫は、なにはともあれ自分の弟の家のことなのだから、多少は秘密を知る権利もあろうけれど、それを初子が聞いてあっちこっち見さかいもなくばら撒《ま》かれたんじゃ、たまったものじゃない。
 まったくの話、「ここだけの話だけれど……」は姉の口ぐせだった。これまでに何度聞かされたかわからない。良子は聞いただけで心が曇ってしまう。
 姉の場合は「ここだけの話」が、ここだけで終ることはけっしてない。良子もいちいち立ちあって確かめたわけではないけれど、想像はつく。根はそうわるい人ではないのだが、おしゃべりのくせだけは、なおらない。おそらく当人もどうにもならないのだろう。だれかの秘密を知ってしまうと、どうしても話さずにはいられない。
 話術はうまい。多少の尾ひれをつけ、実におもしろおかしく語る。だから初子がいると、座が明るくなる。笑いが絶えない。今しがたも夫の笑い声が何度もキッチンにまで流れて来た。
 ——私は、ああはできないのよね——
 一方で反発しながらも、良子はコンプレックスを感じてしまう。
「伸子はスタイル自慢だから……体の線が崩れるんですって、子どもを生むと」
「うん」
「そういう話、あんまりしないほうがいいんじゃない」
 良子がやんわりとたしなめた。
「そうね」
「このかます、うまいじゃないか」
 直樹が話題を変えた。
「あげだし豆腐も最高よ。良ちゃん上手だもんねえ。私はまるで駄目。同じ姉妹なのに。両親もよく言うのよね。同じ家で、同じように育てたのに……」
 たしかにそれが良子たちの両親の口ぐせだった。姉は外向的だが、妹はむしろ内向的である。姉は陽気だが、妹のほうは無口で、妙に頑固なところがある。器量も姉のほうが少しいい。姉は人あたりがいいから周囲の受けもわるくない。両親もおそらく初子のほうが扱いやすく、かわいいのではあるまいか。
 ——お姉ちゃんはいい加減なのよ——
 良子としてはそう言いたいが、人間の性格なんて、長短両方の側面を持っているものだ。いい加減だからこそ融通もきく。他人を許せる。良子は誠実ではあるけれど、そのぶんかたくなで、こだわりすぎるところがある。
 両親が「同じように育てたのに……」と言うのは、一方の性格のわるい側面だけをことさらに感じたときである。「あっちはそうじゃないのに」と、そんな不満がこめられている。次の日になれば、昨日ほめたほうの欠点を発見し、また「同じように育てたのに……」と嘆くのである。
「しかし、姉妹ってのは案外ちがうものだね」
 直樹が新しいビールの栓《せん》をぬきながら言う。
 初子の顔はほてっている。良子は少々のビールくらいでは顔に出ない。
「そうなのよ」
 初子は大げさな相槌《あいづち》を打つ。
「会社にちょっと年は取っているんだけど、きれいな人がいてさ」
「ええ……」
「�今度、妹が来ることになりましたから�って言うんで、みんなで期待してたんだ」
「男の人って、すぐそうなんだから。まじめに仕事やってんですかあ」
「だって、そうでしょう。お姉さんは美人だけど、年を取っている。この人の妹さんならどんなにいいかなって、遺伝の法則を信ずる限り、そう思うよ」
「で、どうでした」
「それが……ちがうんだよなあ」
「ひどいの」
「ひどくはないけど、お姉さんとはちがう」
「ぜんぜん似てないんですか」
「いや、そうでもない。似ていることは似ているんだが、肝腎なところがちがう」
「あるんですよねえー、そういうこと。ほら、あなたも知っているでしょう」
 と初子が良子のほうを向く。
「なーに?」
「多賀家さんのご姉妹」
「ええ」
「世田谷にいたころ、うちの近所にとてもすてきなご姉妹が住んでいらしたの。以前は子爵か伯爵だったらしいのよ。どっちが偉いのかしら」
「たしか公、侯、伯、子、男て言うんじゃないかな」
「あら、どういうこと」
「一番偉いのが、ハムと書く公爵、それからそうろうみたいな侯爵。以下伯爵、子爵、男爵の順だよ、たしか」
「直樹さんは、もの知りだから」
「そんなこともないけど」
「とにかく多賀家さんとこのお嬢さん二人は、抜群にきれいで、上品で、あこがれの的だったの」
「両方ともきれいなわけ?」
「そう。いずれあやめかかきつばた。ただ、お姉さんのほうは、心のほうもすばらしいのね。クリスチャンで、結局修道院に入ったわ」
「なるほど」
「でも、妹さんのほうは、意地わるで、お高くとまっていて、どっかひねくれていたわね」
「ふーん」
 ビールがからになっていた。
「もっと持って来ます?」
「どう、お義姉《ねえ》さんは?」
「もう、いらないわ」
「じゃあ、お吸物、持って来る」
「良ちゃん、お吸物まで作ったの。わるいわね」
「ううん。お汁に卵をといて落とすだけよ」
「本当。人から作ってもらうとおいしいのよね」
「ええ」
 良子は空になったビアー・グラスを三つ、お盆に載せて立ちあがった。
「で、今の話だけれど……」
 と、初子が夫のほうに体を向けて話を続ける。
 初子は、いったん話し始めたことは、たいてい最後まで話す。さして重要な話でなくても、一応は結論まで持って行く。やはり、自分の話術に自信があるからだろう。他人が聞きたがっているにちがいないと、そのうぬ惚れがなければ、どうでもいいような話を長く続けることはできない。
「ああ、美人姉妹の話ね」
 良子は夫の声を背後で聞き、次の瞬間、
 ——あっ——
 と思った。
 むしろ笑いが頬に浮かぶ。
「ここだけの話だけれど、その妹さん、盗みぐせがあったの」
 後半は小さな声に変った。
 だが、廊下ならば聞こえて来る。
 ——また、やっているんだから——
 言われてみれば、良子もそんな噂《うわさ》を聞いたような覚えがある。あれも姉に聞かされたことじゃないのかしら。「ここだけの話だけれど」と、そんな前置きのあとで……。
 ——しょうがないわね——
 本当に何度、姉から「ここだけの話」を聞かされたか……若いときからいちいち思い出してみたら、いくつあるかわかりゃしない。だいたい苦い思いがつきまとっている。良子に実害が及んだこともある。
 ——どういう気なのかしら——
 吸物の温まるのを待ちながら良子は考えた。甲高《かんだか》い笑い声が聞こえた。
 
「さようなら。小田原のほうにも遊びに来てね」
 初子は子どもたちの顔を見てから、すぐに帰り仕度にかかった。
「僕が行ってあげる」
 長男が立候補して駅まで送って行った。しかし、次男のほうは、すぐに自分の部屋へこもってしまう。
 この家でも長男のほうが愛想がいい。次男は気むつかしい。幼いときからそうだった。
「あいつ、どうもいかんな」
 子ども部屋のほうを顎《あご》で指して夫が言う。
「そうねえ。わるい子じゃないんだけど」
「わるい子なんて世の中にいやせん。もう少し社交的にならんといかん。サラリーマンになれんぞ」
「まだまだ先のことでしょ」
「いや、性格ってものは案外変らんからなあ。おまえのとこもそうだったんだろ。お義姉さんとずいぶんちがうもんな」
「お姉さんみたいなほうが好きなんじゃない、つきあいやすくて」
「ちょっと軽いな。おしゃべりだし……」
 夫も姉のくせに気づいているらしい。
 玄関の戸が開き、長男が帰って来た。
「ただいま」
「ご苦労さん」
「お母さんて、子どもの頃、お化けがこわくて、夜中、トイレに行けなかったんだって」
 一大発見でもしたように聞く。おそらく姉に「ここだけの話」を聞かされたのだろう。
「そうよ」
「ふーん」
「僕は平気だよ」
 足音を立てて廊下を走って行った。トイレットの中から陽気な歌が聞こえて来る。
「同じように育ててるのになあ」
 夫がしみじみと言う。
「そうかしら」
「ちがうか」
「ううん。同じような環境で、同じように育てているわよ、たしかに。親たちは、よくそういうことを言うわ。でもね……」
 小首を傾げてから良子は続けた。
「生まれたとき、上にだれかがいるのと、いないのと……子どもにとっちゃ、ぜんぜんちがう環境だと思うわ。ちっとも同じ環境じゃないわ。それからずーっと、育つときも、そのあとも、ほとんど一生その状態が続くんですもの」
「なるほど」
「私、お姉さんがいなきゃ、自分の性格も変ってたなって何度も思ったわ。お姉さんがいなきゃいいって思ったこと、何度かあったわね、ここだけの話だけど」
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