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800-11

时间: 2018-09-29    进入日语论坛
核心提示:11 うちぐらいの高校になると、校内予選がたいへんなんだぜ。 公式戦の一種目には、ひとつの学校から三人しかでられないからね
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 うちぐらいの高校になると、校内予選がたいへんなんだぜ。
 公式戦の一種目には、ひとつの学校から三人しかでられないからね。校内で選ばれれば県大会の決勝までいける、って顧問の教師は威張ってる。
 予選の一週間前からピリピリ。
 いつも一緒に練習してんだから、お互いにほぼ実力はわかってるじゃない。俺は八〇〇は当選、超確実。俺、メッチャ速くなってんのよ、高校入って。まあ、前から速かったけど。
 で、俺としては、他の距離、あんまりやる気ないわけ。
 ふつうはね、八〇〇メートル・ランナーは四〇〇か一五〇〇をやる。タイプによって、どちらかを選ぶ。教師は一五〇〇やれって、俺に言う。しょうがないね、出るだけ出てもいいけど、長くてかったるいのよ、三周以上も走るの。
 なのにさ、俺、五〇〇〇にもエントリーしてやった。もちろん、武田にいやがらせ、っていうか、プレッシャーかけるためね。
 武田は五〇〇〇と三〇〇〇メートル障害。
 障害っていうのは、車イスの人の種目じゃなくて、ホントに馬みたいなことするやつ。水たまり跳び越えるの。これ、ぶったまげたね、初めて見たときには。
 春の記録会のときに、俺、自分の種目の間があいてたんで、その水濠《すいごう》の真横に行って見てたのよ。
 ダー、って並んで走ってきて、第三コーナーでふつうのトラックのコースから外にふくらむ。そうするとハードルの横に長いやつ、どっちかっていうと体操の平均台みたいなやつが置いてある。で、それに乗って、台の上|蹴《け》って向こうに跳ぶ。その着地するところには、本当に水が溜《た》めてあるの。
 金魚すくいの台のでかいやつみたいなんだけど、底が斜めになってるから、遠くに跳べばふくらはぎまで水がはねる程度だけど、失敗してすぐ下に落ちたやつは、悲惨よ。腰ぐらいまでビショビショ。笑ったねえ。
 俺なら、金もらったってやらない、三〇〇〇メートル障害は。
 校内予選は本格的だった。
 気合いいれてやらせるためなのか、近くの会社のトラックを借りる。そこはちょっとした実業団のチームで、四〇〇メートル・トラックもってんの。で、二日もかけてするわけ。
 一日目の一五〇〇で、俺、三番だった。三年にはふたり、これが専門で速いやつがいる。でも、これで対外試合の出場権は得た。
 もともとの専門は長距離でも、一五〇〇を兼ねるのはわりといてさ、あの日、武田の部屋にいた観客のやつらもね、何人か出てたのよ。
 しかも、三年なら高校で最後のチャンスじゃない。それを一人分、一年の俺が追い出した。
 そして、二日目。
 八〇〇は俺が一番。楽勝、楽勝。一五〇〇で負けた三年のひとたちも振り切った。
 俺としては、これで充分満足。家帰って、メシ食って、和美(広美かな?)のとこにでも遊びに行きたかったね。
 でも、まだ五〇〇〇メートルが残ってる。武田先輩たちの、命かけてる種目。本気で八〇〇走ったあとだから、疲れてたけど、そんな顔は見せたらいけない。それまでの二時間は、元気そうにフィールド種目の計測、手伝ったりした。
 もう、暗くなってきてた。リレーはないから、この五〇〇〇で校内予選は終わり。なかなか緊張した二日間の最後っていうわけね。
 エントリーしたやつらがスタートラインに集まって来る。俺はわざとらしくね、すごく気合いはいったかんじで、タッタッ、って走ったり、コースの内側にはいって、エイッ、って声だして腕を振り回したりしてみた。そうするとね、長距離の三年たちが、完全に俺のこと意識してるのがわかるの。
 愉快だねえ。
 だいたいさあ、俺、五〇〇〇なんて、速いはずないのよ。タイムトライアルもまともにしたことがない。それなのに一五〇〇と八〇〇の順位のせいでビビッてんの。
 で、ピストルで飛び出した。
 まず、俺、トップね。八〇〇でも一五〇〇でもそうだけど、やっぱ、最初に先頭にたたなきゃ。ひとの背中見ながら走るのっていやでしょ。
 それに、今回は、俺、スパイクされるかもしれないもん、囲まれたりしたら。ま、向こうのひとたちもそう思ってるだろうけど。
 最初の一周は64秒ぐらいね。
 これ、速い。俺はさあ、八〇〇やってるから、どうってことはないけど、五〇〇〇としては、異常なペース。でもね、ついてきてたね。ちゃんと、足音聞いて確かめて走った。俺だけ独走したら意味がないんだから、細心の注意よ。
 自分の専門種目で、スタートからはなされたら心配なんだろうな。コーナーでちょっと振り返ってみたら、俺の三メートル後ろに四人ぐらいの集団ができてる。
 それで、二周目は75秒ちかくまで落とした。
 誰も抜こうとしないの。
 俺は先頭のまま、出場してたのは十人かそこらなんだけど、一周目でおいてかれたのも追いついてきて、長い線になってるみたい。
 三周目。
 また、スピードをあげた。なめらかにね。
 ちゃんと、ついてくる。四〇〇を66秒ぐらいかな。
 で、俺、また、ペースダウンした。四周目は、二周目よりも遅いかな。
 もう、一六〇〇も走ったら、疲れちゃった。
 俺としては、充分な長距離よ、これで。でも、最後のひとふんばりで、ペースあげて、ついてこさせて五周したとこで、俺、棄権した。
 演技よ、演技。
 ちょっと、ピョンピョンして、さも、どこか脚が変なんです、っていう感じね。教師には、ふくらはぎがピリッとしたんで、って報告した。
 それで、五〇〇〇メートルの結果は、メチャクチャ。俺の挑発にのったやつは、あといってメロメロなわけ。最初に抑えてイーヴン・ペース守れた二年なんかが勝った。
 かわいそうにね。武田君は、四番になれそうだったけど、順位数えて意欲なくしちゃって、ゴール前で抜かれて五番。殴られたうえに、高校生活最後のインターハイの夢も消えちゃったんだからねえ。
 自分が悪いのよ。自分が。
 
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