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800-73

时间: 2018-09-29    进入日语论坛
核心提示:73 俺? 俺なら、メッチャ元気よお。全然、心配なんていらないぜえ。 バリバリ走ってんの。毎日。 模範的な陸上競技部員して
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 俺? 俺なら、メッチャ元気よお。全然、心配なんていらないぜえ。
 バリバリ走ってんの。毎日。
 模範的な陸上競技部員してる。これなら、武田先輩(覚えてる? あの長距離の、五〇〇〇とか一〇〇〇〇メートルとかしてて、なんでだかわからないけどアゴ怪我しちゃった三年)だって、ほめてくれるんじゃないかね。
 朝練習して、メシ食って、授業でたっぷり眠って、メシ食って、ガンガン走って、メシ食う。スモウトリみたいな暮らししてんだけど、運動量は多いから腹は出てこないぜ。
 そうなんだけど昨日の夜、家に帰ってたら、
「龍二ちゃん、電話」
 って、安さん。
 階段降りるとニヤニヤして小指立ててる。
 で、安さんに投げキス(どうして、いつも安さんとだと、こんなにふざけてんだろ。このひとプロだったのよ)してから受話器を受け取ったんだけど、俺、ドキドキしてた。
 伊田ってことはありえないってわかってんだけど、女からかかってきたんなら、やっぱ、期待しちゃう。
 だって、あの夜から会ってないし、何の連絡もない。俺から電話して、何しゃべっていいかわかんないし、まさか、また待ち伏せするわけにもいかないだろ。死んだって厭《いや》だ。でも、会いたい。
「ごぶさたしてます。だれだかわかる?」
 俺、胸がキューン、ってなっちゃった。わかるに決まってんじゃないの。
 いまとなっては、せつない、あの夏の日の思い出よね。青い海。冷たいビール。そして、砂浜に立つ水着の伊田。
 全然、そんなきれいなもんじゃねえや。苦しいだけだ。
 思いっきり、元気だすことにした。
 それで、わざとわからないふりして、
「裕子だな。うん? 智美か。おっ、泰子じゃないの。あれ、恵子かあ。久し振りだなあ、順子お」
 って、ひとりで早口でやった。
 電話の向こうでキャッキャッ笑ってるのがわかる。よかった、受けて。
「奈央です。広瀬奈央」
 まだ、少し笑いが残ってる口調。
「わかってましたよお、当然。俺のこと好きになっちゃって、会いたくてたまんないんでしょうお」
 俺、ふざけて言ったのよ。
 そしたら、
「うん」
 だって。
「へ?」
 俺、声が裏返っちゃった。
 
 それで、今日、奈央ちゃんとプリン食べてるわけ。
 おーっ、甘い。
 しかもね、ただのプリンじゃなくてフルーツとかいっぱいついてて、クレーム・ドなんとかって、覚えられないじゃないの、そんな名前。
 外に飾ってあるの見て、これにしようよって奈央ちゃんに言って店にはいったの。それでウエイトレスのお姉ちゃんに、
「あの長い名前のプリンね」
「私、コーヒー」
 
 俺、実は、心配だったのよ。電話切ってから。
 奈央ちゃんが会おうっていうのが、広瀬や山口も来るっていう話だったんじゃないかって。
 冷静に考えてみれば、それなら広瀬がかけてくるだろうし、ま、そんなはずない。
 でもねえ、俺、いま広瀬にだけは会いたくない。
 奈央ちゃんは、コーヒーについてきたスプーンいじってる。今日は胸がわりとあいてるシャツの上にジャケット着て、なんか渋いの。秋になったら、大人っぽくしたいのかしら。
「ねえ」
 俺に、スプーンつきつける。
「なーに」
「私と寝たいって思わない?」
 メロン落とすかと思った。
 
 ベッドに腰かけて、ひとまずビール。
 ケーキ屋の奥の喫茶室出てから、奈央ちゃんが先に立って案内してくれた。今日のデート(おいおい、冗談のつもりで昨日はそう言ったんだぜ)は、奈央ちゃんの学校のある駅の前のデパートで待ち合わせた。
 あたりは観光地で、寺だとか神社だとかいっぱいあるとこ。べつに、じいさんばあさんじゃないから、そんなのどうでもいいんだけど、散歩するにしたって、うちのあたりよりいいじゃない。
「こっちのホテルの方が清潔だって、友だちが言ってたの」
 奈央ちゃんはズンズン歩いてった。俺は、あとからついてく。なんか、変だぜえ。
 で、結局は、入ってしまって、いま奈央ちゃんがシャワー浴びてる。あのね、奈央ちゃんは気づいてるのかどうかわかんないんだけど、バスとの間のガラスが透き通ってて、えーと、見ていいものかどうか。
 こうなったらビールをガンガン飲んで、酔っちゃうしかないでしょお。
 奈央ちゃんが、バス・タオル巻いて出てきた。やっぱ、まともに見られないわね。
「お先にいただきました」
 ちょっとお、いくらなんでもそのセリフ、わざとらしくない?
 何で覚えたの?
 俺、見上げたら、目があった。
 見つめあってから、同時にふきだしちゃった。ゲラゲラ笑ってたら、奈央ちゃんのバス・タオルが落ちた。
「おっ」
 って俺が言ったら、
「キャ」
 って、あわてて拾った。
 もう、大人じゃない。立派なからだしてるねえ。
 バス・タオルごと抱き締めて、ベッドに横にして、キスした。友だちどうしの軽いやつよ。唇の先が触れるか触れないかみたいな。
 奈央ちゃんが、硬くなる。
「おい、また、今度にしようぜ」
 奈央ちゃんは、黙ってた。
 タオルを両手でしっかり押さえてる。
「うん」
 ああ、よかった。
 俺、インポになったのかね。いや、立つには立つんだけど、あんま、したくない。もしかしたら本当に伊田以外の女の子に興味持てなくなっちゃったのかもしれない。
 で、ふたりで宴会。
 カラオケがあったんで、奈央ちゃんの歌、いっぱい聞いた。わりとヘタクソ。
 それはいいんだけど、やっぱ、顔が似てるじゃないの、広瀬と。
 
 伊田に会いたい、とっても。
 
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