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NR(ノーリターン)43

时间: 2018-09-30    进入日语论坛
核心提示:42「これって」「そうよ。これがアレだったのよ」「そんな、まさか、こんなもんが」 サリナは、テーブルの上の箱から、ピンクの
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「これって……」
「そうよ。これがアレだったのよ」
「そんな、まさか、こんなもんが……」
 サリナは、テーブルの上の箱から、ピンクのへにゃへにゃしたものを取り出した。
「何だと思ってたの? 覚醒《かくせい》剤? ピストル? それって、ありきたりな発想ね。それともサリンみたいな大量破壊兵器でも隠してるって考えた?」
 道を来るスーツ姿の男が、サリナに注目していた。アタッシェケースを持ったサラリーマンふう。
 ま、四歳以上で百歳以下の男だったら、たいてい、そうなるわな。
 オープンのカフェにすわったサリナは、生地の薄い、からだにぴったりとフィットしたワンピースを着てるの。裾《すそ》が短いんで、脚を組んでいると、その大部分が露出してる。
「いやだわ。似ているわよね、サリンとサリナって。いま言ってみて初めて気づいた」
 サリナの脚と胸の間を、男の視線はさまよってた。そうだよね、脚だけじゃなくて、胸だって谷間がほとんど見えているんだから。
 だけど、サラリーマンの顔が急にハッとなった。サリナが手にしているものから目が離せなくなっている。
 それは、ペニスなの。
 オモチャのような、弾力のある、ピンク色のペニス。
「これは桝本組長のよ。彼のペニスの原寸大シリコン模型」
 サリナは、くるくると回してみせる。
「ちっちゃいでしょ。あなたのと比べたらおお違い」
 そんなもの、わざわざ比較しようなんて思いません。
「コンプレックスの裏返しなのかしらね、マフィアのあいだで巨根だっていつも自慢してたらしいの。それで、うちの組長ね、高原組長、あなたも会ったでしょ。彼が私を接近させて……」
 サリナは思い出すようにして笑った。
「会ってられない間もしゃぶってたいからって言って、のせて型とって作っちゃったのよ」
 顔の前に持ち上げ、ぷるんぷるんと振ってみせる。
 俺は、いまにも、カフェの席で、サリナがそれを口に入れるんじゃないかと思った。
「ふたりは、歴史的にいろいろと対立があって。公共工事の利権をめぐっての争い。債権取立てで、かちあう。政治家のトラブル処理で、高原が桝本においしいところをさらわれたこともある。そのほかね、産廃処理にノミ行為。売春あっせん。町金融に総会屋稼業。ありとあらゆる敵対関係ね。駅前スナックのみかじめ料から、ゲーセンの裏での小学生へのカツアゲにいたるまで」
 サリナは、口先で、ふんふん説明する。
 その間も、ペニスの先端をいろんな角度から見てる。まるで、作品の出来をチェックしてる職人みたい。
「で、高原はね、忘年会の席かなにかで、おもむろに取り出すって予定だったの。これをね。大勢の組長クラスの前で笑い者にすれば、桝本は立ち直れない」
 サリナはあくびをした。手でかくそうともしないの。もっとも、片手にはピンクのペニスがあるわけだけど。
「これで、一件落着ね。桝本のペニスが見つかれば、あなたも店長もはれて自由の身」
「店長は、あのあと、どうなったの?」
 俺は、急いで聞いた。
 それは、サリナに会ったときから尋ねたかったことだった。
「ああ。海で逮捕されて、まだ勾留《こうりゆう》中。あなたはよかったわよね、勇気があってピチピチの眉子叔母さんのおかげで」
 叔母さんは、確かに勇気があるとは言えるんだろう。大型のバイクで砂浜を爆走して、俺を救出してくれたんだから。
 でも、ピチピチっていうのは、眉子叔母さんにあってる表現か?
 サリナのほうが、ピチピチというか、今日のワンピースはパツパツみたいなんだけどねえ。
「そんなおおごとにはならなくて、略式起訴で罰金刑で手打ちじゃないかしら」
「それでも、たいへんだなあ。留置所にいるなんて」
「うーうん、全然。マフィアに追われること思ったら、警察なんて天使みたいよ」
 サリナは、シリコン製のペニスを箱に放り込んだ。
 もう一度、大きなあくび。
「男って、やっぱりバカね。こんなものの大きさぐらいのことで威張ったり。逆に小さいのを暴露すれば、相手に恥をかかせられるって考えたり。すべての男根主義者に死を。メイル・ショービニズムに怒りの鉄槌《てつつい》を。もう、こうなったら、MSUよね」
 俺は耳を疑った。
「いま、なんて言った?」
「え?」
 サリナが聞き返す。
「なにって、えーと、すべての男根主義者に死を、だったかしら。それから……」
「そうじゃなくて、最後。いま言った最後のことば」
「えーっと……、MSU? 知らないの?」
 俺は、言葉につまった。
「ちょっと知ってるみたいな。でも、結局、知らないような……」
 それはあの、Kって署名で送られてくる手紙に出てきたやつじゃないの。たしか、「私たちの研究所」って呼んでたはずだ。
 だけどさあ、俺は、あの手紙の内容は、信じていなかったのよ。だって、誇大妄想もいいとこで、エル・サルバドールがどうのこうのでしょ。
 そのMSUが、実在するとは。
 サリナは続けた。
「私、勧誘されてるの。キャンペーン期間中のいまなら、会費が半年無料だって。それに、入会すると洗剤とラップがもらえるの。ちょっと魅力的よね」
 サリナは、俺の方に身を乗り出した。
「プラス、今月限りの特典」
 耳打ちするように言った。
「友達ふたり紹介すると、支部長になれるんですって」
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