ぼくは、猛烈な味覚音痴らしい。自分ではそう思っていないのだが、どうも他人の好物と合わないからいつの間にかぼくは味覚音痴ということになっているようだ。
あちこち旅行をするので珍しい味に度々出逢うのだが、他人が感動するほどにぼくは感動しない。それも特に珍味とか、高級料理とかいうものになると、さっぱり味の理解に苦しんでしまう。
このことは、おそらく食糧難の時代に少年期を過したことや、母が田舎者でしかも年老いていたせいもあったり、また三十歳になるまで、少々貧しかったことなどが原因で、なかなかうまい料理にありつかなかったせいでもあろう。今だに、お茶漬とか、豆のごはんとか、家庭用のカレーライスとか、素うどんとか、そういったものが大好きだ。
時たま仕事の関係で高級レストランや、料亭に席を設けられることがあるが、ただ物珍しいものが次々と現れるだけで、ぼくにとってはもったいない話であるが、ちっとも味覚を満足させてくれない。
だから、自らこのような場所に足を運ぶというようなことは滅多にない。
だいいち料理の名前がわからないので、注文しても何がくるのかさっぱりわからない。
まあ要するに、腹が満たされればいいわけだから、よほどまずいものでない限り、文句もいわないでイタダキマス。
どちらにしても大した好ききらいがないのだから、最近は、食べたいものより体にとって必要なものを食べるようにして、玄米と菜食に切りかえてしまった。
そして、魚はPCBを含んでいるというので、ほとんど食べないが、カルシウムの必要性から、北海の魚は時々食べることにしている。
もともと牛肉は好きだが、家では滅多に食べない。外出した時は、玄米と菜食というわけにはいかないので、この時ばかりは例外で少々の肉は食べることもある。
主食の他に、ぼくはよく間食をする。これは果物であったり、やきいもであったり、おはぎであったり、ぜんざいであったり、アンパンであったりするのだが、これさえやめれば体調は最高なのかも知れないが、生れつき甘いものが好きだから、酒の好きな人にやめるようにいっても無理なように、ぼくから甘いものをとりあげると、病気になって死んでしまう。