ぼくは二年ほど前から家庭では菜食と玄米を励行している。ぼくはもともと白米と肉類が好きで野菜はあまり好きな方ではない。ところがこのような食生活に切りかえてからというものは、以前好物だったものが少しずつ口に合わなくなりつつあるようだ。
本当は徹底した自然食をしたいわけだが、これは少々面倒なことだから、しばらくは現状のままで自然食は近い将来の理想としている。
五、六年前、動脈血|栓《せん》というやっかいな病気にかかり、両足首から先に血液が循環しにくくなって大変苦しんだことがある。そしてこれは鍼《はり》と灸《きゆう》、按摩《あんま》で完治したが、これを契機に食生活を改善することにした。
まず血液を浄化させることが健康の第一歩と考え、血液内にコレステロールを造る肉類を避け、逆に増血剤の役割として野菜類を多く取るということで、多少心理的な効果もねらった。野菜にしても玄米にしても農薬を使用している限り本来の効用は皆無ということになるかも知れないが、少なくとも生活が自然の方向に向いているということだけで気分は爽快になるから不思議だ。
病気をしてからというものは、人工的なものより自然への関心が強くなり、食生活以外の生活を少しずつ自然化してきたような気もする。このことは闘病生活中に手当り次第に読んだオカルト関係の書物の影響が非常に大きく左右しているようだ。人体を宇宙的存在と考えるようになってからは、なるべくその法則に従い、自然の流れに乗るということの重要性を感じるようになった。まあそれでもなかなか徹底できず、欲望が優先して外食の際などにはついステーキを注文してしまい、後から後悔することがある。
しかし、自分を導くのは政治でもなく、科学でもなく、自分自身を制御できる精神しかないのではなかろうか。