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黒田如水25

时间: 2018-11-16    进入日语论坛
核心提示:初対面一 供《とも》の久左衛門は別室にひかえ、官兵衛一名だけ廊を渡って、奥の客院へ導かれた。 白襖《しろぶすま》をめぐら
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 初対面
 
 供《とも》の久左衛門は別室にひかえ、官兵衛一名だけ廊を渡って、奥の客院へ導かれた。
 白襖《しろぶすま》をめぐらした約二十畳ほどの内に、三つの燭《しよく》が照り映《は》えていた。彼のすがたと入れちがいに綺羅《きら》やかな小姓達が連《つら》なって膳や銚子を退《さ》げて行った。この深夜というのに、秀吉はつい今し方眼をさまして、食事もたった今すんだところらしい。以て彼の日常がいかに多忙で朝夕の私生活などは時間かまわぬ行き当りばったりで押し通しているかが窺《うかが》われるのであった。
「やあ、これは——」と、客を見るなり褥《しとね》から起って迎えたのがその人だった。官兵衛が坐らないうちに、ずかずか歩み寄って来て、
「ようお訪ね下された。儂《み》にとっては思いがけぬ珍客。まずまず……」
 秀吉は手を取らんばかりであった。恰《あたか》も十年の知己《ちき》を迎えたようですらある。一国一城の主といえばとかく威容を作りたがるものなのに、そんな気振《けぶり》はみじんもない。しかも予想以上その風采《ふうさい》は至って堂々たるものではなかった。官兵衛も大男のほうではないが、秀吉も小柄である。ただ人いちばい大きいのはその音吐《おんと》であった。体に似合わない大声がこの人の自然であるらしく、客が席に着くと挨拶も甚だ簡単にかたづけて、
「御辺《ごへん》のおうわさはかねてからよく聞いておる。そちらでは初対面と思われておるか知らんが、この筑前は何やら旧知の如き気がいたす。——と申す仔細《しさい》は、信長卿のお供をして幾度《いくたび》か京都に在るうち、ご主君とご昵懇《じつこん》な近衛前久《このえさきひさ》様から屡《しばしば》おうわさが出たものでござる。……御辺の祖父にあたらるる明石《あかし》正風どのには、近衛家のご先代にも、いまの前久卿がお若いうちにも、歌道の指南《しなん》として常にお館《やかた》へ伺候《しこう》せられていたそうな」
 と、思いがけぬことから話しはじめて、中国の一田舎に過ぎない御着《ごちやく》の近状から黒田家と小寺家との関係にいたるまで、官兵衛が意外となすほど、よく知っている口吻《くちぶり》であった。
「中国にも人物は尠《すく》なくないが、わけて姫路の目薬屋の息子どのは、有為な者、将来ある嘱目《しよくもく》に値《あたい》する男と、これは近衛家の人々からばかりでなく、摂津《せつつ》の荒木村重《あらきむらしげ》などから聞きおよび、折もあらば一度お会いしたいと思うていたところでござった。それをわざわざこの岐阜までお越し下されたことは、何たる倖《しあわ》せかわからん。きょう町の辻にて、御辺の家人《けにん》からご書面をいただいた折、ひょっと同姓異人ではないかと怪しんだほどでござった。さてさて、こよいは欣《うれ》しき夜哉《かな》」
 と、その正直に歓んで見せる容子というものは、世間なみにある軽薄な世辞《せじ》とか社交というものを超越して、自他の地位階級も、主客のけじめも打ち忘れて、まったく一個の素肌の人間がありのままに感情を吐露《とろ》しているすがたとしか見られなかった。
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