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平の将門17

时间: 2018-11-24    进入日语论坛
核心提示:馬たちよ淋しむ勿れ 峻厳《しゆんげん》な父基経に似あわず、優柔で姑息で、わがままな嬌児にすぎない忠平が、政治家としては、
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 馬たちよ淋しむ勿れ
 
 
 峻厳《しゆんげん》な父基経に似あわず、優柔で姑息で、わがままな嬌児にすぎない忠平が、政治家としては、右大臣の顕職を獲、一門の長者としては、父以上、兄以上な生活の見栄を張っても、心のどこかには、たえず弱い迷妄と狂疾がうずいていたことは、察するにも難《かた》くない。
 せっかく今日、客を招いて、晩春の陰鬱を、一掃《いつそう》したと思ったのに、遠方の大掾国香などという末端吏《まつたんり》から、おもしろくもない厄介者を添え文《ぶみ》して向けてよこし、舌打ちをもらしたことではあったが、平良持の子というので、そう素気なく追い払いもできなかった。良持は、生前から、何事につけ、藤氏の門に、臣礼を執り、彼の擁する東国の私田の事務でも勤めたがっていた男だからであった。
 だが、その遺児《のこしご》にまで、どうこう考えてやるほどな好意はない。反対に、ふと頭をかすめたのが、日頃から彼の最も嫌忌している穢の心配だった。一日、はしゃぎぬいた疲労の反動も、それに手伝い、いきなり、臣賀爺への、大喚きとなったのである。
 臣賀は臣賀で、また、雑色部屋へ来て、どなり立てていた。結果は、いちどそこまで、招き上げられた小次郎の身へ返って来た。小次郎は、横の土居門から、河原へ連れ出され、まる裸にされて、加茂川の水の中へと、突きのめされた。
「——穢を洗うのじゃ、穢を。朝のお陽さまが、東の峯から昇るまで、何度も、沈んでは、祓して、穢を浄めたまえと、諸天にお祈りしておるのだぞ。よいか。昼は、小屋籠りして、夜は夜で、七日の祓をやらねばならん」
 臣賀は、きびしくいいつけて、雑色たちと共に、邸内へもどって行った。
 小次郎は、さて、なんの事やら、分らなかった。
 けれど、これが右大臣家への、奉公初めの一つかと思い、ぽかっと、急流の中から、首だけを出していた。
 水はまだ、雪解《ゆきげ》をもつかと思われるほど冷《ひ》やっこい。ぎゅっと、流れの中で、四肢の骨が、肋骨《あばら》に向って凝結した。——が、ほうっと、大きく肺気を空に吐いたとき、朧《おぼろ》な月を、平安京の夜空のまん中にふと見つけた。
「……あの月も、都に来ている。ああ、おいらも、都にいる」
 彼は、たくさんな、馬の顔を、朧雲の上に描いた。故郷の大結ノ牧の馬房に、こん夜も、うまや藁を踏まえ、平和に眠っているであろう馬たちに、心から告げていた。——おいらの友達たちよ、淋しむなかれ。おいらは幸福だ。都人になるために、加茂川の水がいま、おいらの旅の垢《あか》を洗ってくれている。
 
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