日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 吉川英治 » 正文

平の将門19

时间: 2018-11-24    进入日语论坛
核心提示:素朴な読書子 いかめしい、八省十二門のうちには、兵部省もあり、刑部省もあり、また市中には、検非違使もいるのに、どうしてそ
(单词翻译:双击或拖选)
 素朴な読書子
 
 
 いかめしい、八省十二門のうちには、兵部省もあり、刑部省もあり、また市中には、検非違使もいるのに、どうしてそんな群盗どもに横行されているのか、小次郎には、ふしぎでならない。
 けれど、供待ち仲間の、諸家の奴僕や舎人たちの放談が教えるところによると、
「こうなるのは、あたりまえだ……」と、みないって、憚らなかった。
「御政治がわるいのさ。……いや、悪いにも、いいにも、今は、御政治なんかないんだから、群盗たちには、こんなありがたい御世《みよ》はない」
 話題が、この理由と、原因ということになると、小次郎は、いつも、肩身がせまくなった。なぜならば、彼の仕えている主人——右大臣藤原忠平が、だれよりも、くそみそに、悪口の対象になるからであった。
 忠平は、氏《うじ》の長者として、いまや藤氏《とうし》の一門を、思うままにうごかし得る身分であるのみでなく、朝廷の中でも、かれの一びん一笑は、断然、重きをなしている。
 それは、さきに、若くて亡くなった、左大臣時平の位置と権勢とを——弟の彼がそっくり受け継いでいるからであるが——兄の時平とは、その政治的な才腕も、見識も、抱負も、人間そのものも、まるで段ちがいに、格落ちしているのが、いまの右大臣家であるというのだ。
 すくなくも、前《さき》の左大臣時平は、菅原道真を、政敵として、辛辣《しんらつ》な政略や、自閥本位な謀略もずいぶんやったが、また、地方の農地改革だの、民心の一新だの、財政と文化の面にかけて、かなり理想ももっていた。それが、惜しくも、三十九という若さで、病死してしまったため——時平の才幹は、まだ、政治のうえに実現はされなかったが——だれも、人物は、認めていた。
 ところが、弟の忠平と来ては、比べるにも、おはなしにならない。
“宮中の狡児《こうじ》”
 という評が、それを尽している。
 優柔で姑息。わがままで、華奢放逸《かしやほういつ》。優れているのは、管絃と画だけだ、とみないうのである。
 画は、自慢で、かつて扇に、時鳥《ほととぎす》を画いたのを、長明《ながあきら》親王にさしあげた。親王が、なにげなく、扇を開かれると、要《かなめ》が、キキと鳴ったので、
(あ。この時鳥が啼いた——)
 と、戯れに仰っしゃった。それをまた、おべッかな公卿たちが、そばから、
(さすがは、お筆の妙、名画のしるし、時鳥は画いても、啼く声までを画きあらわした者は、古今、忠平の君おひとりであろう)
 などと賞めたてた。
 それを忠平は、自分で、自慢ばなしにしたり、歌の草稿などにも、自ら“時鳥の大臣”などと署名している。
 また甥《おい》の敦忠《あつただ》は、管絃の名手なので、これをあいてに、和琴、笛などに憂き身をやつし、自らの着る物は、邸内に織女《おりめ》をおいて、意匠、染色、世間にないものを製して、これを、誇りとするような風だった。
 ちかごろ、宮廷のうちも、際だって、華美になり、むかしは、天皇のほかには着なかったような物を、一介《いつかい》の史生《ししよう》や蔵人も着かざったり、采女《うねめ》や女房たちが、女御更衣にも負けずに艶《えん》を競ったり、従って、風紀もみだれ、なおかつ、廟議や政務にいたっては、てんで、怠り放題な有様である。
 こういう大官や宮廷のもとに、ひとり刑部省や兵部省の官人たちだけが、精勤とまごころを以て、服務を看ているはずもない。——かれらは彼らの領野において、やはり同じ型の逸楽と役徳をさがして時世に同調している。群盗にとってありがたい御世たる所以のひとつである。
 こんなふうに、ここ輦溜りの供待ちで、小次郎が、毎日、見ること聞くことは、なに一つとして、ろくな事ではない。
「下司《げす》は、口さがないものというが、まったく、うるさい京雀《きようすずめ》だ。この人たちは、人間の醜《みにく》いところと、世の中の汚いところばかりに興味をもっている。そんな裏覗きばかりしないで、もっと、人間と此世《このよ》の、いい所、美しい所も、少しは、見たらどうだろう」
 小次郎は、時には、ひとの放談に、われを忘れて、おもしろがりもしたが、また、折には、腹が立って、なにか、反抗して見たくもなった。
 なぜ、というまでもなく。
 彼は、今でも、この平安の都を、美しい花の都として、抱いていた。初めて、不毛の坂東曠野から上洛《の ぼ》って来て——京都に入る第一歩を、あの高い所において、加茂川や、大内裏や、柳桜の、折ふし春の都を、一望して、
(ああ、こんな天国が、人間のすむ地上にあったのか? ……)
 と、恍惚として、憧憬《あこがれ》の満足に涙をたらした——あの日の印象を、いまもはっきり持っている。その、幻影でない、現実を、彼はいつまでも信じたい。
 そして、自分も、その美しい都人のなかの一人となり得たことを誇っていた。汚《けが》したくない。ゆめ、傷つけたくないのである。
 さらには、また、
 故郷の人々からもいわれた通り、ここに遊学した効《か》いを見せて、都の文化に習《まな》び、よい人物になって、ひとかどの男振りを、いつの日かには、故郷下総の豊田郷にかざって帰りたい。——
「だが、勉強のほうは、まるでだめだ。藤原氏の子だと、勧学院《かんがくいん》にも入学できるが、東国生れの小舎人では……」
 彼の素朴は、まだ上京の初志を、わすれてはいなかった。だから、夜間、ひそかに夜学したり、昼も、この輦溜りでつぶす多くの時間を、なるべく、読書することにしていた。
 ——で、今も、轅と轅のあいだに、ひとり潜んで、近ごろの学者といわれる三善清行《みよしきよつら》の家人から借りた何かの書物を、ふところから取出して、読み耽っていた。
 すると、たれやらその側へ来て、だまって、小次郎の手の書物を、共に、見おろしている者があった。
 直衣《のうし》姿《すがた》の、身分のひくい青侍《あおざむらい》で、年ばえも、小次郎にくらべて、幾つもちがわない——三ツ四ツ上か——ぐらいな青年である。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%