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平の将門26

时间: 2018-11-24    进入日语论坛
核心提示:冷たい若人 その夕べ、師輔に会い、書の手本を、渡した。そして、いつものごとく、和琴を合調《あ わ》せ、灯を見てから、帰ろ
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 冷たい若人
 
 
 その夕べ、師輔に会い、書の手本を、渡した。そして、いつものごとく、和琴を合調《あ わ》せ、灯を見てから、帰ろうとすると、ここに仕えている弟の繁盛が、
「兄上。ちょっと、お顔を……」と、自分の小部屋へまねいて、こういった。
「相馬の小次郎が、都へ来て、右大臣家に仕えていますが、まだ、御存知ありませんか」
「……小次郎か」と、ちょっと、いやな顔をして——「おまえは、会ったのか」
「え。いつぞや、宮門の御輦溜りで、会いました」
「あまり親しくせんほうがいいな」
「なぜですか」
「常陸の父上から、そういって来ている。わしも、一度おまえに、注意しようと思っていたのだが……」
「はて。でも、その父上が、右大臣家へ、添え状を書いて、特に修学させてくれと、御依頼申したのではないのですか」
「修学なんて、あの男に、滑稽な望みだよ。田舎にいたときから、粗野で暴れンぼで、人にも、嫌われていた小次郎だ。良持どのの亡いあとは、父上が、あれの大叔父として、あとあと、家のつぶれぬよう、一族や召使の将来も見てあげなければならん立場にある……。そういう点から、小次郎の性格は、おもしろくないと思っておられるらしいな」
「じゃあ、小次郎に、豊田郷の跡目は継がせないおつもりなのでしょうか。しかし、そうはいっても、小次郎は、まぎれもない良持どのの長男だし、私の見るところでは、そう悪くいうほど欠陥のある性格とも見えませんが」
「繁盛、繁盛……」と、貞盛は、兄として、たしなめるような眼で——「めったな臆測を、みだりに、口へ出すものじゃない。何事も、父上のお旨《むね》によって、わしはいっているのだ」
「他人《ひ と》には、そんなこと、申しはしません」
「おくびにも……。よいか」
 貞盛は、すぐ立った。
 いつぞや、小次郎と約束したことなど、何も、いい出さないうちに——である。でも、繁盛は、小次郎への返辞もしなければならないと思い、兄を送って、邸外まで歩いた。そして、それとなく、小次郎の希望をいってみると、貞盛は、ニベもなく反対した。
「そんなこと、師輔様へも、右大臣家へも、お頼みできるすじのものじゃない。よせよ、よけいな、おせッかいは」
 それから、こうもいった。
「わしだって、いつか、応天門の附近で、あれに会っているよ。その時、小次郎が、物欲しそうに、何かいいかけて来そうにしたから、あわてて、身をそらした程なんだ。右大臣家でも、雑色の中へ入れて、小舎人ぐらいにしかお用いになっていないじゃないか。それを見ても、わかることだ。あんな者に、親類顔されたり、妙に、親しくなって来られたら、われらまで、同じように、周囲から見られてしまう。それは、出世の障《さわ》りにこそなれ、なんの益にも足らないということは、おまえにだって、分るだろ」
 繁盛は、兄のうしろ姿を、夜霧のなかに見送って——なにか、兄弟ながら、冷たい人だなあと思った。
 しかし、彼には、兄の意にそむいてまで、小次郎のために、単独でうごく勇気もない。
 ただ、それからは、努めて、小次郎に会わないことのみ、心がけていた。
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