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神州天馬侠28

时间: 2018-11-30    进入日语论坛
核心提示:鞍馬の竹童    一 はなしはふたたびあとへかえって、ここは波明るき弁天島《べんてんじま》の薄月夜《うすづきよ》 いっぽ
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 鞍馬の竹童
 
    一
 
 はなしはふたたびあとへかえって、ここは波明るき弁天島《べんてんじま》の薄月夜《うすづきよ》——
 いっぽうは太刀《たち》の名人、いっぽうは錬磨《れんま》の槍《やり》、いずれ劣《おと》らぬ切《き》ッ先《さき》に秘術の妙《みよう》をすまして突きあわせたまま、松風わたる白砂の上に立ちすくみとなっているのは、白衣《びやくえ》の木隠龍太郎《こがくれりゆうたろう》と朱柄《あかえ》の持ち主、巽小文治《たつみこぶんじ》。
 腕が互角《ごかく》なのか、いずれに隙《すき》もないためか、そうほううごかず、彫《ほ》りつけたごとくにらみあっているうちに、魔か、雲か、月をかすめて疾風《はやて》とともに、天空から、そこへ翔《か》けおりてきたすさまじいものがある。
 バタバタという羽《は》ばたきに、ふたりは、はッと耳をうたれた。弁天島の砂をまきあげて、ぱッと、地をすってかなたへ飛びさった時、不意をおそわれたふたりは、思わず眼をおさえて、左右にとびわかれた。
「あッ——」とおどろきの叫《さけ》びをもらしたのは、龍太郎のほうであった。それは、もうはるかに飛びさった、鷲《わし》の巨《おお》きなのにおどろいたのではない。
 いま、鏡《かがみ》のような入江をすべって浜名湖から外海《そとうみ》へとでてゆく、あやしい船の影——それをチラと見たせつなに、龍太郎のむねを不安にさわがしたのは、小船にのこした伊那丸《いなまる》の身の上だった。
「もしや?」とおもえば、一|刻《こく》の猶予《ゆうよ》もしてはおられない。やにわに、小文治《こぶんじ》という眼さきの敵をすてて、なぎさのほうへかけだした。
「卑怯《ひきよう》もの!」
 追いすがった小文治《こぶんじ》が、さッと、くりこんでいった槍《やり》の穂先《ほさき》、ヒラリ、すばやくかわして、千段《せんだん》をつかみとめた龍太郎《りゆうたろう》は、はッたとふりかえって、
「卑怯《ひきよう》ではない。わが身ならぬ、大せつなるおかたの一大事なのだ、勝負はあとで決してやるから、しばらく待て」
「いいのがれはよせ。その手は食わぬ」
「だれがうそを。アレ見よ、こうしているまにも、あやしい船が遠のいてゆく、まんいちのことあっては、わが身に代えられぬおんかた、そのお身のうえが気づかわしい、しばらく待て、しばらく待て」
「オオあの船こそ、めったに正体を見せぬ八幡船《ばはんせん》だ。して、小船にのこしたというのはだれだ。そのしだいによっては、待ってもくれよう」
「いまはなにをつつもう、武田家《たけだけ》の御曹子《おんぞうし》、伊那丸《いなまる》さまにわたらせられる」
 しばらく、じッと相手をみつめていた小文治《こぶんじ》は、にわかに、槍を投げすててひざまずいてしまった。
「さては伊那丸君《いなまるぎみ》のお傅人《もりびと》でしたか。今宵《こよい》、町へわたったとき、さわがしいおうわさは聞いていましたが、よもやあなたがたとは知らず、さきほどからのしつれい、いくえにもごかんべんをねがいまする」
「いや、ことさえわかればいいわけはない、拙者《せつしや》はこうしてはおられぬ場合だ。さらば——」
 ほとんど一|足跳《そくと》びに、もとのところへひッ返してきた龍太郎《りゆうたろう》が、と見れば、小船は舫綱《もやい》をとかれて、湖水のあなたにただようているばかりで、伊那丸《いなまる》のすがたは見えない。
「チェッ、ざんねん。あの八幡船《ばはんせん》のしわざにそういない。おのれどうするか、覚えていろ」
 と地|だんだ踏《ヽヽヽふ》んでにらみつけたが、へだては海——それもはや模糊《もこ》として、遠州灘《えんしゆうなだ》へ浪《なみ》がくれてゆくものを、いかに、龍太郎でも、飛んでゆく秘術《ひじゆつ》はない。
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