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神州天馬侠44

时间: 2018-11-30    进入日语论坛
核心提示:天翔る鞍馬の使者    一 きょうも棒切《ぼうき》れを手にもって、友だち小猿《こざる》を二、三十|匹《ぴき》つれ、僧正谷
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 天翔る鞍馬の使者
 
    一
 
 きょうも棒切《ぼうき》れを手にもって、友だち小猿《こざる》を二、三十|匹《ぴき》つれ、僧正谷《そうじようがたに》から、百足虫腹《むかでばら》の嶮岨《けんそ》をつたい、鞍馬《くらま》の大深林《だいしんりん》をあそびまわっているのは、果心居士《かしんこじ》の童弟子《わらべでし》、|いが栗《ヽヽぐり》あたまの竹童《ちくどう》であった。
「おや、こんなところへだれかやってくるぞ……このごろ人間がよくのぼってくるなア」
 竹童がつぶやいた向こうを見ると、なるほど、菅笠《すげがさ》に脚絆《きやはん》がけの男が、深林の道にまよってウロウロしている。
「オーイ、オーイ——」
 とかれが口に手をあてて呼ぶと、菅笠の男が、スタスタこっちへかけてきたが、見ればまだ十|歳《さい》ぐらいの男の子が、たッたひとり、多くの猿《さる》にとり巻《ま》かれているのでへんな顔をした。
「おじさん、どこへいくんだい、こんなところにマゴマゴしていると、うわばみに食べられちまうぜ」
「おまえこそいったい何者だい、鞍馬寺《くらまでら》の小坊主《こぼうず》さんでもなし、まさか山男の伜《せがれ》でもあるまい」
「何者だなんて、生意気《なまいき》をいうまえに、おじさんこそ、何者だかいうのが本来《ほんらい》だよ。おいらはこの山に住んでる者だし、おじさんはだまって、人の山へはいってきた風来人《ふうらいじん》じゃないか」
「おどろいたな」と旅の男はあきれ顔に——「じつは僧正谷《そうじようがたに》の果心居士《かしんこじ》さまとおっしゃるおかたのところへ、堺《さかい》のあるおかたから手紙をたのまれてきたのさ」
「アア、うちのお師匠《ししよう》さまへ手紙を持ってきたのか、それならおいらにおだしよ。すぐとどけてやる」
「じゃおまえは果心居士さまのお弟子《でし》か、やれやれありがたい人に会った」
 と、男は竹童《ちくどう》に手紙をわたしてスタスタ下山していった。
「いそぎの手紙だといけないから、さきへこいつに持たしてやろう」
 と竹童はその手紙を、一|匹《ぴき》の小猿《こざる》にくわえさせて、鞭《むち》で僧正谷の方角《ほうがく》をさすと、猿《さる》は心得たようにいっさんにとんでいく。そのあとで、
「さッ、こい、おいらとかけッくらだ」
 竹童は、とくいの口笛《くちぶえ》を吹きながら、ほかの猿《さる》とごッたになって、深林の奥《おく》へおくへとかけこんでいったが、ややあって、頭の上でバタバタという異様《いよう》なひびき。
「おや? ——」と、かれは立ちどまった。小猿たちは、なんにおびやかされたのか、かれひとりを置き捨《ず》てにして、ワラワラとどこかへ姿《すがた》をかくしてしまった。
「やア……やア……やア奇態《きたい》だ」
 なにもかも忘れはてたようすである。あおむいたまま、いつまでも棒立《ぼうだ》ちになっている竹童《ちくどう》の顔へ、上の梢《こずえ》からバラバラと松の皮がこぼれ落ちてきたが、かれは、それをはらうことすらも忘れている。
 そも、竹童の目は、なんに吸《す》いつけられているのかと見れば、じっさい、おどろくべき怪物《かいぶつ》——といってもよい大うわばみが、鞍馬山《くらまやま》にはめずらしい大鷲《おおわし》を、翼《つばさ》の上から十重二十重《とえはたえ》にグルグル巻《ま》きしめ、その首と首だけが、そうほうまっ赤な口から火焔《かえん》をふきあって、ジッとにらみあっているのだ。まさに龍攘虎搏《りゆうじようこはく》よりものすごい決闘《けつとう》の最中《さいちゆう》。
「や……おもしろいな。おもしろいな。どっちが勝つだろう」
 竹童おどろきもせず、口アングリ開《ひら》いて見ていることややしばし、たちまち、鼓膜《こまく》をつんざくような大鷲《おおわし》の絶鳴《ぜつめい》とともに、大蛇《おろち》に巻きしめられていた双《そう》の翼《つばさ》がバサッとひろがったせつな、あたりいちめん、嵐に吹きちる紅葉《こうよう》のくれないを見せ、寸断《すんだん》されたうわばみの死骸《しがい》が、バラバラになって大地へ落ちてきた。
 それを見るや否《いな》や、雲を霞《かすみ》と、僧正谷《そうじようがたに》へとんで帰った竹童。果心居士《かしんこじ》の荘園《そうえん》へかけこむがはやいか、めずらしい今の話を告《つ》げるつもりで、
「お師匠《ししよう》さま、お師匠さま」と呼《よ》びたてた。
「うるさい和子《わこ》じゃ。あまり飛んで歩いてばかりいると、またその足がうごかぬようになるぞよ」
 芭蕉亭《ばしようてい》の竹縁《ちくえん》に腰かけていた居士《こじ》の目が、ジロリと光る、その手に持っている手紙をみた竹童《ちくどう》は、ふいとさっきの用を思いだして、うわばみと鷲《わし》の話ができなくなった。
「あ、お師匠《ししよう》さま、さきほど、お手紙がまいりましたから、猿《さる》に持たせてよこしました。もうごらんなさいましたか」と目の玉をクルリとさせる。
「横着《おうちやく》なやつめ。小幡民部《こばたみんぶ》どのからの大切なご書面、もし失《うし》のうたらどうするつもりじゃ」
「ハイ」
 竹童は頭をかいて下をむいた。居士《こじ》は、白髯《はくぜん》のなかから苦笑をもらしたが、叱言《こごと》をやめて語調《ごちよう》をかえる。
「ところでこの手紙によって急用ができた、竹童、おまえちょっとわたしの使いにいってくれねばならぬ」
「お使いは大好きです。どこへでもまいります」
「ム、大いそぎで、武蔵《むさし》の国、高尾山《たかおさん》の奥院《おくのいん》までいってきてくれ、しさいはここに書いておいた」
「お師匠さま、あなたはごむりばかりおっしゃります」
「なにがむりじゃの」
「この鞍馬《くらま》の山奥から、武蔵の高尾山までは、二百|里《り》もございましょう。なんでちょっといってくるなんていうわけにいくものですか、だからつねづねわたしにも、お師匠《ししよう》さまの飛走《ひそう》の術をおしえてくださいともうすのに、いっこうおしえてくださらないから、こんな時にはこまってしまいます」
「なぜ口をとがらすか、けっしてむりをいいつけるのではない。それにはちょうどいい道《みち》案内《あんない》をつけてやるから、和子《わこ》はただ目をつぶってさえいればよい」
「へー、では、だれかわたしを連れていってくれるんですか」
「オオ、いまここへ呼《よ》んでやるから見ておれよ」
 と果心居士《かしんこじ》は、露芝《つゆしば》の上へでて、手に持ったいちめんの白扇《はくせん》をサッとひらき、要《かなめ》にフッと息をかけて、あなたへ投げると、扇《おうぎ》はツイと風に乗って飛ぶよと見るまに、ひらりと一|羽《わ》の鶴《つる》に化してのどかに空へ舞いあがった。
 ア——と竹童《ちくどう》は目をみはっていると、たちまち、宙天《ちゆうてん》からすさまじい疾風《しつぷう》を起してきた黒い大鷲《おおわし》、鶴を目がけてパッと飛びかかる。鶴は白毛を雪のごとく散らして逃げまわり、鷲のするどい爪《つめ》に追いかけられて、果心居士の手もとへ逃げて下りてきたが、そのとたん、居士がひょいと手をのばすと、すでに、鶴は一本の扇となって手のうちにつかまれ、それを追ってきた大鷲は、居士の膝《ひざ》の前に翼《つばさ》をおさめて、ピッタリおとなしくうずくまっている。
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